椅子
配役
甲:ボケ
乙:ツッコミ
動作、注釈は*
乙 「どうも~みなさんこんにちは~」
*甲、折り畳み椅子を置き、ふてぶてしい態度。
甲 「こんにちは……お元気?」
乙 「態度を掴みかねる!」
*甲、不敵に微笑む。
甲 「その程度の男では……ない」
乙 「程度じゃなくて態度を問題にしてくれない!? 立て! スタンダップ!」
甲 「立たせたかったら……それなりの誠意を……見せてもらおう」
乙 「王様か何かでいらっしゃる?」
甲 「俺様で……いらっしゃる」
乙 「どちらさま!?」
*甲、足を組むか組み換え、観客を指さす。
甲 「あっちのほうに……住んでいる」
乙 「そういう意味じゃねえ! ざっくりしすぎだし! さっぱりわからんし! そして一向に立ち上がろうとしねえ!」
*甲、乙の方向に顔を向け、鼻で笑い、正面に向き直る。
乙 「なんだそれ!」
甲 「馬鹿に……した」
乙 「知ってるよ!」
*甲、キメ顔。
甲 「馬鹿に……している」
乙 「知ってるって!」
*甲、流し目。
甲 「馬鹿に……していた」
乙 「いつから!? ずっと? あ~もう! 絶対に立たせてやるからな!」
*乙、甲のまわりを一周する。
乙 「軽そうだし……持ち上げられるだろ」
*乙、椅子ごと持ち上げようとするが、持ち上がらない。
乙 「おもっ! 何で出来てるんだ!?」
甲 「重さは……7トン」
乙 「嘘つけ!」
甲 「嘘を……ついた」
*乙、なにかを考える動作。そののち閃いた顔。
乙 「嘘を、つくな」
甲 「重さは……6トン」
乙 「1トン減ったけど! まだだいぶある! だいぶ読んでる! サバを! デカいサバが六匹泳いでる!」
甲 「1トンは……豚一頭分」
乙 「そっちの豚かぁ~~~!」
*乙、胸に手を当てて安らかな顔。
乙 「なっとく……するかぁー! 豚一頭分だから1トンって馬鹿! じゃあ鶏は一羽二羽だけど!? どうなるんだよ!?」
甲 「鶏は……デシベル(dB)」
乙 「音の大きさ? どういうことだよ」
* 甲、真剣な表情。
甲 「朝……うるさい」
乙 「おまえの感想! 全部その調子か!?」
甲 「1コケコッコーで……目が覚める」
乙 「醒めてしまえ、現状に」
甲 「2コケコッコーで……コーヒーを淹れる」
乙 「優雅に朝食してるねえ!」
甲 「3コケコッコーで……二度寝する」
乙 「せっかく淹れたのに冷めるねぇ! コーヒー! ちゃんと飲め! そしてちゃんと立て!」
*甲、腕時計を確認し、立ち上がる。
*乙、驚く。
乙 「おぉ……びっくりした」
甲 「時間が……きた」
*甲、椅子を持ち上げ座っていた部分を見せる。
*書いてあるのは『お誕生日おめでとう』。
*甲、おもむろに歌いだす。独特のテンポで。
甲 「ハッピバースデー……トゥ、ユー。ハッピバースデー……トゥ、ユー。ハッピバースデー……」
*乙、歌っている甲を制止する。
乙 「ストップストップストップストップ。今日ね……俺の誕生日じゃない。全然違う」
*甲、無表情のまま沈黙。
乙 「まぁね、嬉しいよ。祝ってくれたのは。つぎは本当の誕生日に祝ってくれよ? 期待してる!」
*甲、怪訝そうな顔
甲 「今日は……俺の誕生日」
乙 「そっちかぁ~~~~~!」