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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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93.旅の準備①金銭感覚のズレ

 翌日、わたしたちは旅を続けるために必要なアイテム類を村の道具屋に買いに行った。

 回復役のわたしがいるため、ポーション類は少なめだ。

 治癒魔法に関しては信頼されているようで、ちょっと嬉しい。

(でもここで気を許すと、後で痛い目に遭ったりする……のよね。今までの経験から言うと)


 ポーションの代わりに増えたのが、食料である。

 リオンは約束の通り、わたしとレッドの分まで食料を買ってくれていた。

 食料だけでなく、旅に必要な装備までも、だ。

 わたしもレッドもローブを無くしてしまったし、着替えも多くは持っていないから助かるけれど、何だか申し訳ない。


「王都のブティックでドレスを仕立てたいとか、有名なブランド装備を揃えたいとかいうんじゃないんだ。田舎の雑貨屋で売っている程度の中古品だよ。遠慮はいらないさ」

あいつ(リオン)の金銭感覚が一般的な中級冒険者からズレているのは治らない。諦めろ」

「ポーション代が浮いた分だと思って、受け取ってよ」

「わかったわ」


 ところで、保存食や携帯食も購入したけれど、リオンが率先して日持ちのしなさそうな調理済みのお惣菜や果物を買っては、魔法鞄(マジックバッグ)に詰め込んでいたのは、さすが高級品の所有者というところだろうか。

「固形の食べ物なら、半年くらいは大丈夫だよ。素材なら、数年は劣化しない。気分的に、そんなに長く置いておくのは嫌だから、一週間分くらいしか持ち歩かないけど」


 半年単位で時間操作できるような時空魔法は、大変に難易度が高いはずである。容量も、狩った獲物のような巨大な素材が入るとなると、かなりの大きさだろう。

 そんな高度な魔法が合わせ掛けされたアイテムは、上級貴族しか持ち得ない。本来、軍隊で行軍の際に使われるようなアイテムではなかろうか――?

 リオンは実家から持ち出したと言っていたけれど、そうなると(おの)ずと実家の規模が察せられる。


(少なくとも、伯爵家(うち)よりは上でしょうね……)

 我が家――と言っていいのかどうか、今ではわからないけれど――わたしが生まれた家は、地位はそこそこだけれど、財力だけはあったのは確かだ。

 お父様はあんな人だったけれど、経営者や投資家としての才能だけはあったようで、あちこちに投資して利益を得ていた。

 いわゆる貧乏貴族ではなく、人脈や勢いがあり、社交界での覚えもめでたい(れっき)とした貴族だ。

 聞いた話だと、財力だけなら公爵家にも匹敵するという噂だった。

(生家の話を“噂”という形で聞くのもおかしいけれど)

 まあ、今となっては気にする必要もないでしょう。


 それでもうちには、あの高級魔法鞄に匹敵するアイテムが、倉庫にごろごろ眠っているということはない。

 あったとしても、自由に持ち出せるようなものではない。

 きっとリオンの家では、勝手に持ち出しても何も言われないほど、たくさんのアイテムが無造作に保管されているのだろう。


「パーティーの資金管理はリーダーのお前の責任だ。何を買っても構わないが、汁物だけはやめておけよ」

「わかってるって、クロス」

「いくら蓋のできる容器に入れても、絶対に(こぼ)れるって言っただろ」

「スープまみれにした魔法書の件は謝っただろっ」

「時空魔法は入れた物の時間を止めることはできても、天地は認識しないんだからな。液体以外も、上下がひっくり返ったら困るような物体はやめておけよ」


 かつて、ダンジョンで手に入れた魔法書をリオンが魔法鞄に入れていたところ、探索中の食料として持参していたスープが鞄の中で(こぼ)れて大変なことになったらしい。

 恐ろしいことに、鍋にいっぱいのスープが大容量の魔法鞄の中でぶちまけられ、入っていた物の大半を取り出して浄化魔法を掛ける羽目になったという。

 検分するために出して広げる場所を確保するだけでも大変だった、とクロスはげんなりとして言った。


 時間が止まっている空間で液体が零れると、影響を受けて濡れた物体は、染みが付く場合もあるし、そうでない場合もあるという。その辺りは付与した術者の腕によるそうだ。

 細かいことを言うと、時間と空間を操作する時空魔法と言っても「物体を劣化させない魔法」と「物体の形状を留める魔法」というのは別物らしい。


 クロスが丁寧に説明してくれたけれど、

「お前らもリオンにアイテムを預ける場合は気をつけろ」

 しつこく嫌味を言っている辺り、魔法書をスープまみれにされたことを、相当根に持っているようだった。

「何でも浄化魔法で解決できると思うなよ」


 うん。それはわかる。

 わたしのドレスも、濃い染みが付いてしまった上に時間がたってしまったから、もう元には戻らないだろうと思って諦めたのだ。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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