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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第1章

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28.同道

「魔法は冒険者ギルドの講習で習っただけで、あとは独学です」

 わたしがそう言うと、クロスさんが畳み掛けてきた。

「なら、あんたは魔法使いではなく、薬師(くすし)か何かなのか?」

 わたしは首を振る。

「そんな大層なものではありません。採取と納品の依頼だけ受けている、つまらない冒険者です。冒険者登録はしていますが、討伐依頼を受けたことはありません」


「嘘だろ……」

 リオンさんもなぜか絶句している。

「えーっと、失礼かもしれないけど、アリアちゃんのご実家は何をされているのかな? この辺りの村の人じゃないよね?」

「実家は王都で、これから辺境の祖父のお屋敷まで奉公に行くところです」

 実家が伯爵家だということは、巧妙に端折(はしょ)った。


「辺境の屋敷っていうと……」

「一軒しかないだろ」

「だよな……」


 二人がこそこそと内輪の話を始めたので、その隙にレッドがわたしの袖を引いた。

「なあアリア、本当にこいつらと一緒に行く気か?」

「ええ」

「オレはあんまり気がすすまねえな」

「どうして?」

「うさんくせえ。これは(カン)だけど、シーフの勘と思ってくれていい」

「うーん……でも、次の村まで急ぎたいのは事実よね……」


  わたしだって、何も考えていないわけではない。

 レッドの話を信じるか信じないか、この二人が信用できるか否かという話ではなく、実際問題として、この先でまた魔獣や魔物が出た場合に、わたしとレッドだけでは対処しきれない。

 それに、ようやく動けるようになったレッドを、再び酷使したくない。

 怪我をしても治癒魔法で治せるが、短時間に何十回も使うような魔法ではない。身体に負担がかかりすぎる。


 何かあっても従者(レッド)がいるから大丈夫、という安易な判断ではなく、もしわたしが一人だけだった場合にも、同道を許すかどうかも考えた。


(――むしろ、こちらから同行を頼むでしょうね)


 若い娘が見ず知らずの男二人と夜道を行くなど、誉められた行動ではないことはわかっている。けれど、リスクとリターンを(はかり)にかけても、護衛を依頼するだけの価値はあった。


 それに、王都を出てからわかったのだけれど、世の中、意外と親切な人が多い。

 王都を離れれば離れるほど、その傾向が強い気がした。

 馬車では果物を分けてくれた行商の人もいたし、わたしを庇って亡くなった、あのおばさんのような人もいる。

 おばさんは、とっさに体が動いてしまっただけかもしれないし、レッドもずっとローブで猫耳を隠していたから、獣人だと思われなかったせいもある。道中、誰にも無意味に悪意をぶつけられることがなかったのだ。


 そもそも、獣人奴隷が主人と一緒に馬車の客席に座っているとは、誰も想像しないだろうし、冒険者街を離れてしまえば、レッドの顔を知る者もいない。ローブで耳と尻尾を隠してしまえば、十分に人間に見えただろう。


 でも、ローブを失ったこの状況でも、彼らはレッドを差別しなかった。

 

(――信じても大丈夫だと思う)


 人柄を推し量るための指標に使ってしまい、レッドには申し訳ないけれど、これ以上彼を戦わせないで済むのなら、悪くない選択だとわたしは判断したのだ。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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