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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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94.旅の準備②誤算と寡黙

「ここから魔法学術研究都市(アレスニーア)までは少し距離があるからね。街道から逸れて近道を行くけど、馬でも一週間くらいかなぁ。その間、保存食ばっかりじゃ飽きるだろ」

 むしろ、そんな短期間で着くんだ? という印象だった。

「馬車が通れる街道だと、王都経由になるから倍以上の時間がかかる。そんなの面倒だし、アリアちゃんも、また王都まで戻るのは嫌でしょ? お(うち)の人に見つかったら、奉公に出したはずなのに何故まだ王都で遊んでるんだー! って怒られるかもしれないよ? 俺も王都に行くと、実家の奴に見つかるかもしれないから、なるべく避けたいんだ」

 広いようで狭いのが王都だから、とリオン。

「あそこ、息苦しいんだよ。――ま、俺がいないほうが、兄貴もやりやすいだろうし」


 小さな村なので、手分けして買い物するほどではないと、わたしたちは四人でぞろぞろと並んで歩いていた。

 最後尾には、紙袋を抱えたレッドが付き従っている。いかにも“荷物持ちの奴隷です”という雰囲気を醸し出していた。


 わたしたちは、この村では四人組の冒険者パーティーということになっている。

 初めは“嘘も方便”だったけれど、今は本当になりつつある。

 となると、それなりに役どころというものを演じなければならない。

 その役の中では、獣人奴隷のレッドは一番の下っ端となる。

 仕方がないとはいえ、あまり良い気持ちのするものではなかった。

(こめんね、レッド)

(いいって。気にすんな)

 こっそり視線を交わして謝った。


 まさかパーティーを組むと、こういう現実を目の当たりにすることになるとは思わなかった。

 思わぬ誤算だ。

 わたしとレッドの二人だけだったときには、主人と忠実な従者として過ごすことができた。レッドが奴隷であるという現実から目をそらすこともできた。

 けれど、他人を入れた四人パーティーとなると、どうしても序列というか役割分担ができてしまう。


 わたしはレッドの隣に並んで荷物を持ちたく思っているけれど、たぶんレッドがそれを許さないだろう。

 彼は彼なりに、わたしの従者として役割を果たそうとしているのだ。

(ワガママは言わないほうが、いいよね)

 少なくとも、村を出るまでは様子を見よう。


 そんなことを考えながら歩いていると、横からクロスが声をかけてきた。

「どうした? ずいぶん静かだな」

「普段はうるさいみたいに言わないで」

「前にパーティーにいた女は、買い物の間中ずっと喋っていたぞ」

「お喋りはあまり得意ではないの」

 店舗や屋台を見て、はしゃいだって仕方がない。買い物を楽しめるほど、旅の資金に余裕はないのだ。

「奇遇だな。オレもだ」

「そう……」

 会話が終了した。


 宿にいたときから思っていたけれど、クロスは口数が少ないほうだ。魔法のこと以外で饒舌になることはない。

 快活で人当たりの良いリオンと比べるから、余計にそう感じるのかもしれない。

 魔法という共通の話題がないレッドは、少し取っ付き難そうにしていたけれど、特に不都合はなさそうだった。

(そりゃそうよね。獣人だからって、下に見たり、危害を加えてくる相手に比べれば、)

 会話が弾まないことくらい、たいした問題ではない。


 昼も近くなったので、あちこちに食べ物の屋台が出始めていた。

 意外なことに、テラス席を設けている立派な屋台まである。

 王都の屋台は平民や冒険者向けに、格安で食べ物を提供できるように出店されているものが主だけれど、村の屋台は違うようだった。

(まあ、平民しかいないものね……)

 屋外に席が作られているのは、仕事で汚れた格好でも、気軽に手早く食事ができるようにということらしい。給仕を置いていないから、身分も職業も気にしなくていい。昼の混雑する時間帯は、狭い店内だけではお客を(さば)き切れないから、という理由もあるのだろう。

 似たような雰囲気の身分を問わない店は、王都ではギルドとギルド直営の店舗くらいだった。


「ちょっと早いけど、俺たちも食事にしよっか。アリアちゃんとレッドは、何か食べたい物ある?」

「遠慮しなくていいぞ」

「あ……うん……」

 特に何が食べたいという希望はない。わたしもレッドも、奢ってもらう身で我儘を言うつもりはない。

 けれど、何か決めないと話が進まない雰囲気だ。

(遠慮するなと言われても……値段もわからないし、食べたことのない物ばかりだわ……)

 レッドも似たようなものだろう。極貧生活を経験した者同士、困ったねと再びアイコンタクトを交わした。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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