練習中悪いわね。生徒会よ
「なにされるか分からないし。それにあの人怖いもん」
「お前はほんとに素直だな」
姫宮はわかりやすい。
そこへ扉をノックする音が聞こえてきた。三木島が「開いてるわよ」と声をかける。
ガチャっと音がなり人が入ってくる。その人物にアイドル部をどうするか、がやがやとしていた練習部屋が途端に静まり返る。
入ってきたのは黒のパーカーを被り生徒会の白のスカート。膝元まで覆う黒のブーツを履いた女の子だ。フードの中にはやや鋭い目と赤い髪が見える。扉を開けた手をパーカーのポケットにしまい両手を隠している。
「練習中悪いわね。生徒会よ」
「……そのようね」
思わぬ訪問に緊張が走る。今まさに生徒会の話をしていたのにそこへ突然の登場。なにかあるのではないかと勘ぐってしまう。
入室してきた生徒会の子はフードの上から頭を掻いた。
「……歓迎される感じじゃないよな。まあ、当然だけど」
「用件はなにかしら」
みんなからの視線や空気から肌で感じたんだろう。確かにみんな警戒や心配そうな目で彼女を見ている。
それに仕方がないと嘆息していた彼女だが、表情を切り替えて三木島を見る。
「全部長へと通達された生徒会加入の話。それについて再度勧誘に来た」
「あら、私たちアイドル部に?」
勧誘に来た、と言うわりにはその態度は固い。営業には不釣り合いだ。
「アイドル部。あんたたちの存在はアークアカデミアでも大きい。それにファンもいる。あんたたちが加入すれば他の多くも私たちになびく。だからこそあんたたちにはぜひ入って欲しいんだよ。そのために私が派遣されたってわけ」
「説得するために?」
「その通り」
彼女は断言する。理屈は分かる。アイドル部の存在感は大きい。もしアイドル部が生徒会に入ればその流れは他にも波及する。
が、彼女の話に三木島の目つきが細くなる。
「それなら副会長の時雨さんが適任じゃないかしら」
その目には警戒の念がありありと表れていた。
「戦闘要員の真田深優さん」
「戦闘要員?」
穏やかじゃない言葉に信也が反応する。
戦闘要員。そうした部門が生徒会に存在したことも驚きだし、そんな人がここへ来たことへ警戒が強くなる。
「はあ」
そのことに、ため息を吐いたのはフードの深優の方だった。
「まあ、そうだよな。私が出向けば示威行為、そう思われるよな。自覚はあったんだ。てか、そうだ。そう受け取ってもらっていい」
やれやれと顔を下に向けている。彼女もこうなるのは分かっていたようだ。
「そう。苦労しているようね」
「お気遣いどうも」
そう言って深優は顔を上げた。
「それで、どうするわけ? できればこの場で回答して欲しいんだけど。私が来た理由も考慮してね」
最後の一言に三木島は身構えた。
「もし、しないと答えたら?」
「…………」
なぜ交渉役として戦闘要員である彼女がここへ遣わされたのか。その理由に三木島を含めここは殺伐とした雰囲気へと変貌していた。
それは深優も同じであり、彼女はパーカーのポケットから両手を出す。
そして、戦意を隠さない瞳で三木島を見た。
「お互い、望まない結果になるでしょうね」
強ばった。三木島の能力は戦闘向きじゃない。できて攪乱で単体では攻撃能力は皆無だ。それは他の部員も同じで戦って彼女に勝てる人は誰もいない。
もしここで断れば、なにをされるか分からない。
「おい」
そこへ緊迫した空気を切り裂き声が響く。
信也は誰よりも前に出て深優と対峙した。
「自分の思い通りにならないなら脅迫かよ、やっぱり最低だな、生徒会のやり方は」
「イレギュラー? なぜお前がここに?」
三木島に目を奪われていたのか深優が驚いている。
「俺がここにいる理由なんてどうでもいいだろ。友達じゃないんだ、わざわざ教えるかよ」
「私が連れてきたよ」
「ありがとな!」
信也は振り返り姫宮にお礼を言う。
「神崎信也。聞いた話だとアイドル部とは敵対していたはずだけど」
「情報が古いな。その話はもう解決済みだよ」
「ついさっきだけどね」
「姫宮」
「なに」
信也は姫宮をじっと見つめる。
「今パパとママが大事なお話してるからちょっと静かにしててくれ」
「…………」
「ありがと」
「イレギュラー」
信也を見つけたことに深優の目つきが鋭さを増していく。




