お前の言う人の可能性。お前は、いったい何度裏切られてもそう言える?
「ランクAの定義は次元の操作、もしくは超越。これはお前も知っているだろう。そこで重要になるのが次元回避が可能かどうかということだ」
それも初めて聞くものだ。知らない事実が次々に明かされていくとともに奥深さを痛感させられる。
「次元回避とはその名の通り次元を経由して相手の攻撃を回避すること。三次元を操作するのであれば空間転移、四次元を操作するのであれば時間停止や遡行。これらを使用することにより生存率が上がり敗率を極限まで下げることが出来る。それは戦闘において圧倒的なアドバンテージだ。負けないということが戦闘ではなによりも重要だからだ」
異能と聞くと強力、豪快というイメージがある。実際そうした能力もあるわけだが、しかし重要なのは負けないということだ。負けなければ次の戦闘に参加できる。そこで相手に被害を与えられる。相手にとって倒せない敵ほど厄介なものはない。また総当たり戦のような形式であったとしても負けないというのは強力だ。もし野球やサッカーで全試合無失点のチームがあれば優勝するだろう。
それが次元回避能力。これの有無でランクAは+とノーマルに分けられる。それほどまでに次元回避能力の恩恵はでかいのだ。
「信也君……」
「大丈夫だ姫宮。なんとかする」
背後から心配される声に振り返り、表情を引き締めるとすぐに正面を向く。
強いとは思っていた。相手は生徒会会長。実質的な支配者だ。高ランクは想像していたがまさかランクA+。聞いたこともないランクだったことに緊張が走る。
「お前の能力、パラレル・フュージョンは強力だ。なにより汎用性という点においては群を抜いている。しかし、その能力では次元回避は不可能。私の方が有利というわけだ」
未来は得意げに解説していく。そこに不安や心配はない。自分が勝つと確信している。だがそんなことを言われて納得できるはずがない。ランクが上だから私の勝ちなどと、それでは後出しのジャンケンと同じだ。
「そんなことやってみなければ分からない!」
「物わかりが悪いな。これは論理的な回答だ。はじめから分かり切っている」
「ならば試してやる!」
信也は剣を振った後で構える。相手がどんなランクだろうが関係ない。この勝負に勝たなければこの学園はいつまで経ってもランク至上主義に支配された監獄だ。
「いいだろう。遊んでやる、イレギュラー」
未来は抜刀した。日本刀が持つ美しさは彼女の凛とした姿勢に華を添える。
両者は剣と刀で対峙する。相手を睨む視線は二人とも刃のように鋭い。
だが、ここで未来が構えを解いた。
「こい、先手は譲ってやる」
大胆不敵。未来は片手を離し刃先も下を向いている。空いた手で信也を誘っていた。
「ふざけるな!」
それを見て走る。踏み込まれた一足は舗装された道を砕くほどの勢いだ。まるで弾丸のように飛び出し未来を斬りつけんと剣を振り下ろす。
もらった。剣はすでに振るわれ未来の刀は未だ下を向いている。これではどうあっても間に合わない。
だというのに、未来は前を見ているだけで剣を見てすらいなかった。
(どうするつもりだ?)
このままでは本当に当たる。信也の疑問が心配に変わる。
直後。
未来の姿が消えた。
「なに!?」
信也の攻撃が空振りに終わる。急いで辺りを見渡すがどこにもいない。
「どこに消えた?」
どこだ? 見渡すが彼女の姿はない。
(殺気?)
瞬間背後から強烈な雰囲気を感じ振り返る。それと同時、空間から現れた未来の刀身が信也を捉えていた。飛びかかる未来の攻撃と信也の剣がぶつかり合う。
「ほう、よく防いだ」
「どうなっている?」
剣と刀を押し付け合い互いの顔が近づく。信也は苦い表情だが未来は小さな笑みすら浮かべていた。
信也は剣を振り抜き未来が後退する。奇怪な行動を取るが力はこちらが上だ。未来も無理につばぜり合いをする気はなく華麗に後ろに飛んで着地する。黒の長髪がふわりと浮いた。
「解せんといった顔だな」
余裕の態度そのままに未来は言う。堂に入った佇まいはまさに支配者だ。
「本来自分だけの特殊能力というのは秘匿するのがセオリーだ。特性が露見すれば攻略法を練られ敗北しかねない。よって普通なら隠す。しかし、アークホルダーの異能データは学園に保管されている。それは教師だけでなく生徒も閲覧可能だ。これでは隠す意味がない。このシステムがあるからこそ低ランクは弁え高ランクは公に自分の能力と地位を主張できる」
「そうだったのか」




