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俺が、ランクF?

 第四章 失墜


「あー、今年からこの中学に入ることになった獅子王錬司だ。俺は俺で好きにやらしてもらうんで、お前らも好きにしてくれ。以上だ」


 信也と錬司が再会するより二年前。信也のいた中学から転校した錬司は新たなクラスメイトの前で自己紹介していた。新しい学校に新しい仲間、本来なら緊張したり期待を抱くものだろう。

 しかし、錬司が抱いた感想はそのどちらでもなかった。


(やっぱり変わらねえ。どこも始まりの村みてえだ)


 簡素な印象、空虚な感情が胸を埋めていく。


(不思議だ、俺以外の人間が全員ゲームのキャラクターみたいに見える)


 転校初日から、錬司はこんなことを思っていた。


(俺の居場所はここじゃねえ)


 それから錬司は数人の男子に呼び出され体育館裏へと連れていかれていた。どうも錬司の自己紹介が気に入らなかったらしい。


 それから十分後。


「があ!」「ぐは!」「て、めえ……」


 背後で倒れている数人の男子を余所に、錬司は青空を見上げていた。


(つまらねえ)


 勝利の余韻など存在しない。まるで勇者がスライムを倒したような作業的疲労しか感じない。


「俺は違うんだ」


 錬司は感じている。違和感だ。自分が知っているはずの人生観と実際の生活が違うのだ。こんなはずじゃない。漠然とした違和感がしかし強烈にへばりつく。


 例えるならば錬司が生まれ落ちた世界は魔物も魔王もいないRPGのようだ。勇者はいるのに敵がいない。世界に一人の勇者がコンビニでバイトして暮らしてる。そんなのはおかしい、勇者ならば魔王と戦うべきだ。ドラゴンでもいい。しかし主人公はモブキャラと同じ人生シナリオを進んでいる。


 それが、錬司には納得できない。


 自分にはもっと相応しい人生シナリオがあるはずだ。


 自分は特別なんだと、なぜか初めからそう思うのだ。


 そこへ男子たちの援軍が駆け付けた。後輩から先輩まで、全学年の不良たち十数人が得物を手にニヤついた笑みで近寄ってくる。


 けれど、錬司は屈しない。


「ハッ、雑魚がウジャウジャと」


 むしろ好都合だと口元を吊り上げた。


「俺は特別オリジナルなんだよ、てめえら有象無象モブキャラの出番はここまでだ」

 その日から錬司は一躍有名人となった。不良全員を一人で倒した転校生。加えて学業運動とどちらも学校一位で部活動からは引っ張りだこだ。どうしてそんなにすごいのか聞く者は後を絶たない。


 その度錬司は言う。


「俺は特別なんだ、お前らとは違うんだよ」


 説得力があった。誰しもが納得した。


 けれど、栄光の裏では彼を妬む者もいた。


 その後錬司は目指していたアークアカデミアも当然のように入学を決めた。すべてが約束されたような道。自分にできないことなどない、あれば誰よりも努力した。結果達成してきた。


 自分は特別な人間なんだと。できて当たり前なんだと。


 錬司はそう信じて疑わなかった。


 そして、運命の異能アーク発現の日。


 第一アークアカデミアでの研究所で錬司は異能アークを授かった。開発は成功し、結果を聞くため研究所の一室を訪れる。


 病院の診察室そっくりに白で統一された部屋には白衣を着た研究員が机に座っていた。その前の丸椅子に錬司は腰掛けている。


「で、先生。早いとこ結果を教えてくれないか?」


 この時ばかりは錬司も興奮していた。いったいどんな異能アークだろうか。ランクC以上は欲しい。いや、既存のランクを飛び越して、誰も発現したことのないランクだって諦めきれない。


「君の異能アークだが」


 そんな錬司に、机の前に座っている研究員は椅子をくるりと回して正面を向けた。


「残念ながら、『ランクF』だ」

「な!?」


 錬司は立ち上がった。椅子が大きな音を立てて倒れる。


「ランクFだと! 俺が!?」


 それだけに留まらず錬司は研究員の胸倉を掴んでいた。


「ふざけんな、なんかの間違いだろ!?」

「試しに使ってみればいい」


 錬司は激情を露わにするが研究員は冷静だ。


 言われるままに錬司は異能アークを発動してみた。


「…………? ……!?」

「分かっただろう」


 しかし、なにも起きなかった。

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