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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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226.赦しを請う事

 イーリースお継母(かあ)様を糾弾することはできなくても、お父様を失脚させれば、正式な配偶者であるお継母様も道連れになるのは明らかだ。

 別邸に囲われている愛人ならば、知らぬ存ぜぬで通せたかもしれないけれど、同じ邸内で暮らす本妻では(のが)れられない。伯爵家を乗っ取りたいがために、後妻に入ったのが裏目に出るというわけだ。

 シャーリーンも、情状酌量が認められたとしても修道院行きは(まぬが)れない。贅沢三昧の暮らししか知らないあの()にとって、質素倹約の清貧生活は極刑にも等しいはずだ。


 クロスもこういった事情をふまえて、シャーリーンの修道院行きや、お父様の謹慎という解決案を口にしたのだろう。

 貴族社会にいる者なら、一門の者が不祥事を起こした場合、誰がどの程度の責任を問われることになるか、だいたいの予想はつくものだ。


 つまりシャーリーンを直接、何らかの罪に問う必要はない。イーリースお継母様か、お父様さえ排除できれば、同時に追放できる。

 仮にお父様が、亜人種奴隷の売買に手を染めていた罪を、全てお継母様に押し付けたとしても、妻に対しての監督不行き届きの責任は取らなければならない。

 必然的に、お兄様に家督を譲って隠居するしかなくなるのだ。


 お父様も、いくら可愛いがっている娘だからといって、シャーリーンだけを手元に残すことはしないだろう。

 妻に全ての罪を押し付けるのならば、連れ子のシャーリーンもほぼ同罪になる。残しておけば、世間に対して示しがつかない。

 娘は関係ないという言い分は、彼女らが後妻と連れ子という立ち場である以上、通らないのが貴族社会というものなのだ。

(シャーリーンがお父様の血を分けた娘というなら、話は別かもしれないけれど……)

 妻というのは、跡継ぎを生むか、実家が余程の影響力を持たない限り、所詮は余所者なのである。


 お父様の──というかヴェルメイリオ家の血を受け継いでいない以上、シャーリーンに令嬢としての価値はない。

 多額の持参金をつけて伯爵家から嫁に出したところで、出す側も貰う側も何の利益もないというのが実情である。


 どう転んでも、クリーンなお兄様を跡継ぎにする以外に選択肢がなくなるのだ。

 貴族学院でも成績優秀で、周囲からの覚えもめでたく、騎士志望でもあるお兄様にまで(るい)が及ぶとは考え(にく)い。

 アルトお兄様は、お父様と血の繋がった実子ではあるけれど、嫡男なのだ。

 イーリースお継母様と一緒になって派手に遊んでいたシャーリーンとは立場が違う。

 多少、出世に響くことはあるかもしれないけれど、お父様と並んで処罰されることはないはずである。


 名誉と血統を重視する貴族社会とは、そういうものである。

 お兄様に対して連座制が適用されるのは、爵位剥奪の上、家門ごと取り潰される場合くらいだろう。

 けれどそれは、国家叛逆罪にでも問われない限り、あり得ない。


 ちなみに、わたしに至っては存在していることさえ周知されていないので、どうとでもなる。

 最悪、修道院でも構わない。

 わたしなら、清貧でも余裕で過ごせる自信がある。むしろ、衣食住が保証されているだけ有り難いとさえ思うだろう。


(もし、わたしが普通の令嬢として、生家に(とど)まっていたならば……)

 お父様の正統な血縁であるわたしの処遇は、難しいものになっていただろう。

 修道院に送られることはないとしても、女には嫡男ほどの価値はない。

 アルトお兄様とて、跡を継いだばかりでは、(わたし)の処遇にまで口出しすることはできない。


 家と爵位の存続は許されても、問題を起こした一族が、何のお咎めもなしで済むはずがないのだ。領地やら財産の一部没収やら、地方への領地替えなど、何かしらのペナルティーがあるに決まっている。

 いくらお兄様が優秀だとしても、当主としての地盤が固まっていないうちは、妹の嫁ぎ先にまで気を配る余裕はないだろう。


(結局どう転んでも、ろくなことにはならないわね……)

 どうせ、地方の格下貴族辺りに嫁がされ、自由に行動できないような僻地に置かれるのだ。

(辺境行きを命じられている今と、大差ないような気がしてきた……)


 そんなわけで──フィレーナお母様、ごめんなさい。

 わたし(アリア)は、貴女が毒殺された事実に目を(つむ)ってでも、あの女の排除を優先します。

 母の(かたき)一つ取れない、不甲斐ない娘を赦してください。

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