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地平線のかなたで  作者: 羽月蒔ノ零
地平線のかなたで
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待人来る(まちびときたる)

 新宿駅へ向かう列車に揺られながら、俺は未来を見た。

 ぼやけていてはっきりとは見えないが、どうやら今日は、今までとはだいぶ異なる未来が待っているようだ。


「よ! 今日も頑張ろうぜ!」

「おう!」


 待ち合わせ時間ぴったりに優莉と合流し、おなじみの場所に陣取って能力者が現れるのを待った。


 この方法は今日で最後だ。今日能力者に巡り合うことができなければ、探し方を変更するつもりでいた。


 今日はなぜか、やたらとこちらを見てくる人が多い。昨日もおとといも多かったが、これほどではなかった。更に、写真を撮られることも多い。

 どうしてだろうと不思議に思っていると、突然女子大生らしき2人組が話しかけてきた。


「すいません、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

「いいですけど、どうして私たちなんかと写真を?」

 優莉がキョトンとしながらそう尋ねた。


 どうやら、俺たち2人のことがネットで話題になっているらしい。新宿駅に妙な紙を持った変な2人組がいると、写真付きで広まっているようだ。

「へえー。そうなんだ。まあ多くの人に知られるのは悪くないね。んー、けどやっぱりちょっと嫌かなあ。こんな風に有名になってもあまり嬉しくない。お面でも被っとけばよかった。今からでも買ってこようかなあ」


 その後も一緒に写真を撮ってほしいという人が何人か来た。俺たちはいつの間にか、なかなかの有名人になっていたらしい。


「はあ。これじゃあまるでパンダだ。やっぱりそんな簡単に能力者が見つかるわけないか。他の方法を考えるべきだね。ちょっと甘かったなあ。まだ早いけど、一旦撤収しようか」

「そうだねえ。なんとなくこの方法ならいけると思ったんだけどなあ……。あ、でももう少ししたら、『超能力研究同好会』っていう部活に入ってる高校生たちがインタビューに来るよ。せっかくだし、そのインタビューが終わったら撤収しよう」

「なるほど。わかった!」


 数分後、3人の高校生がやって来た。

「すいません、私たち、超能力研究同好会という部活に入っている者です! もしよければ、インタビューをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ええ。いいですよ」

「ありがとうございます。では、好きな食べ物は何ですか?」

「僕は炒飯が好きですね」

「私はオムライスが好きです」

 その後もいくつか質問に答え、5分ほどでインタビューは終わった。


「さ~て、次の案を考えねば……」

「あ、待って、もう1人来るわ……、……ん?」

「え? どうしたの?」


 そして、白いシャツを着た好青年が俺たちの目の前にやって来た。その男性はそこで立ち止まり、

「すみません、ペンギン広場という所へ行きたいのですが、道に迷ってしまって……。このあたりでしょうか?」そう尋ねてきた。

「ペンギン広場ですか……。たしか、もっと向こうだったはずです。向こうにある大きな道路を渡った先にあったと思います」

「なんと。そうでしたか。ありがとうございます。ところで、これは何ですか?」

 その男性は、俺たちの商売道具である『特殊能力者を探していますと書かれた紙』に触れ、目を閉じた。

「なに? 変な人? 時間止めようか?」

「いや、その必要はない。やっぱりこの方法は正しかったみたいだ。優莉、大手柄だよ!」

「え? どういうこと?」


「……なるほど。3日前からここで特殊能力者を探していたわけですね。一度時間を停止させ、新宿の雑踏をピタリと止めもしました。あとこの文字ですが、少し丸みを帯びたものに変更しましたね」


 その男性は、俺たち2人しか知らないであろう情報や出来事をピタリと言い当ててしまった。


「驚かせてしまって申し訳ありません。実は私は、触れたものに関する過去を読み取ることができるんです。新宿駅で特殊能力者を探している人たちがいるとネットで知り、京都からやって参りました。藤堂とうどうと申します」


「おお、おお、おお~! やった! 遂にやったぞ咲翔! いや~、あなたのような方をずっと待っていたんですよ~! 咲翔、ほら、鐘! 鐘!」

 優莉にそう言われ、俺は鐘を鳴らした。商店街の福引きで当たりが出た時に鳴らすようなタイプの鐘だ。優莉が近所の『なんでも屋』で購入したものらしく、能力者に出会うことができたら鳴らしてほしいと頼まれていた。


『カラン! カラン! カラ~ン!』


 世界中のすべての人がこっちを見ているような感じがする。今すぐこの場から離れたい。


「よし、とりあえず場所を移そう! ここじゃ落ち着いて話もできない」

 ということで俺たちは、落ち着いて話ができそうな場所へと移動することにした。

 なんとなく人混みに溶け込んだあたりで、急に世界のすべてが止まった。人でごった返す騒々しい新宿駅を、一瞬にして静寂が包み込んだ。

「もし誰かに尾行でもされると面倒だからね。念のため、ちょっと時間を止めさせてもらうよ!」

「おお! これが時間を止める能力ですね! 凄い!」


 時間の止まった新宿の街を歩いていると、2日前に訪れた喫茶店を見つけたので、またその店にお邪魔することにした。

 優莉に時間停止を解除してもらったあと、店内に入り、席に着いた。

 そして、藤堂さんはコーヒー、優莉は紅茶、俺はアップルジュースを頼んだ。


「改めまして、藤堂誠志郎とうどうせいじろうと申します。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします!!」俺と優莉は2人同時に挨拶をした。



「僕は鈴木咲翔と申します。藤堂さんとは正反対の、未来視能力を持っています」

「私は、澄野優莉と申します。先ほどお見せしたとおり、時間を止める能力を持っています。それにしても誠志郎とは、かっこいいお名前ですなあ」

「ありがとうございます。正直、自分でも結構気に入ってるんです。ところで、お2人はなぜ特殊能力者を探しているのですか?」


「実は、最近私も咲翔も、能力を使用した際に、世界がぼやけたような、よどんだような、何ともいえない違和感を抱くようになってしまったんです。誠志郎さんは、過去視能力を使った際に、何か以前にはなかったような違和感を抱くことはありませんか?」

「そうだったんですか。確かに僕もここ最近、過去の風景がぼやけるような、よどんだような状態になることがよくあります」


「やはりそうでしたか。私たちは、この世界に今後起こるであろう何かがこの違和感を生み出しているのではないかと考えています。その謎を解き明かすためには、おそらく我々のような特殊能力者の力が必要なのではないかと考え、特殊能力者を探し始めたんです」


「なるほど。そうだったんですか。お役に立てるかはわかりませんが、ぜひ私も協力させてください」

「はい! もちろんです。こちらこそぜひよろしくお願いします!」

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