澄野優莉
澄野優莉さんの能力が開花したのは、小学生の頃だったそうだ。
ある日の朝、ルービックキューブをしていた澄野さんだったが、あと少しで6面すべてを揃えることができそうなのにも関わらず、学校へ行かなければならない時間が来てしまった。
――時間が止まれば、6面全部揃えられるのに!――
彼女がそう強く念じたその瞬間、ピタリと時間が止まったのだという。
彼女は時間が止まったことに大変驚きつつも、とりあえずルービックキューブの完成を優先させたそうだ。そうしたのは、心を落ち着かせるためでもあったらしい。
そして、人生で初めて自分の力だけで6面を完成させた彼女は大喜びし、そこからようやく周りの状況を詳しく調べ始めたそうだ。
時計を見てみたが、やはりまったく時間は進んでおらず、家族もみんな止まっていた。蛇口から出る水も、外を走っていたはずの車も、風も、雲も、すべてが止まっている。
しかし、そのすべてが止まった世界の中で、彼女だけが、自由に動き回ることができた。
やはり、自分が時間を止めてしまったようだ。ルービックキューブを完成させたいからといって、世界を止めてしまった。さすがにこれはやりすぎだ。どうやったら元に戻せるのだろう……。
彼女は悩み、そして、
――また時間が動き出してほしい!――
そう念じると、すぐにまた世界が動き始めたらしい。
心に強く思うことで、時間を止めたり、元に戻したりできるのだそうだ。
そして高校卒業後、東京の大学へ進学するため、兵庫県から上京してきたのだという――。