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【不遇令嬢はエルフになりたい】〜介護要員として辺境の祖父の屋敷で働くよう命じられたが、ざまぁする間もなく実家が没落した件〜  作者: 一富士 眞冬
第2章

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190.エルフになりたい① 嘘も吐き通せば真実

 どうやら本当に枕投げを基準に部屋割りを決めたらしく、審判をやるつもりは全くなかったわたしは、隣の一人部屋を選んで荷物を置いた。

 一瞬とはいえ、悩んだ自分が馬鹿みたいだった。


「あ、そうだ」

 三人に大事なことを言うのを忘れていた。

 リオンとクロスは承知してくれているかもしれないけれど、レッドは口を滑らせそうだから、釘を刺しておかないとならない。

 そう思って大部屋に顔を出したら、案の定というか想定内というか、レッドの姿がなかった。

「レッドは?」

「宿の中を調べてくると言って出て行ったぞ」

 自分の場所と定めた寝台に腰掛けたクロスが、さっそく魔法薬学大全を開いている。


 ちなみに、それぞれが選んだ寝台の場所は、入って一番奥の壁際がリオンで、その隣がクロス。

 真ん中の通路を挟んで、二人の足下側の寝台にレッドの荷物が置いてあった。

 大きな六人部屋だというのに、なぜ端を選ぶのか謎である。三台ずつ二列に並んだ寝台のうち、手前の二台は両側とも()いている。

(この宿はしっかりした造りだから、窓側でも壁際でも、どちらでも大丈夫そうだけれど……)


 安宿だと、壁紙薄くて隣の部屋の物音が筒抜けだったり、窓枠の立て付けが悪くて隙間風が酷かったりと、安眠できない要素が多い。

 寝台の向きや位置、窓の大きさなどは部屋の当たり外れに大きく関わる。

(あと、両隣の泊まり客も)

 たまに、とてもうるさい男女の二人連れがいたり、酔っ払いが集まって宴会を始めたりする場合があるのだ。

 その辺りはレッドが配慮してくれていたけれど、いつも条件の良い宿が取れるとは限らない。条件が良くても、金額が折り合わなければ野宿するしかない旅路だったのだ。


 その点、この宿は他の泊まり客もいないし、安普請の宿と違って、壁もドアも厚くて頑丈そうだった。

 窓にも、透明な板硝子がはまっている。


 安宿には窓自体がなかったり、あっても明かり取り程度の小さな天窓だったり、硝子が入っていない板戸だけの部屋などもあったのだ。

 そもそも王都を出た後は、窓にきれいな硝子がはまっている建物を見かけることが少なくなった。

 板戸しかない家の住人は、雨の日や、冬の寒い日には窓を閉ざすしかなくて、昼間も薄暗い部屋で過ごすことになるのだろう。

 小さな窓に硝子がはまっている建物でも、それは透明な板硝子ではなく、歪んだ曇り硝子や、傷や気泡が入った粗悪なものだった


 屋敷の大きな硝子窓を、毎日のように磨かされていた身からすれば、そこは複雑な気分である。

 きれいな板硝子がはめ込まれた窓は美しいし、外の景色が見えるのも楽しい。ピカピカに磨いた硝子に自分の姿が映ることは、掃除をする上で究極の達成感になる。

 けれど、最初から硝子がなければ磨かなくて済む。


「どうしたの? レッドに何か用だった?」

「レッドに……っていうか三人にお願いがあって」

「何? 遠慮しないで何でも言ってよ」

 わたしは被せ気味に返答するリオンに、たいしたことではないのだと前置きして切り出した。

 レッドがいないのは、仕方がない。後で会ったら言っておこう。

 室内の安全性や、いざという時の退路を確認しておくことは、従者であり護衛でもあるレッドの仕事であり、盗賊ジョブを持つ者の習性でもあるからだ。


「今後、わたしのことはハーフエルフで通してほしいの」

 クロスが本から顔を上げた。

 わたしは続ける。

「リオンもクロスも、貴族家から亜人種(ハーフエルフ)が出ないことは知っているでしょう? お祖母様がエルフだと言っても、獣人族にとって四分の一(クォーター)なんか、ほとんど人間だわ。追っ手の件もあるし、家名がバレると色々ややこしいことになるから……」

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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