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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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55.白黒②/リオン視点

 黒幕を特定するため、俺たちはアリア本人に接触する役目を担った。

 ――というより、アリアに容疑がかかっていることを知ったある人物から、陳情が上がったのだ。


 “妹は決してそのような悪事を働く人間ではない。どうか慎重なご裁可を願いたい”と。


 社交界では名前さえ知られておらず、貴族の多くが顔さえ知らない少女のために、多くの陳情が寄せられた――というなら美談だったが、現実はそうではない。

 たった一人だ。

 陳情を寄せてきたのはたった一人、彼女の実の兄だけだった。

 両親も親類縁者も、誰もが知らない振りをした――というより、本当に知らなかったのではないだろうかというほど、徹底して無関心を貫いていた。


 調査に協力してくれた者たちによれば、周囲の人間に「ヴェルメイリオ家のお嬢さんの」と話の水を向ければ、返ってくるのは「先日ご婚約されたシャーリーン嬢のことだろうか」という言葉で、他に姉妹がいるという噂さえ聞こえてこない。

 アリアの名前を出したところで、誰もが知らぬ存ぜぬであったという。


 そんな中で唯一得られた情報が、それらしい娘が辺境へ向かったという、根拠の薄い噂だった。

 その娘が連れていた猫族の奴隷が、慌てて身の回りの物を売却して辺境行きの馬車を探していたというのだ。


 俺たちはギルドでその話を聞いて、眉唾物の情報だが一応確かめておくか……と期待もせずに出発した。

 ついでに同じ方角の「原初のダンジョン(仮)」の調査依頼を受けることで、完全な無駄足を避ける段取りまでしていたというのに――現在にいたる。


 それらしい少女と、猫族の二人連れに遭遇した。

 辺境まで行く途中だというから、この二人に間違いないとは思ったが、少女のほうは依頼主から聞いていた人物像とずいぶんかけ離れていた。


 依頼人の話では、彼女は違法な亜人種狩りに加担しているということだったが、彼女はとても亜人種――獣人狩りを推奨するような人物には思えなかった。


(慎重なアルトが、使えるコネを全部使ってまで頼みに来るはずだよな……)


 アルトは俺の貴族学校での後輩だ。

 同じ騎士課程に進んだこともあり、親しくしていた友人でもあるが、俺は卒業後に冒険者になって王都を離れたため、音信不通でいた期間が長かった。


(実家から干渉されたくなくて、わざと音信不通にしていたところもあるからな……)


 アルトには悪いことをした。

 俺を探すのに、ずいぶん苦労したらしい。

(――で、無実の(・・・)妹を助けてほしいと頼まれてしまったわけだが)

 かわいい後輩の頼みであるから、できることなら聞き入れてやりたかったが、事が事だけに俺もこの件には強く口出しできない。

 反逆罪に問われている者を庇い立てすることは、その人物が無実であっても、立場や家柄によっては失脚のきっかけになり得るのだ。

 冤罪を晴らして、めでたしめでたしで済む話ではない。

 俺の場合は、特に親父と兄貴に迷惑をかけることになってしまう。

 アルトもアルトで、コネを使って俺に頼み事をすることで、後で自分の首を絞めることにもなりかねない。

(アルトの家も色々と複雑そうだからな――)

 家名を汚すようなことは言えないだろうから、俺も詳しくは聞かなかったが、色々と気苦労が多そうだった。

 根が真面目な奴だったから、余計に苦しかったことだろう。

 それが、面子(めんつ)得意の深謀遠慮(しんぼうえんりょ)もかなぐり捨てて頼みに来たのだ。甘いと言われても何と言われても、無下にすることはできなかった。


(アリア)は、自分自身が亜人種(ハーフエルフ)として(うと)まれて育ったんだ。絶対に亜人種狩りに加担するはずがない」


 アリアの実兄――アルト・ヴェルメイリオは言い切った。

 しかしながら、亜人種として蔑まれて育ったから亜人種(同族)狩りをしない、という理屈は成立しない。

 さらに言うなら「亜人種狩りに加担するはずがない」というのは、兄のアルトが主張しているだけであって、論拠はない。

(それでも俺は、アルトの主張を信じるし、アリアちゃんを信じるよ――)

 (おおやけ)の身分を使ってできることは少ないが、冒険者としてなら協力できる。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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