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君に、胸キュン

作者: euReka
掲載日:2022/09/06

 中学に入学したとき、初めて話した女子が、僕を「糞虫」と呼んだ。

「あなたは糞虫だから、売店で牛乳買ってきてよ」

 僕は意味も分からず、彼女が床に投げた小銭を拾い、二〇〇ミリリットルの牛乳パックを買って教室に戻った。

「糞虫のくせに、よくできたじゃない。次も、あなたに命令するわ」

 彼女はクラスでもかなり浮いた存在で、なぜか僕にだけいろいろと命令をする。

「今日は暑くて死にそうだから、糞虫のあなたが、あたしを涼しくしなさい」

 教室にはエアコンがないから、僕は仕方なくノートをぱたぱたして彼女に風をおくった。

「まあ、糞虫ならその程度しか出来ないわね。あたし、本当は今、死ぬほど気分が悪いから学校を早退するわ」


 彼女はそのまま入院して、しばらく学校に来なくなった。

 しかしクラスでは、僕と彼女が変な関係を持っていることが問題になっていた。

「伊藤桃花さんは、井上シンジさんを“糞虫” と罵りながら、まるで召使のように命令をしていました。調べてみると、糞虫とは動物の糞を食べたりする昆虫の総称で、相手を中傷して見下すときの俗語でもあり……」

 クラスのホームルームでそう告発され、僕は恥ずかしくて顔を上げることが出来なかった。

「伊藤桃花さんの行為は異常で、見るに堪えません。従順な井上シンジさんは、伊藤さんへの恐怖心で誰にも相談できず、きっと苦しんでいるはずです」


 僕はその後、担任教師に呼ばれて、彼女のことをあれこれ聞かれた。

「嫌なことは我慢せずに、全部先生に教えて欲しいの」

 たしかに、僕は糞虫と呼ばれて絶望的な気分になったけれど、購買で牛乳を買ってくるなど、彼女の役に立てたことが嬉しかった。

「先生は新米教師だけど、君たちの関係はたぶん危険だと思う。伊藤桃花さんにも事情を聞かなくちゃね」


 彼女は退院して数日後、僕を体育館の裏に呼び出した。

「今夜、新米教師とクラスの連中の家に放火するから、あなたに手伝って欲しいの」

 僕は、意味がよく分からなかった。

「これは最後の命令よ。今夜零時に、校門の前で待っているからね」

 僕は、なるようになれと覚悟して真夜中の校門に行ったが、約束の時間を過ぎても彼女は現れなかった。

 結局、僕は校門の前にで眠り込んでしまい、目を覚ますと、朝の光の中に彼女の顔が見えた。

「あたしが本当に、放火すると思ったの?」

 彼女は、僕の頭をぐちゃぐちゃに撫でた。

「今日は休日だから、デートしましょ」

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― 新着の感想 ―
[一言] タグとタイトルがめちゃくちゃで ?ってなったけど読んだら納得した 面白かったです
[良い点] YMOですね!タイトルでさわやかな話かな、と読み始めたらメンヘラさんたちの歪んだ関係が。これはやばい、と読み進んでみたら、なぜだか良さげなエンディングに着地してました。なんだ、やっぱりさわ…
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