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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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89/280

89.提案③

(おそらく、学園に行けば出自がバレる……)

 わたしが辺境のお祖父様のところへ行かずに、アレスニーアで魔法の勉強なんかしていたら、イーリースお継母(かあ)様は激怒するだろう。


 良くて、強引に連れ戻される。

 その後にもっと酷い虐待を受けるか、帰る途中で事故に見せかけて殺されるだろう。

 もしくは、冤罪(えんざい)か何かで投獄し、無実の罪で処刑されるかもしれない。


 最悪、馬車が襲われたときのように、学園の生徒を巻き込んでの大殺戮が起きる可能性もある。

 そうなれば、わたしを編入させたクロスや、クロスのお師匠様に迷惑がかかる。交友関係のあるリオンにも飛び火するかもしれない。


(お父様は……)

 一切、関知しないはずだ。

 今までも、わたしがお継母(かあ)様とシャーリーンからどのような仕打ちを受けていようも、全く顧(かえり)みる素振りはなかった。

(むしろ、積極的に視界に入れないようにしていた節さえある)

 お父様の中から、アリア(わたし)という長女の存在はとっくに消えてなくなっていた。

 辺境行きを命じられ、事実上の勘当に処されたことで、それは決定的となった。


(お父様のことは気にしなくていい)

 気をつけなければならないのは、イーリースお継母(かあ)様の動向だけだ。

(黙って、辺境のお祖父様のところで一生を過ごせば、見逃してくれるのかしら……)


 いいえ、それは悪手だわ。

 わたしが計画の妨げにならないとわかれば、放置することはあり得るかもしれない。

 けれど、お継母(かあ)様はヴェルメイリオ伯爵家の乗っ取り自体は諦めないだろう。

 代わりに害されるのはアルトお兄様に決まっている。

 家督を乗っ取るに当たって、一番の障害は嫡男であるお兄様だ。


(お兄様にまで魔の手が及ぶ前に、何とかしないといけないのに……)

 わたしには時間も力もあまりにも少ない。

 どうしたらイーリースお継母(かあ)様を止められるか、わからない。

(のんびり学園生活なんか送っている暇はないのよ。第一、学園に通うことになったら……)


 わたしは、ゆっくりとレッドを見やった。

 レッドは、リオンにもらったコーヒーの匂いを嗅ぎ、恐る恐るといった様子で口にしている。

「あちっ」

 猫舌なのは相変わらずだ。

 ふーふーと息を吹きかけ、冷ましてはいるけれど、正真正銘の猫舌であるレッドには、まだまだ熱いみたいだった。


(学園に獣人奴隷(レッド)は連れて行けない)


 ローランド寄宿学校では、従者を連れてきている生徒もいた。貴族の子女は、寄宿舎に入っても身の回りの世話をする付き人を欠かさない。

 でもそれは、あくまでも従者が人間の場合だ。

 下賤な奴隷の、しかも獣人を連れている生徒は見たことがない。

 腐っても貴族社会の片隅に存在する学校である。

 獣人奴隷は、敷地内に足を踏み入れることすら許されていないだろう。

(アレスニーアの学園も似たようなものでしょうね)


 それだけなら、まだいい。

 学園に通うことで素性がバレて、わたしが死ぬようなことになった場合、レッドはまた劣悪な奴隷生活に逆戻りだ。

 買い上げ奴隷の場合、事故や病気で主人が死んだときには契約魔法が無効になるため、自由の身になれるチャンスがある。

 でも、契約奴隷の場合は商会に戻されるだけだ。

 奴隷本体の所有権は商会にあり、貸し出されている状態だから、使用者である契約主が死ねば、所有者(持ち主)の下へ戻らねばならない。首輪を介して掛かっている契約魔法がある以上、逃げ切ることはできないのだ。


(学園なんか行ったら、いろいろ“詰み”だわ)

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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