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171.推理①/リオン視点

 おそらく、馬車強盗に見せかけた一団を雇った者と、家出娘捜索の依頼を出した者は別だろう。

 ついでに言うと、魔装兵団も別のところからの依頼で動いている可能性が高い。

(どうにも手口がちぐはぐ(・・・・)過ぎる)


 アリアに刺客を差し向けている人物は、継母(イーリース)一人ではないのかもしれない。

(アリアちゃんには、もう少し詳しく事情を聞いてみる必要がありそうだ)


 初めに、馬車強盗があった。

 アリアの継母(ままはは)であるヴェルメイリオ伯爵夫人が、目障りな先妻の娘(アリア)を殺そうとして起こした事件だ。

 村に留まっている間に、何度か協力者──子飼いの密偵たちから報告を受けたが、それによると、馬車強盗には盗賊団と雇われの魔法使いだけでなく、暗殺者と思われる者が混じっていたらしい。


 現場の死体を調べたところ、馬車の乗客たちの死因はほとんどが魔法や剣によるものだが、盗賊たちは違うという。

 盗賊には、喉を掻き切られて即死した者が四人、刃渡りの短い刃物で斬りつけられて死亡した者が六人。──これはレッドの手柄だろう。猫君(レッド)は格上を相手に、よく戦ったと言える。


 残った十人以上の賊は、全員が原因不明の死を遂げていた。

 報告では、恐らく毒だということだった。

 死因が毒だと言うならば、アリア以外にいないだろう。毒薬使いのジョブを持っていることは聞いている。

 

 だが、毒薬使いというのは、食事や飲み物に混ぜる毒殺用の毒を供給するのが主な仕事である。

 稀に魔物を倒せるような戦闘用の毒を作り出す者もいるが、それだって使えば薬瓶なり薬包紙なり、アイテムの残骸が残るはずなのだ。

 しかし、あの場所には何も残っていなかったらしい。

 

 ダンジョンではないから、薬瓶が消えてなくなるはずもない。

 燃えたか風で飛ばされたのだとしても、十人分の毒薬を包んだ薬包紙が、切れ端の1枚も残っていないというのはおかしい。

 そもそも、全員を即死させるような毒薬とはいったいどのようなものなのか。

 魔法使いさえ、防御魔法を展開させる間もなく死んだらしいのだ。

 そのように強力な毒薬が存在するのなら、とっくに魔物駆逐薬としてギルドで把握されていそうなものだ。


 仮に毒魔法だったとしても、広範囲に点在する人間を、全員横死させるような魔法をアリアが使えたのだろうか──?

(毒魔法は無属性魔法だったはずから、あり得そうな気もするが……)

 この辺りは専門家のクロスに意見を聞いてみるしかない。


 問題は、この毒で死んだと思われる者たちの中に、“暗殺者”が含まれていたということだ。

 毒の種類がわからないため、死体を詳細に調べることはできなかったそうだが、一人は暗殺者ギルドの一員であったことが報告されている。


 盗賊が暗殺者ギルドと手を組むとは考え難いため、先に雇われたのは暗殺者のほうだろう。

 で、暗殺者が盗賊と魔法使いを雇ったと考えるのが自然だ。

 主犯がイーリースだというのなら、アリアが魔法を使うことや、それなりに戦える奴隷を連れていることを知っているはずである。

 それらの話を聞かされた暗殺者側が、警戒して盗賊たちを先兵として使ったとも考えられる。

 アリアとレッドはそれまでに何回か刺客を撃退したと言っていたから、暗殺者側も過剰戦力とも言える人数を投入してきたのかもしれない。

(それか、とんでもなく報酬がよかったか)


 で、この馬車強盗もどきを差し向けたのが伯爵夫人(イーリース)だとするならば、裏ギルドに“家出娘の捜索”という素人くさい依頼を出したのは誰かという話になる。

 どうにも、大金を餌に大人数を雇った者と、人物像が一致しない。

 その上に、魔装兵団だ。

 国家機関である兵団(あれ)を動かせる人間は限られている。

 アリアの言う通り、イーリース(継母)レナード(実父)が関与しているとしたら、その働きかけに応じた裏切り者が、国家の中枢に巣くっているということになる。

 

(思ったより大事(おおごと)になりそうだな……)

 違法な亜人種狩り組織や、亜人種奴隷の売買を煽動していた本当の(・・・)首謀者を捕まえ、アリアに掛けられた冤罪を晴らして、それで終わりとはいかないかもしれない。

ここまでお読みくださってありがとうございます。

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