鉄壁、かつ強力な攻撃だ
接近戦は無理だ、すぐに場所を移動され回避されてしまう。
攻撃するなら同じ遠距離攻撃だ。
「ガンスリンガー!」
青のジャケット姿に変身し両手に拳銃を握る。
空間転移者と銃の名手が撃ち合う。飛び交うナイフを前転でかわしすぐに撃ち返す。瑠衣もすぐに転移し一秒たりとも同じ場所にいない。信也も動き回ることで的をずらし相手の行動を二丁拳銃でカバーする。
これが通常の撃ち合いならば信也がすぐにでも勝っていただろう。それだけにガンスリンガーの腕前は一流だ。ナイフの投擲で勝てる相手ではない。
それが拮抗した勝負をしているのはさすがランクAプラス、ディメンション・エスケープ持ちだ。次元移動を攻撃と回避に生かしガンスリンガーと対抗している。
信也は考える。相手に攻撃を当てようと思えばあのディメンション・エスケープを止めなければならない。逆に一瞬でも止まれば射止める自信はある。
「閃光弾よ!」
「ち!」
思うよりもさきに言われた!
信也は拳銃を一つ消し閃光弾を取り出す。それを地面に投げつける。
しかし瑠衣がそこへ現れ閃光弾を触れる。瞬間閃光弾は消えはるか頭上で激しい光と音が広がった。
「厄介だなあんた!」
起死回生の手を打とうとしても先に対策されたら意味がない。
倒すならばさきに彼女だ。
「させない!」
信也は時雨に銃口を向けるがそれを瑠衣が防ぐ。ナイフを投擲され信也はかわしてから再度時雨に向ける。
だが瑠衣は時雨の横に現れており彼女を抱えると一緒に姿を消してしまった。
これでは時雨も瑠衣も狙えない。
点では駄目だ。攻撃しても回避されるというのなら回避できない面制圧を掛けるしかない。
「エレメント・ロード!」
信也は巨大な黒帽子とマントを被った姿へと変身した。魔導を極めた者として世界に宿る元素を操る。
「エアー!」
信也の周囲を突風が渦巻きその勢いと範囲を広げていく。信也を台風の目にして竜巻が起こり風圧が全員を押していく。この場は暴風域となり気を抜けば吹き飛ばされそうだ。信也の起こした自然災害級の攻撃に観客たちも吹き飛ばされんと身を屈めたり木に掴まっている。
その波は瑠衣たちにも襲いかかっておりこの中では下手に空間転移して体勢を崩せばすぐに吹き飛ばされてしまう。加えてナイフを投げてもこの強風では信也には届かない。
鉄壁、かつ強力な攻撃だ。この事態のまさに最適解を叩き出し信也はさらに攻勢を強めていく。
「サンダー!」
信也の頭上が暗雲に覆われる。雷鳴が鳴り響き地上の者たちへと威嚇する。
これから行われるのは銃弾より速く剣撃よりも強烈な自然の猛威。銃や剣と比べ発動してから開始するまでが遅いがエアーで足止めが出来ているのあれば十分いける。
これで終わりだ。身動きが封じられている敵へ裁きの雷を与える。
「華音!」
強風が吹き荒れる中時雨が叫ぶ。
瞬間、信也の動きが止まった。
(なんだ!?)
突然の金縛りが起こったのだ。どういうことか分からず確認したいのに目も動かせない。
信也の起こしていた竜巻と暗雲が霧消していき太陽の光がみなを照らしていく。
「せっかくだから目だけ自由にしてあげる。足下見てみなさい」
華音に言われ目だけを動かし足下を見る。
それで気が付いた。暗雲に隠れて気づけなかったが異変は地面に起きていた。
華音の影が伸び、自分の影と重なっている。
「ランクB影法師・絶対支配。影を操ることが出来るアークよ。私の影に触れた影も操ることで実体も操れる。油断したわね新入生、足下がお留守になってるわよ」
信也を縛る張本人、華音がにやついた笑みで見つめていた。
内心で舌打ちをする。その通りだ、油断していた。頭は瑠衣と時雨のことでいっぱいで彼女は考慮の外。さらに仕方がないとはいえ暗雲を起こし足下を暗くしたのも影の異変に気づけなくなっていた。
彼女のことを考えていれば、暗雲を作らなければ。後悔先に立たずとは言うが悔やまれる。せめて華音が最初から参戦していれば影への注意も払えたのに。
(まさか!)
それで思いつく。
「その通りよ」




