見くびるなよ生徒会長
未来が不敵に笑う。美麗な顔を冷酷に歪め再び居合の構えを取る。その後ゆっくりと息を吐いていく。そうして充填されていく気合いを感じた。
(なにかするつもりだな)
信也は剣を構え直した。なにが起きても万全の態勢で受けられるように。相手はランクA+のアークホルダー、五次元を操る女だ。なにが起きても不思議ではない
。
いったいなにをする? なにが起こる? かつてないほどの集中力で未来を凝視する。
「ふん!」
と、未来はその場で刀を振りぬいた。
(なに?)
二人の間は距離がある。その場で攻撃しても当たるわけがない。だがなにかある。これがハッタリなはずがない。
信也は攻撃が完全に振りぬかれる前に後ろに飛んでいた。全身に走る緊張感が逃げなくてはならないと直感的に告げたのだ。
直後、未来が刀を振り抜くと信也のいた場所で多くの空振りの音がした。まるで何回も刀を振るったように。刀が光を跳ね返し斬撃の軌跡をいくつも宙に刻んでいた。
「なんだ!?」
いったいなにが起こったのか分からない。未来は一歩も動いていない。しかも振るった攻撃は一回のみ。にも関わらず離れた空間に幾度も斬撃を発生させていた。
どういうことかと信也の思考が猛スピードで駆け巡る。相手は並行世界を自由に行き来できる。しかし未来は消えていない。ではなにが移動した?
「まさか」
それで答えに至る。
「並行世界にある自分の斬撃をこの次元に重ねたのか?」
並行世界とはこの宇宙とは別の宇宙ではあるがまったく異なる世界というわけではない。たとえば朝食でコーヒーを飲んだ自分、もしくは紅茶を飲んだ自分という些細な違い、そんな世界まである。
ならばあるはずだ。この次元ではその場で刀を振るった未来だが、別の世界では別の場所を斬りつけた攻撃が。その斬撃のみをいくつもこの次元に移動させたのだ。
「よく分かったな」
未来が構えを直す。落ち着いた声ではあるものの答えを言い当てた信也を褒めている。
だがそれで喜ぼうなんて思えない。それ以上にこれは危険だからだ。
「多元同時攻撃……。そんなことまで」
間合いを無視した攻撃、さらにそれらが同時に襲い掛かってくるなんて防ぎようがない。
「これを見抜くか。経験則ということではあるまい。やはりその体にはなにかあるな」
前情報なしで避けられる攻撃ではない。信也もなぜ回避できたのか不思議なくらいだ。きっとソードマスターに秘められた力のおかげ。でなけれな今頃信也は細切れになっている。
「分かったはずだ、これがランクの優位性。次元回避を備えた私のアークにお前は勝てない」
彼我の差が著しい場合、次元が違う、という表現を用いる時がある。理論上という前置きこそつくものの次元が違うというだけで勝負は決している。空間たる三次元では時間という四次元に勝てず、四次元では並行世界たる五次元には勝てない。次元の優位性。ランクが持つ意味を未来は押し付ける。自分が使った異能を根拠にして。理屈としてこうなっているのだから誰にもそれは否定できない。
「言いたいことはそれだけか?」
それでも、信也は言った。否定したのだ。そんなの関係ないと。
否定されたら諦めるのか? 親が駄目だと言ったら、周囲が駄目だと言ったら。世界が否定してきたら諦めるのか?
いいや、諦めない者がいる。なににも絶望しない人の意思、諦めない決意。それこそが信也の信じる人間の可能性だから。
「見くびるなよ生徒会長。理論上の御託なんて会議室でしてろ。それとも勝てると自分に言い聞かせないと怖いのか?」
「ふっ」
信也の強気な発言に未来が小さく笑う。
「なるほど、なるほど。確かに人にはランクだけでは測れぬものがあるらしい。今の挑発はなかなかだったぞ」
その笑みが凶悪に歪む。態度こそ落ち着いているものの今の言葉はかなり頭にきたようだ。しかし沸き上がった怒りも一瞬で消し未来は厳格な雰囲気に戻る。
「だが残念だなイレギュラー。お前には力があるのになにも分かっていない」
「数学のことか?」
「国語のことじゃない?」
「人のことだ!」
本当に呆れる。未来は信也と姫宮を怒鳴りつけ後姿勢を正す。
「人間は力に惹かれるが、同時に秩序がなくては生きられない。このランク至上主義こそがアークホルダーの秩序であり規律、必要な




