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ランクFの、逆襲だ

 第三章 逆襲


 夕焼けが街を染めていく。オレンジ色の駅前では会社帰りのサラリーマンや学生の姿が目立つ。これからどこへ行こうか、解放感からか楽しそうな声が聞こえてくる。


 そんな場所から少し離れて、人通りの少ない道を三人の学生が歩いていた。


「クソ、なんて俺が三か月の停学なんだ!」


 今朝がた神崎信也と異能アークで戦った田口は不機嫌を露わに友人二人とやり場のない怒りを引きづっている。


「俺はランクCだぞ!? 上位ランクだぞ!? なのにどうしてだ。ぶつかってきたのはあのランクFだぞ? それがどうして俺なんだ!」

「でも田口さん、相手はランクAだったんですよ?」

「うるせえ!」


 背後に控える友人のうち一人から声が掛けられる。それを怒鳴り声で押し返し田口は地面を荒い調子で歩いていく。


「あー、クソ。クソ。クソ!」


 そんな時だった。対面から歩いてきた人と肩がぶつかった。


「おい、どこに目ぇつけてやがるてめえ!」


 立ち止まる。田口はすかさず相手を睨みつけた。


 黒のコートにジーパンを履いた少年だった。顔はフードを目深に被っているため分からない。白のファーが顔の輪郭を包んでいた。


 まるで、獅子のたてがみのように。


「お前、もしかしてアークアカデミアの生徒か?」


 ここは第三アークアカデミアの最寄駅だ、ここから通学している生徒は多い。


「ランクはなんだよ?」

「俺のランクが知りたいのか?」


 黒い少年が振り向いた。この状況でも飄々としており危機感は感じられない。


「いいぜ、教えてやる。――Fだよ」

「F?」


 少年からの答えに田口は腹を抱えた。


「ふっ、ふっはははは! ランクFだと!? やっぱりそうだ、こいつたいしたことねえぜ? おいお前、今なあ、ランクFにムカついてるんだ、お前には悪いが付き合ってもらうぜ」


 田口は愉快でならなかった。やり場のない怒りをようやく発散できるのだ、嬉しくて仕方がない。


 しかし、だからこそ気づかない。


 狩るはずの少年が、薄く笑っていることに。


「さて、それじゃ今からお前には――」

「お前、ランクにイラついてるのか?」

「あ?」


 突然口を挟まれたことに田口の目が引きつる。


「俺も同じでなぁ、ランクにはイラついてんだ。だってそうだろう、何故すべてがランクで決められる? 俺はあいつよりも優秀なのに、特別なのに、ランクが下というだけで劣等生だぜ? ハッ、ウケる」


 しかし少年は気にした様子もなく喋り続けた。


「だからな、決めたのさ。周りが俺を認めないなら俺が証明してみせる。俺自身を」


 その態度、普通ではない。いや、自然体ではあるのだが、この状況で自然体というのがおかしい。普通なら緊張するはずだ、警戒するはずだ。


 なのに目の前の少年は自分こそが優位な立ち場にいるかのように余裕だったのだ。


 その態度に田口も興奮より得体の知れない不気味さを感じていく。


「なに言ってんだ、こいつ?」

「田口さん、田口さん!」

「なんだ!?」

「ま、周りが……」

「周り?」


 慌てた様子の友人に言われ田口は周囲を見渡してみる。それで気づいた。


「誰も、いない……?」


 ちらほらとはいたはずの人々が、一人もいなくなっていたのだ。


 その異変、しかし少年は変わらない。


「それで分かったことある。やっぱりだ、ランクBもAもたいしたことがない。俺の方が上じゃねえか。どいつもこいつも偉そうなくせして終わってみれば轢かれたカエルみたいにのびてやがる」


 普通じゃない。普通であるはずがない。この余裕、この態度。


 膨れ上がる、強大なオーラ。


「ランクB? ランクAだと? まさか、お前が噂の審判者ジャッジメント!?」


 気づいた時には手遅れだった。逃げようにも道がない。周囲は暗闇に覆われもう少年がどこにいるかも分からない。


「馬鹿な!? ランクFがどうやって――」


 田口は最後まで気づけなかった。


 異能アークは固定性。


 成長しない。


 決められたランクでずっと生きていくことになる。


 しかし、ランクがすべてではないことを。


「あばよ、有象無象モブキャラ野郎、お前の人生シナリオはここまでだ」


 ハイランクの優越に浸る罪人よ震えるがいい。

 生まれつきの才能に浮かれる愚者よ泣くがいい。

 ランク至上主義の終わりの時だ。

 これは、真の特別が時代を変える物語――


 ランクFの、逆襲だ。

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