この学園の秩序をさらに強固なものにするため
「なんでまたそんなことを」
「この学園の秩序をさらに強固なものにするため。生徒会が一手に管理することで部活動の効率を高めるためとか、いろいろ言ってたわね。でもどうにも建前みたいな感じがしたわ」
「ほんとは別の目的がある、ってことですかね?」
「思った印象なんだけどね、そんな感じだったのよ」
彼女は顎に手を当て思案顔だ。そんな彼女に信也と姫宮は互いを見合う。
「それに」
加えて三木島は深刻な顔で言い出した。
「生徒会に入ればそれだけ部費の増額を検討するとは言っていたけれど、反対に入らなければ、サークル扱いに降格、部費は出さないって」
「そんな!?」
「…………」
衝撃的な発言に姫宮だけでなく他のアイドル部員も驚いている。信也も声こそ上げなかったが表情が険しくなる。
「そんなことされちゃったらアイドル部存続できないですよ~」
「ええ、私もそれはどうかと反対したし、私以外の部長からも声は上がったわ。ただ、ランク至上主義のここではね……」
「そんな~」
姫宮ががっくりと顔を落とす。他の部員もどうしようかと不安そうだ。
「でもどうして急にそんなことを? それに強引だよ」
「それは分からないわ。あの人がなにを考えているかなんて」
「管理下なんて生ぬるい表現だぜ、あんなの支配下だろ」
「信也君?」
そこで今まで黙っていた信也が口を開く。棘のある言い方に姫宮が振り返る。
三木島もそういえばと話し出した。
「そういえば、君は今朝会長とやり合ったって。よく無事だったわね」
「あんなのに負けてたまるか」
信也も今朝のことを思い出している。生徒会長、天王寺未来。あの傲慢な態度と強引なやり方は忘れられない。
「生徒会長だかランクAだか知らないが、権力を振りかざしてやりたい放題なんて、気に入らない」
すごい力を手に入れて嬉しく思ったり舞い上がってしまうのは仕方がない。特に自己保持性に敏感な思春期ならなおさらだ。自分だけの特別な能力。それに憧れるのは当然だ。
でも、それで他の人を蔑ろにしていい道理なんてない。
「能力が特別だからって、特別な人間なんていない」
ランクAのアークを持つ信也はそう言い切った。
「…………」
「えっと、なんですか?」
と、気づけば全員が信也に注目している。珍しいものを見たというか、引き込まれていた。
それで三木島が口を開く。
「ううん。やっぱり君はあの時の君なんだなって」
「?」
どういうことが分からず信也は黙って話を促す。
そんな信也に三木島はふっと笑う。
「信也君は、正義感が強いのね。いつもは大人しいのにいざとなったら熱くなる。だから正義感が強いのかなって」
「俺は、別に。こんなのただの怒りですよ。正義感なんてたいそうなものじゃない」
「ううん。その怒りはこのアークアカデミアでは貴重なものよ。君も知っての通りここはランク至上主義。君のように思う人は少ないわ。それに他人のために怒るのはただの怒りじゃない、それは正義感よ」
「そういうものですかね」
「そういうものよ」
そう言われると照れてしまう。茶化されているわけじゃないがどうにも歯がゆい。
「確かに! 信也君はすごいもんね、いつもは影が薄いのにいざとなったら熱くなるなんて逆境でしか活躍できない地の獄でチンチロしたギャンブラーみたいだよね!」
「だから言い方ァアア!」
姫宮の誉めてるんだか貶してるんだか分からない表現は置いておいて、信也は三木島を見る。
「それでどうするんです? てか、なんて答えたんです?」
「もちろん保留よ。私一個人で決められる問題ではないし」
「それもそうか。全体としてはどうなりそうです?」
「うーん。なんとも言えないところだけど、ランクが高い人が多い部は入るんじゃないかしら。生徒会と敵対するメリットがないし。反対にランクが低い人が多い部は反対派が多いわね。もし加入なんてすればどんな条件や制限をかけられるか分かったものじゃない。それに部長が生徒会委員になれば実質部員全員が生徒会傘下だと言っていい。なにをさせられるか」
「ひどい話だ」
「独裁だよね~」
「まったくだ」
生徒会のやり方は本当に強引だ。自分たちに従う者たちだけ恩恵を与えそうでないものは排除する。ランク至上主義の布教とその他への弾圧。まさに独裁だ。
「それでみんなの意見を聞きたいんだけれど、アイドル部が生徒会に加入することについてどう思うかしら。今すぐじゃなくていいわ。家に帰って落ち着いて考えてちょうだい」
部長からの宿題にみんなはどうしようかと話し合っている。とはいえいきなりのことに戸惑っているのがほとんどだ。
「まるで人気が出てきたところで事務所が買収され方針転換に混乱するアイドルたちみたいだよね」
「生々しいたとえ止めろ」
そんな中姫宮は意外にも平然としている。
「姫宮はどうなんだ? 部外者の俺が言うのもなんだがおすすめはしないぜ?」
「そんなの当たり前だよ!」
姫宮は両腕を胸の前で折り顔を突き出してくる。




