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それでも前に出る勇気。自分なら出来ると信じる心

 信也の悲鳴がフロアに響く。


「終わったな」


 錬司が呟いた。呆気ない結果にそう言った。


 当たり前だった、こうなることは。


 信也では錬司に勝てない。


 信也はいくつもの破片を受け、数の暴力に倒れる。


 だが、


 しかし、


 だとしても――


 信也はまだ終わっていない。彼の意志は死んではいない。


 信也は錬司を睨み上げた。その瞳は燃えている。そして叫んだ。


 ここに、人間の可能性が開花する!


「俺は、絶対に諦めない!」

「なに?」


 どんな不利な状況でも諦めない。そして最後には道を切り開く。


 信也は諦めていなかった。


「パラレル・フュージョン発動!」


 瞬間だった。


「俺は、『俺』をコピーする!」


 信也が、走り出したのだ。


 ――無傷で。


「どういうことだ……?」


 錬司の目が開かれた。それもそのはず、当たった、当たったはずなのだ。その目は信也が打ちのめされた姿を確かに見たはず。


 なのに信也は生きている。その身は一つの破片も受けていない。


 当たったはずなのに、信也は躱していた。


「どうなってやがる」


 不可思議な現象に錬司は考えていた。信也の持つ異能アークと目の前で起きている現象を結び付け、グレイントの処理速度で答えを弾き出す。


 そこで、錬司の表情が驚愕に変わる。


「まさかッ」

「そうだ!」


 錬司の驚愕に信也が応える。力強い眼で、自分に人間の可能性を教えてくれた錬司に叫ぶ。

 それは、諦めないという想いが生んだ力の形!


「俺の異能アークは並行世界にいるもう一人の俺をコピーすること。ならいるはずなんだ、この状況でも、『生きている俺が!』」


 信也の答えにさらに錬司の表情が歪んだ。


 錬司が放つ無数の破片。避けられるはずがない。これだけの数を躱すなど不可能だ。


 でも、


 もしかしたら、


 いるかもしれないのだ。


 同じ状況で、無数の破片のわずかな合間。


 逃げた先がたまたま無事で、生き残った自分が。


 そんな並行世界が。


「ふざけんなぁ!」


 錬司の怒号が響く。己の異能アークを最大限に発揮して弾幕をさらに速く、さらに密度を上げる。


 放つ、放つ、放つ。


 錬司の攻撃はかつてないほど凶暴だ。彼の感情に呼応したかのように破片は死滅の弾丸と化している。当たれば即死。ここは空爆地帯かと言いたくなるほどの轟音と強風が吹き荒れる。


 それでも信也は生きていた。


 普通は諦める。数の暴力、速度だって追いつけない。見た瞬間絶望するはずだ。


 それでも、信也は諦めない。


 腕が折れた。


 内臓が損傷した。


 その度に前に出る。


 それだけ、並行世界には諦めなかった自分がいたから。


「錬司ぃいいい!」


 信也は駆けた、この不利な状況を。


 躱す、躱す、躱す。


 錬司が放つ無数の弾丸を。


 この状況でも諦めず前に出て、生き残った自分が並行世界にいる限り。


 それを何度だって繰り返す。激痛と苦痛に諦めそうになる。もし諦めればこの勝負は終わりだ。錬司に憧れた信也が諦めれば、それは並行世界にいるすべての錬司に憧れた信也が諦めたことと同じ。これは、たまたま破片の合間に逃げられた自分をコピーしているに過ぎない。


 無敵ではない。


 諦めればコピー出来ず負けるのだ。


 しかし、諦めなければ可能性はあり続ける。


 諦めなければ道は開ける!


 腕が折れた。


 足が折れた。


 それでも前に出る。


 自分はまだ諦めていない。


 腕が折れた。


 足が折れた。


 それでもコピー出来る。


「あんたはすごいさ、昔も今も! あんたはランクFかもしれない。でもな!」

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