『さがしもの』~たからのありか~
冬童話2021参加作品
そこは 不思議の国の小さな森の中。
動物達と妖精の国。
緑の妖精ポロロは いつものように森へ仕事に出掛けていきました。
ポロロの仕事は森の若木達のお世話です。
栄養の高い土をかけ寝床を作ったり、美味しいお水を飲ませたり、すくすく育つよう散髪したりして、皆に太陽の光が当たるようお世話をするのです。
「さあ、今日もがんばるぞー!」
張り切って仕事に向かう途中で ポロロは クマのベアンさんに会いました。
「今日も精が出るねポロロ」
「おはよう!ベアンさん、今日も良い天気だね。あれ?」
みるとベアンさんは 胸にキラキラ光る、青い石の首飾りをつけていました。
「キレイな首飾りだね、どうしたの?それ」
ベアンさんはちょっと自慢げに胸を張り ポロロに答えました。
「拾ったのさ。キツネのフォクシーおばさんが風邪をひいてコンコン辛そうだったから、ハチミツを届けてあげたんだよ。その帰りに『青い石』を拾ったのさ」
「へえ、いいなぁ」
青く澄んだキレイな石は 清らかな水の流れのように、キラキラと光を反射して輝いていて、ポロロは羨ましくなりました。
ポロロが森の仕事場につき、若木に水をあげていると、今度はフクロウのホーリー先生が飛んで来ました。
「今日も頑張ってるね ポロロ」
「こんにちわ!ホーリー先生、今日も良い風ですね。あれ?昼間なのにお出掛けですか?」
ホーリー先生は眠そうに下のまぶたをしぱしぱさせながらポロロに答えました。
「うむ、子ブタ達が勉強しないで困っていると お母さんブタのピーチさんがブーブー文句を言っとったからな、勉強を教えに行ってきたんじゃよ」
見るとホーリー先生は帽子にキラキラと光る緑のブローチをつけていました。
「素敵なブローチですね、どうしたんですか?」
ホーリー先生は頭をちょっと傾げて 恥ずかしそうにポロロに答えました。
「うむ、今そこで『緑の石』見つけたんで、つけてみたんじゃ」
緑色の爽やかな石は 木漏れ日を受けて 風に揺れる緑のように優しい光を放ち瞬いています。
ポロロは欲しくなりました。
「いいなぁ、僕も探してみようかな」
ポロロは仕事もそっちのけで 石を探しに行ってしまいました。
「あるかなぁ」
草をかきわけ、石をどかし、ポロロはキレイな石を探します。
「ないかなぁ」
石が沢山ある川原ならあるかと、森を抜け、川原に出てさがします。
「ないなぁ……」
ポロロは良さそうな石を手にとりますが、ベアンさんの『青い石』やホーリーさんの『緑の石』には及びません。
「これは、どうかな?」
それどころか、ポロロが手に取る石は 黒いものばかりです。
「なんだい、ちっとも見つからないじゃないか!!」
ポロロは石を投げつけて、プンスカしながら家に帰りました。
家に帰る途中、ベアンさんの家の近くで 光るものを目にしました。
「あっ!石だ!」
それは 青い石でした。
「これは、ベアンさんのかな」
青い石は ベアンさんの首飾りの石に良く似ていました。
「いいや、これは僕が見つけたんだから僕の石だ!僕が探しあてたんだ!!」
ポロロは青い石をポケットに入れて家に帰ります。
ベアンさんの家の前を通った時、家の中からベアンさんが泣いている声が聞こえました。
「青い石がなくなっちゃったよー」
ポロロは耳をおさえて ベアンさんの家の前を走り抜けました。
家に帰ったポロロは青い石をだして、光にあててうっとりと眺めていました。
「あれ?おかしいな」
青い石はもっと光輝いていたはずなのに、ちっともきれいじゃありません。
ポロロは息を吹きかけながら布でキレイに磨きました。
でも、青い石はどんどん光を失くしていきます。
「どうしよう」
ポロロは怖くなりました。
とうとう石は黒くなってしまったのです。
川原でポロロが探した石と同じのように真っ黒です。
