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1000字で読める『短編集』

1000字で読める『小包み』

作者: 九十九 点

 とある研究所の前に封の閉ざされた小包みが、一通の手紙と共に置かれてあった。


所の職員が確認するも宛名は不明。気味の悪いものだなぁと思い数人の同僚と封を開けると、中には小さな桃色の液体の入った小瓶が一つ、また青色の液体の入った小瓶が一つ、丁寧に梱包されて入っていた。


そして手紙には

「此方ハ(ワタクシ)宛テニ贈ラレテ来タ新型ノ爆破型兵器デゴザイマス。私ニハ真ニ爆弾ノ類イナノカ分カラナイタメ、勝手ナガラ調ベテ頂ケルト有難イデス。」

と達筆な字で書かれていた。職員と同僚たちは怯えながらも、心中奥底にある好奇心の元、調査を開始した。



 後日、液体の成分を調べていた一人の同僚から衝撃の事実を聞くこととなった。


一つはどちらの液体とも爆弾の類いではなかったということ。この事実は職員たちを安堵と消化不良の念で包んだが、二つ目の事実で一変した。


その事実とは、


どちらも苺の果汁の成分と牛乳の成分で出来たもの。そう、イチゴミルクだったのだ。


何故イチゴミルクが爆弾と間違われたかは謎であるが、尚更謎なのは片方のイチゴミルクが青色だったことである。


どうやら食品添加物や着色調味料等は入ってはいないとのこと。この疑問に一人の同僚が更なる疑問を募らせた。


「後付けした色でないのであれば、イチゴとミルク、どちらが青かったんだ……?」



その場が水を打ったかのように静まり返った……。



 更に後日、研究所の職員は日本中にこの奇妙かつ奇怪な液体を堂々と面前の前で発表した。


成分を事細かに分析・抽出し、味・香り、そして色、全てが同一の複製品を大量生産することに成功。遂に『青いイチゴミルク』が市販されることとなった。


その奇天烈なる容姿から興味本位で買うものが増え、またその極上の味に惚れたリピーターが続出、一躍大人気商品となった。しかし、その裏で日本全土はとある論争で二分することとなった。


「青いのはイチゴなのか?それともミルクか?」


山が美味いか、それとも里か……。赤にするか、緑にするか……。そんな争いなど全て無に帰したかの如く、日本のみならず世界でもイチゴ派とミルク派で主張が激しくぶつかり合うようになった。


言葉で解決できなくなった一部の若者たちは各地でデモ活動を開始、国家間においても軍隊が動くほどの第三次世界大戦がが勃発しようとしたその時、一人の少年がこう呟いた。



「どっちでもよくない?」



と。この一言で、パンドラは再び閉ざされた。


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