勝負ありだ
剣をなくしがら空きとなった信也へ深優が走る。跳躍し空中で足を上げる。そのままかかと落としをしてきた。
「させるか!」
信也は手をかざす。
床に落ちていた剣が光り、その後信也の手に現れていた。信也は両手でそれを握りかかと落としを受ける。
「な!?」
「ぐ!」
さきほどよりも強烈な重み。信也の両足から衝撃が伝わりタイルにヒビが入る。
深優はかかと落としの足を支点にして別の足でサマーソルトキックをし信也の剣を払った。そのまま地面に着地するなり追撃しようとする。
だが、空中から着地までの滞空時間が戦闘では隙になる。
「パラレル・フュージョン! エレメント・ロード!」
信也の使うパラレル・フュージョンの真骨頂。それは高性能の自分になることは元より、そのバリエーションの豊富さだ。
あらゆる状況に適応し、条件に見合った能力を選択し、勝利の道を模索する。
無限の自分がいれば、不可能なんてない!
「エアー!」
黒く巨大な帽子を被り、同じ黒のコートに身を包んだ信也は深優のいる前方に突風を起こした。
如何に速く動ける深優とて宙に浮いていた動けない。突風をもろに受け吹き飛んでいく。
「ぐう!」
地面に倒れ強打する。だがそれで終わる彼女ではない。顔はひきつっているがすぐに起き上がる。
すかさず信也も二度目のエアーを放つ。
彼女でも風という広範囲攻撃はかわせない。むしろ小柄な彼女では飲み込まれる。
「ぬぅ!」
この強風の中動けば吹き飛ばされる。深優は踏ん張り身動きが取れない。
「なめ」
だが、信也のエアーでも彼女の闘志の火は消せなかった。むしろ激しく燃えさかっていく。
「るなあああ!」
深優は支えていた足を上げ、上段回し蹴りを放ったのだ。
最大の力で振るわれたその蹴りは風を生み、信也の突風をかき消していた。
「風を」
「蹴った!?」
階段の上から見ていた姫宮も驚いた。
ここは無風。走る彼女を阻むものはなにもない。
「はああ!」
走る。一足で五メートルを軽く越える彼女の突進。まさに一瞬だ。
「ガンスリンガー!」
信也は青いジャケット姿になりガンホルダーから拳銃を早撃ちする。狙いは正確。接近される前に先制は信也がもらった。
「!」
信也が姿を変え銃を向けた瞬間、深優は無理矢理体を倒し射線から逃げた。弾丸をかわす。しかしそれにより体勢が崩れ体は前方斜めに倒れている。傾斜は四十度。あとはもう倒れるだけ。そこを狙われておしまいだ。
「!」
けれど、彼女は諦めていなかった。
どれだけ体勢が崩れていようとも、ここは空中じゃない。足が地面についている。
ならば、まだ道はある。
傾斜四十度という倒れるスレスレの角度から、彼女は走った。重力と慣性の法則、それを脚力で無理矢理こじ開けて、真田深優は一足で信也へとたどり着いていた。
「な!」
「うおお!」
跳んだ足とは反対側の足で信也を蹴りつける。
信也はなんとか深優の蹴りを屈んでかわすと前転し距離を取った。
「外したか!」
「勝負ありだ」
「なに?」
「足下を見てみろ」
言われ深優は自分が立つ床を見る。
そこには一つの爆弾があった。
直後、彼女の世界から光と音が消え去った。
閃光弾、フラッシュバン。強烈な光と音で対象を無力化する武器。気合いでどうにかなるものでなく、さすがの深優も視界と聴覚を奪われてはなにもできない。
その場で立ち尽くし、両耳を塞いで激しい耳鳴りに耐える。
ようやく症状が収まり目を開けた時、ソードマスターの信也が剣を首筋に当てていた。
「…………」
勝負は、終わっていた。




