4.出会い②
盗賊ばかりのメンバーでパーティーを組んでいるということは、ダンジョン探索をメインにしている冒険者ではない。
本来の盗賊として、強盗・窃盗方面の稼業に忙しいのだろう。
往来でうずくまっている猫族の少年シーフは、種族特有の身軽さや夜目が効くところなどを買われて、安くこき使われていたのだろう。
そして、怪我を理由に契約解除というわけだ。
奴隷には大きく分けて二種類あり、契約奴隷の場合は奴隷商会の斡旋で主人を渡り歩くことになる。あくまでも所有権は商会にあり、そこから各所へ派遣されるというかたちだ。
役立たずとして返品されれば、商会での評価が下がる。
評価が下がれば、やがて派遣先がなくなり、買い上げ奴隷になるしかなくなる。
買い上げの場合は完全に奴隷商会と縁が切れるため、悪質な人間に買われて酷い目に遭っても、誰も間に入って助けてはくれない。
良心的な主人に買われることは、稀なのだ。
「新しい薬の実験台を探しているのよ。貴方たちが協力してくれるの? それとも……」
「チッ――。そんな役立たず、喜んでくれてやらあ! どんな愚図でも、毒薬の実験台くらいにはなるだろうさ」
再度わたしが問いかけると、男は舌打ちをして去って行った。
仲間を引き連れ、捨て台詞を吐きながら。
わたしは、捨て置かれた少年のそばにしゃがみ込んで声をかけた。
「立ちなさい。――少しだけ治癒魔法をかけたわ。自分で歩いてちょうだい」
怪我した箇所に手をかざずと、少年の猫耳がピクリと少しだけ反応した。
それから、驚いたように体を起こして立ち上がった。
「……っ、どこも痛くねえ」
「痛がっているふりをしなさい。獣人ごときに治癒魔法をかけたと知れれば、わたしが面倒事に巻き込まれるわ」
「……っス」
「あなた、どこの商会の所有なの? 契約魔法を書き換えるから、今すぐ行くわよ」
わたしは彼の首輪に手をかけ、引っ立てるようにしてその場を離れた。
先ほどの盗賊の男たちと、付近の住民がチラチラとまだ見ていた。
亜人種奴隷の扱いとしては、これくらいで普通のはずだ。
決して、往来で情けなどかけない。
「ほら、ちゃんと脚を引きずって。――ばか、折れたのは左じゃないでしょ!」
わたしは強く首輪を引っ張って、わざと少年をよろめかせた。
遠巻きにしていた見物人が、聞こえるように囁いていた。
「あいつ、死んだな」
「ああ。大毒蜘蛛の毒じゃあ、まず助からねえだろ」
「あの魔女が、巷で実験材料を集めているという噂は本当だったんだ……」
「毒薬の実験台に使われるなら、殴られてるほうがマシじゃねえか?」
くだらない。
毒を盛られるのも、刺されるのも、殴られるのも、無視されるのも、同じくらい痛くて苦しいのに。
何も知らない人間――特に大人は無責任なことを言う。
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