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彼女のランクはFだそうね。それではアイドルにはなれないわ。

 大勢の受験者が信也に注目する。ちょうど自己アピールをしていた女子も気を取られて信也を見つめている。


 信也は自己アピールするスペースまで歩くと立ち止まった。


「さっき姫宮詩音という女の子が入部試験を受けに来たはずだ。何故断った!?」

「あの、その……」


 信也の後ろを着いてきた姫宮が言いにくそうにたじろぐ。


 信也の問いに試験官たちが難色を示していた。突然の来訪者に対処をこまねいているようだ。

 そこへ、会場奥から一人の女生徒が歩いてきた。


「へえ、あなたがイレギュラー。神崎信也君ね?」


 その声色は自信に満ち溢れながらも品のある、澄んだ声だった。


「私はアイドル部部長三年、三木島沙織みきしまさおりよ。よろしくね、イレギュラーさん」


 長い金髪がさらりと垂れる。横の髪を髪飾りでとめ後ろ髪は腰まで伸びていた。レッスンを重ねた肉体は発育もよく、曲線を描く肉体美は理想的な女性像だ。


「あれは、三木島さんよ!」「一年でプロデビューしてから今ではCMクイーンとなり月九ドラマにも出演した沙織さん。きゃー、本物よ!」「俺来てよかった!」

「私の紹介は必要かしら? というよりも、ここに来ているということは当然知っているのでしょうけれど」

「いいや。あいにくアイドルには興味がないんだ」

「あら。ならどうしてここに?」

「彼女にも試験を受けさせるためだ」

「彼女?」


 三木島に試験官の一人が近づき耳打ちする。それで納得したのか「ああ」と小さく声を漏らした。


「そういうこと。状況は分かったわ」

「なら!」

「残念だけど」


 しかし、三木島も試験官と同じ、考えは同じだった。


「彼女のランクはFだそうね。それではアイドルにはなれないわ。アイドルというのはみんなの憧れなの。こうなりたい、ああなりたい。そんな憧れの象徴でなければならない。そこにランクFの子がいたらどう思うかしら。誰もランクFには憧れない。よって、彼女はアイドルにはなれないわ」


 三木島は目を伏せそう断言した。アークアカデミアのアイドル部部長にそう言われ、ショックを受けたように姫宮は悔しそうに俯いた。


「そうだそうだ! ランクFが来るな!」「ここはアイドルにふさわしい人が集まる場所よ、ランクFの子が来る場所じゃないわ!」「図に乗るな、ランクF!」


 帰れ! 帰れ! ランクF帰れ!


 大勢の人間から叫ばれる。


 姫宮はなにも言えなかった。どんなに悔しくてもなにも出来ない。


 耐えることしか出来ない。


 それが自分に相応しい身分なのだと、どこか諦めるように。


「う、うう!」


 姫宮は溢れる涙に崩れてしまった。両膝をついて両手を顔に当てる。皆からの非難を一人で耐えていた。


「だまれぇええええ!」


 それを、信也の怒号が一蹴した。


「なんだよそれ、お前らそれでもアイドル志望か!? 人を見下すのがアイドルのすることかよ!?」


 信也は叫ぶ。辺りは黙っていた。


「信也君……」

「こんなの差別じゃねえか! いじめだろ、どう見ても!」

 信也は叫んだ。叫んだのだ、己の心が叫んでる。

『おいどうした信也、かかってこいよ!』

『や、止めてくれよ……』

『はっはははは! 情けねえ』


 生まれつきの境遇ランクで、こうも決められてしまうのか。


 悔しいのになにも出来ない。


 そんな思いを、自分も知っているから。


 姫宮は顔を上げ信也を見ている。涙で濡れた目で。


 そんな姫宮に信也は近づいた。そして片膝を付くと手を差し出したのだ。


 かつて自分がそうされたように。


「助けに来たぜ、泣き虫姫宮。なんてな?」


 最後に笑みを浮かべて。


「うん……」


 それに頷いて、姫宮は信也の手を取った。


 信也は姫宮を立たせる。姫宮は涙を拭いた。


「大丈夫だからな、姫宮」


 信也はそっと声をかけた後、みなに振り向いた。

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