てめえは雑魚だ、真の特別を教えてやろう
背後にいる姫宮に振り返ることなく信也は言う。姫宮は小走りで離れていった。
思い出話はここでお終い。二人は対峙する。そのままゆっくりと歩き出した。距離がみるみると近づいていく。
ここからは、決着の時だ。
相手と。なにより自分自身の!
「俺は人間の可能性を証明するために」
「俺は自分を証明するために」
さあ。
「「ランク至上主義なんてぶっ壊そう」」
そのために。
「「お前を倒す」」
言葉が重なった。信也と錬司の。求めるものは同じなのに、彼らは対決するのだ。互いの証明のため。
両者相手を見つめた。それは敵であり友。同じ理想を求める者同士、誰よりも引き合った。
「諦めなければ道は開ける。自分を信じる心、人間の可能性。俺はあんたを倒し、俺の可能性を証明する!」
信也は立ち止まり錬司に指さした。
「勝負だジャッジメント! いや、錬司!」
「ほう」
信也の啖呵に錬司は唸る。しかしそれは大胆な発言のことではなかった。
「お前、有象無象って感じがなくなってきたな。おもしれぇ」
目の前にいる景色でしかなかったモブキャラに色が付く感覚。相手が強敵に移り変わる瞬間を目撃したのだ。
錬司の目つきが変わる。全身が、全力の戦意で信也に応えていく。
「来るがいいランクA。その傲慢、俺が裁く!」
そして、二人は激突したのだ。
「俺はランクAアーク、『並行世界・自己投影』発動!」
信也が異能を口にする。
「見るがいい、そして知れ」
錬司が異能を語る。
「俺はパラレルワールドにパスゲートをセッティング!」
「てめえは雑魚だ、真の特別を教えてやろう」
両者の異能が発現する!
「こい、ガンスリンガー!」
「俺はランクF、無名のアークを発動! 念じたものを一ミリだけ動かす!」
信也は青のジャケット姿へと変身する。錬司を射抜く眼光はさながら銃弾だ。幾多の戦場を渡り歩いた兵が敵を捕捉する。
ターゲット確認。距離三メートル。サブマシンガンでは弾道を逸らされる。原因は不明。
ならば全部試すまで!
信也の背後に兵器が登場する。しかしそれは人一人で扱えるようなものではなかった。
信也の背後に現れた巨大な砲塔に錬司は目の色を変えて叫んだ。
「アハトアハトじゃねえか! ずいぶんでけえの持ってきたな信也!」
第二次世界大戦前にドイツ軍で使用された8.8cm高射砲。実弾兵器の化け物が錬司を捕捉する。
「撃てぇ!」
発射される口径88mmの衝撃に空気が震撼した。本来ならば対空戦闘や対戦車戦闘に用いられる巨大兵器だ、人に使えば間違いなくオーバーキル。当たらなくても風圧だけで腕が吹き飛ぶ代物だ。
その砲弾が、錬司に当たる直前に軌道を変えた。
「くっ」
さらには錬司の横を通りぬき壁を貫通、明後日の方向へと消えていった。
錬司は無傷。
あり得ない。しかし現に起きたのだ。そしてそれは信也も想定済み。威力だけでは逸らされることを確認する。
「まだまだ!」
手はまだある。どのような小細工で凌いだかは知らぬがガンスリンガーの本領、底はまだ見せていない。
信也が放り投げたのはいくつもの手榴弾だ。錬司の前後左右に転がったそれは同時に爆発、地面を消し飛ばし煙を上げて錬司を襲う。
だが、信也は見た。
爆風が、煙が、飛び散った地面の破片が、錬司に当たる前に逸れたのだ。まるで見えないバリアでも張っているのか錬司が立っている場所だけが何事もなかったように平常を保っている。
「見えない防壁? 実弾を無効にするのか?」
そこで今まで直立しかしていなかった錬司がついに歩き始めた。
「いくぜ。なぁに、ビビることはない。ランクFが殺しに来るだけさ」
瞬間、錬司の姿が消えた。どこにもいない。足音すら消えた。ジャッジメントの隠ぺい力。光学迷彩に音波の遮断だ。
「隠れても無駄だ!」
だが実際に消えたわけではない。




