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が、深優はそれを見切っていた

 彼女のアークが発動する。彼女の両足がまるで低気圧のように風を生み出した。地面の落ち葉が吹き飛んでいく。


「上等だ、俺はランクAアーク、パラレル・フュージョン発動! 並行世界の自分をコピーする。こい、ソードマスター!」


 信也もアークを発動し赤い騎士の姿へと変身する。会長ともやりあった並行世界に存在する最強の騎士じぶんをコピーして彼女と戦う。


 アークホルダー同士の戦いが始まる!


 最初に攻めてきたのは深優だ。彼女の靴底がタイルを踏み砕く。その爆発的な運動エネルギーは彼女を砲弾のように突進させ信也に跳び蹴りをしてきた。


「!?」


 速い。まるで風を切るようだ。


 だがそれに遅れを取る信也じゃない。今の彼はソードマスター、銃弾すら切り捨てる騎士だ。

 信也は剣を構え深優の蹴りを受ける。彼女の靴底が刀身にぶつかる。


「くぅ!」


 重い! 小柄ではあるが人一人の重量が高速で突進してくればすさまじい破壊力になる。もし重心が下がっていなければ信也も吹き飛ばされていた。


 だがそれを耐える。信也は剣を振り抜き彼女をはねのけた。


 彼女は空中で一回転した後着地する。初撃は防がれたがそこに落胆はない。するどいままだ。

 彼女は地面を蹴って高速で移動する。信也を挟んで反復横飛びをするようだ。左右から何度も高速の蹴りが飛んでくる。さらに角度を変え全方位から。まさに電光石火であり背後にいるはずの彼女が振り向いた時にはもういないなんてこともある。


 繰り出される跳び蹴りと跳躍。その連撃を、しかし、


「うおおお!」


 信也は剣ひとつで防ぎきっていた。彼女の強靱な蹴り、それを刀身で払い、防ぎ、すべてを受けきっていく。


「無駄だ。俺は会長のパラレル・ジャンプだって防いだんだぞ。どれだけ速くても俺に攻撃は当てられない!」

「ち」


 深優の舌打ちする音がする。自分の攻撃がこうも防がれ悔しさが滲む。事実、背後からの完璧な奇襲、それすらも信也は第六感としか思えぬ動作で防いでいた。


 深優は一旦攻撃を止め開いた距離で立ち止まる。


「やるわね」

「焦るなよ、まだ始まったばかりだぜ?」


 信也は剣を片手で持ち深優に突きつける。


「ふん。油断し過ぎよ!」

「油断なんてするか!」


 今度は信也から攻めた。地面を蹴れば一足で間合いを詰め深優に接近する。その速度、本領であるブッラク・スワンには及ばないものの速い。


 信也は剣を振り下ろした。


「ハ!」


 が、深優はそれを見切っていた。


 振り下ろされる刀身を横からの上段蹴りで払ったのだ。横からの衝撃に軌道はずれ、さらに信也の手から放れていった。


「しま」

「はあ!」


 深優は蹴り上げた足を下ろすことなくそのまま信也に連続で蹴りを放つ。ボクサーが放つジャブのような早さで、それ以上の威力が信也の体に三回当たる。その動きはさながら首の長い白鳥がくちばしでつつくようだ。


 信也は咄嗟に腕を交差させて防ぎ後退していった。


 深優の蹴りは小手の上から受けたとはいえジンジンと響く。もし生身で受けていれば一発でも立てなくなっていた。


 深優は上げていた足を下ろし冷たい眼差しで見てくる。


「剣から手を離す時点で油断してる証拠よ」

「くそ」


 信也は片手で振り下ろしていた。小さめの片手剣ならともかくソードマスターのそれは大きい両手剣だ。それでもソードマスターの能力なら片手でも扱えるが、不意の衝撃を受ければ手から放れてしまう。今も彼の剣は地面に横になったままだ。


 そのことに信也は悪態を吐くが、深優はどこか納得しような顔だった。


「なるほど、並行世界からもう一人の自分をコピーする能力。どんなものかと思っていたけれど、もとのあんたは素人ってわけ。だから剣術もろくに使えてない」

「く!」


 さらに表情が歪む。


 パラレル・フュージョンの弱点を早速見抜かれた。


 パラレル・フュージョンでコピーできるのはもう一人の自分、その姿と能力まで。経験や技能までは引き継がれない。


 例えるなら最新鋭武器で武装した素人だ。ものはいいのに使い方はよく分かっていない。性能差でごり押しすることは出来るがその性能差まで拮抗すれば苦戦を強いられる。


 どれだけ強くても、信也が信也であることに変わりはない。


「これで終わり!」

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