可能性を感じさせる
信也が出て行った学園長室では賢条と牧野の二人が残っていた。
「牧野、君の目から見て彼が犯人だと思うかい?」
賢条は席を立ち窓際に立ち寄る。白のカーテンに覆われている向こう側を見るように賢条の瞳には芯が通っている。
「彼の異能の全容は未だ解明されていません。そのため彼が犯人かもしれないと話を聞いてみましたが、彼の反応はとても自然でした。ですが、依然警戒すべき対象かと」
扉付近で直立する女性は表情をそのままに答える。口調に乱れはない。自身のクラス生徒だからと私情を挟むような女性ではない。
それをよしとして賢条は指示を出した。
「すぐに監視を開始しろ」
「はっ。では早速手配を」
背中越しに出された命令に牧野は小さく頷いた。それからすぐに扉に振り向き取っ手に手を伸ばす。ランクAのデータは貴重だ。見逃すわけにも、もしくはこれ以上奪われるわけにもいかない。警護と監視を兼ねて、神崎信也は厳重に監視すべき存在だ。
「彼は」
「はい?」
その一刻を争う事態でなにを話すか。あるはずがない。故に牧野は足を止め振り向いた。決して無駄を好むような男ではない彼が、このタイミングで口を開いたこと。それが信じられなくて。
牧野が見る先、背中を見せて立つ男の顔は分からない。なにを、どこを見ているのかも分からない。
けれど感じる。
「面白い子だな」
伝わるのだ。
「可能性を感じさせる」
彼が、笑っているのが。