ポロロはどうしたらいいのかわからなくなって、ニワトリ村長のレグさんのところに駆け込みました。
「レグさん!助けて!」
ポロロはレグさんに泣きつきます。
「僕、大変なことをしちゃったよ、ベアンさんの青い石をダメにしちゃったんだ」
レグさんはポロロに優しく言いました。
「ポロロや、その石は 自分で見つけて自分で磨かなくては意味がないんじゃ。ベアンが磨けばまた元の輝きをとりもどすじゃろう、ベアンに返してあげなさい」
ポロロはレグさんに反抗します。
「嫌だよ!そんな事したらベアンさんに嫌われちゃうじゃないか!僕、仲間はずれにされちゃうよ!そんなの嫌だ!」
レグさんは困った顔をしています。
「僕が拾った事はレグさんしか知らないんだ、誰にも言わないで、内緒にしておくれよ、レグさん!約束だよ!」
ポロロはレグさんにお願いして家に帰りました。
家に帰る途中、ベアンさんの家のまえを通ったら、ベアンさんはまだ泣いていました。
ベアンさんの家の中からしくしく泣く声が聞こえます。
(黙っていればバレやしないよ)
ポロロはベアンさんの家を通りすぎます。
(だけど……)
ベアンさんの泣く声があまりにも悲しそうで、ポロロも悲しくなってきました。
とっても悲しくなりました。
″コンコン″
ポロロはベアンさんの家のドアを叩きます。
「ポロロじゃないか」
ドアを開けたベアンさんはポロロが泣いているので驚きました。
「ベアンさん、ベアンさん、ごめんなさい!コレ……」
ポロロは黒い石をベアンさんに差し出します。
「この石がどうかしたのかい?」
「これはベアンさんの青い石だったんだ。でも僕、羨ましくて 家に持って帰っちゃったんだよ。そしたら黒くなってしまって、ごめんなさい!」
ベアンさんは 謝るポロロの頭に手を伸ばしてきました。
怒られる!
ポロロは首をすくめます。
″ポンポン″
「え?」
頭にぷにぷにと柔らかい感触。
ベアンさんの肉球が当たります。
「正直に話してくれてありがとう、ポロロ、いいんだよ、こうして持ってきてくれたじゃないか」
ベアンさんは、怒るどころか ポロロの頭を ポヨンポヨンと優しく撫でて 許してくれました。
その時です。
「あっ!」
黒い石が パーっと光の線を放ち輝きだしました。
「青い石だ!!」
青い石は ベアンさんの優しい心に反応して、もとの美しい光を取り戻したのでした。
心配して ポロロのあとを追いかけてきた ニワトリ村長のレグさんは『ケッコウ、ケッコウ、コケコッコウ』と、安心して 満足そうに帰っていきました。
ポロロは ベアンさんの家で、石を届けたお礼にハチミツパンケーキをごちそうになり、すっきりした気分で家に帰りました。
「なんだろう?」
家のそばまで来て、ポロロは不思議に思いました。
なんだか家の前が妙に明るいのです。
「あっ!」
それは、石でした。
赤い石が、オレンジ色のあたたかい光を放ちながら 赤になったり、黄色になったりしながら、不思議な輝きでポロロの家を明るく照らしていたのでした。
「赤い石、なんで……」
とうとうポロロは石を探しあてたのです。
青い石は癒しの心。
ベアンさんの 人を心配し、相手の事を思いやる気持ちが現れた石。
緑の石は知恵の心。
人々のために知識を蓄え、困っている人をほおっておけないホーリー先生の生き方が現れた石。
そして、赤い石は勇気の心。
自分に打ち勝ち、間違いを告白し、ベアンさんに謝ったポロロが見つけた勇気の証。
「ちゃんと、磨かないとね」
ポロロは『赤い石』を腕輪にしました。
見つけた石は 自分で磨かなければ輝きを失ってしまう。
いつまでもその美しさをうしなわないように、今日もポロロは自分を磨く。
今日も元気に、赤い腕輪をして 森の仕事場へ出かけていくのです。
あなたは 何色の宝石を 何個持っていますか?
あなたの宝石箱が 色とりどりの宝石でいっぱいになることを祈っています。