分かった。やろう
これはチャンスだ。生徒会の方針を自分で決められる。それなら部長の生徒会参加はもとよりランク至上主義だって変えられる。
「その代わり、君が負けたらこれをしてもらうわ」
そう言うと彼女の背後に控えていた瑠衣が前に出て信也の机にあるものを置いた。
「なんだよこの夏の宿題×十みたいな課題の量は!?」
「これはどんなに頑張っても一ヶ月以上はかかるね……」
机の上にどさっと置かれた紙の束。姫宮の言うとおりこれをこなそうと思えば一ヶ月以上はかかる。言い換えれば一ヶ月以上勉強に拘束されるということだ。
今は生徒会と反対派衝突という大事な時期。そんな時に悠長に課題なんてしていられない。
「と、いうことよ。さあ、どうする?」
負けられない。ここで負けることは生徒会との戦いからの退場と同じだ。
この提案をどうするか。信也は考える。勝てれば生徒会との問題は一気に解決できる、まさに一発逆転の提案。
しかし勝負はこの三人が相手だ。生徒会の四天王と呼ばれる幹部たち。それを三人相手にするのは分が悪く負ければ大量の課題に今後活動への参加ができなくなる。
リスクとリターンはどちらも大きい。それなら勝算で考えるべきだがそれだと三対一という構図は明らかに不利。
ランク至上主義を一気に打開できる機会ではあるが今回は見送ってもいいかもしれない。
そう信也が考えていると教室の前に部長たちが集まり初めていた。生徒会四天王の姿にみな驚いている。
「しまった、すでに生徒会が」
「先手を打たれたのかしら」
「なんでもあの三人に勝てたら生徒会の方針を決めれるらしいぞ」
「え!? それって生徒会を変えられるってこと!?」
扉の前では部長たちが勝負の内容で盛り上がっている。勝てれば生徒会を変えられる。部長強制参加を解決できるということだ。
「でも、三人が相手じゃ勝つのは難しいだろ?」
「でも信也君は戦闘要員を一人で倒したんでしょ? 四天王といっても全員が戦闘要員ってわけじゃないんだし、もしかしたら勝てるんじゃない? 勝てれば解決なんだし、こんな機会ないわよ」
「たしかに」
「う」
聞こえてくる話の内容にプレッシャーを感じる。どうも自分の勝利を期待する声が多勢のようだ。
「ランクAで会長にも引き分けたアークホルダーだもんな、もしかしたらもしかするか!」
「これに勝てれば生徒会からの支配から解放される!」
勝負に勝てた場合で盛り上がっている。期待は期待を呼びみなが信也へ勝負参加を望んでいた。
彼ら彼女らが言っていることも一理ある。信也は会長と引き分けるほどの実力がある。彼女たちも決して弱くはないはずだが会長以上ということはないはず。それなら三対一でも勝てるかもしれない。
なによりこれはチャンスだ。これに勝てれば生徒会の支配を終わらせられる。他にどんな方法で止められるというのか。
今まで漠然として分からなかった生徒会打倒の方法。それが目の前にある。
信也は時雨を見た。
「分かった。やろう」
信也の答えにギャラリーが沸き上がる。興奮とともに歓声が上がった。
「信也君」
そんな中姫宮だけが心配そうに声をかけてきた。
「平気だ姫宮、それにこれはチャンスだ。ここで俺が勝てば生徒会のやり方を変えられる。ランク至上主義を変えられるんだ。他に方法なんて浮かばない。だろ?」
「それはそうだけど」
これを逃せば生徒会打倒という目的は餅に描いた絵になってしまう。目的を現実にするためにもここは勝負だ。
「相手は三人なんだよ?」
「なに、俺だって一人だけど一人じゃないんだ。倒してやるさ」
「ワーオ、強気な発言」
「まあまあ、一年生なんてこんなものよ」
「いいでしょう、イレギュラー。それでは勝負です」
「望むところだ!」
四天王からの挑戦に信也は大声で応えた。
それから場所を移動し信也たちは昇降口前に立っている。広場となっているこの場所で信也は三人と対峙しアークアカデミアの歴史的一戦を観戦しようと生徒たちがずらりと四人を囲っている。その中にはもちろん姫宮や信也を応援する部長たちはじめ部員の多くがいる。
「信也君」
生徒会三人と対峙する信也を見つめ姫宮の心配そうな声がつぶやかれる。けれどそうした目で見つめているのは少数だ。ほとんどが期待と興奮の眼差しをこの対戦に向けている。会長と引き分けたという前例も大きい。




