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俺は諦めねえ! 俺は絶対に諦めねえぞ!

 なにも起きなかったのだ。たしかに異能アークを発動しているはずなのに。


 錬司は混乱した。


 そんな錬司を冷たい目で見ながら、研究員は口を動かした。


「君の能力だが」

「そんな……」


 錬司は己の両手を見つめた。信じられないと驚愕するが、指先は震えるだけだった。


「君の能力は、『――――する』能力だ。実用性なし。よって、ランクFだ」

「…………」


 言葉が出なかった。錬司はその場に棒立ちしていた。


「邪魔だからさっさと出て行ってくれ。結果は分かっただろう。次の人! ……ああ! お待ちしてたよ、君はランクCだ、おめでとう。アークアカデミアは君の入学を大いに歓迎するよ。さあ座って座って。おい、いつまでそこにいるんだ、さっさと出て行け!」

「…………」

「おい!」

「嘘だろ……」


 研究員から出て行けと叫ばれる。大きな声だが錬司には遠い世界のことのように聞こえていた。


「俺が、ランクF?」


 その事実に、錬司は亡霊のように立ち尽くしていた。


 錬司に突きつけられた現実。ランクFの異能。


 それは。


「念じたものを、一ミリだけ動かす能力、だと……!」


 それから研究所を後にして行くあてもなく駅前を歩いていく。顔は下を向き、職を失ったサラリーマンのように背を丸めて歩く。


 するとビル壁面に設置されていた巨大パネルから伝わってきた映像に足が止まった。


「異能に興味はありませんか? あなたの人生を変えるかもしれないあなただけの異能アーク。夢と希望溢れるアークアカデミアはあなたの新たな人生を応援します! 今ならモニターの向こうにいる仮面の男ストラップがもらえるよ!」

「…………」


 錬司は、再び歩き始めた。


 第一アークアカデミアの入学式は第二、第三よりも早い。晴れ渡る青空に暖かい陽光、咲き誇る桃色の花弁が新入生を歓迎している。


 しかし、錬司の表情は優れなかった。


 入学式が終わり教室で待機している時だった。


「おい」

「あ?」


 頬杖をつきながら机に座っていた錬司に数人の男子が声をかけてきた。


 錬司は覚えていなかったが、全員同じ中学の生徒だった。


 その中にいる小柄な少年が言ってきた。


「はっ、お前ランクFみたいだな」


 辺りから「くくく」と笑う声が聞こえてくる。


「中学時代あんなに特別特別言ってたお前がランクFかよ。みじめになったな錬司君」

「ああ? 誰がみじめだって? それに誰だお前」

「なっ! お前こそ誰に口きいてんだランクFが!」


 錬司は何気なく言ったつもりだったが相手は顔を赤くしている。


「うるせえな。だったらてめえのランクはいくつなんだよ」

「ふん。よくぞ聞いた。僕のランクはEだ!」

「同じじゃねえか」

「同じじゃない!」


 声をかけてきた少年は地団太を踏んで抗議してきた。


「いいか! 僕はな、秒速二メートルの風を起こせるんだぞ! すごいんだぞ!」

「扇風機と同じくらいか、夏に便利だな」

「夏に便利とか言うな!」

「分かった分かった、秋には秋刀魚を焼くときに便利そうだな」

「だから便利とか言うな! すごいと言え!」

「はあ? なんだこいつ……」

「このぉ~、ランクFのくせして馬鹿にするなぁ!」


 すると少年は頬杖をついていた錬司の頬をいきなり殴りつけたのだ。


 殴られたことに錬司の顔が傾く。しかし、ゆっくりと元に戻して少年を見上げた。


「あ?」

「ひぃ!」


 錬司は立ち上がる。自分よりも背の低い少年を見下ろした。


「てめえ、やってくれたな。俺が不良全員ボコにしたの知ってんだろ?」

「ひぃいい!」


 錬司の凄みのある眼光に少年は悲鳴を上げていた。


「おい、なにしてるんだそこ」


 そこへ教師がやってきた。すかさず少年が助けを求める。


「先生! ランクFが暴力を振るってくるんです!」

「はあ? ふざけんな! 殴ったのはてめえの方じゃねえかッ」

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