第2話 彼女の場合
仲の良い男友達がいた。
いわゆる幼なじみ。
なんてことない、乱暴なヤツ。
すぐにギャーギャー騒ぐし子供っぽい。
私はお姉さんの気分だった。
でも、クラスの中では結構人気があるらしくて、そんなアイツと友人だってのが誇らしかった。
私の友達でもアイツを好きだってのが現れた。
それを聞いて初めて男を意識してしまったんだ。
言われてみれば、男らしいし、優しいし、面白い。
一緒にいてとても楽しい。
結局、いつの間にか気持ちを持って行かれていた。
好きになっていたんだ。
でも、今まで友達だったのに
「好きです!」
「オレも!」
「ハッピー!」
なんてことになるわけない。
意識すればするほど、アイツの顔が見れなくなってしまっていた。
そんな小学時代高学年。
五年生の時に初めてバレンタインチョコを手作りで作った。
「義理だから。照れくさいからここで食べちゃってよ」
セリフまで用意してた。そしてアイツの家の玄関のところまで行った。
……だけど……。
とてもじゃないけど、渡せるわけがなかった。
それ以前に最近全然話してない。
私の中ではすでに天使長クラスのきらびやかで直視すると目が焼ける存在になっていたんだ。
六年生の時もバレンタインチョコを作った。
親には友チョコだといいはった。
そして、天使長の玄関まで行く……。
でも天使長に渡せるわけもなく、一人電柱に隠れてチョコを食べた。
天使長の部屋の灯りがつくのを見ながら。
楽しい思い出。
小学校の四年生の時、二家族で山のロッジを借りてキャンプに行ったっけ。
アイツの弟妹三人とウチの弟とあわせて5人でアスレチックで遊んだ。
ワーワーいいながら……。
バーベキューでは肉の奪い合い。
夜は手持ち花火をみんなでクルクル回して遊んだ。キレイだった。
夜、一緒に布団を並べて寝た。体の大きい順って、アイツから順番にその次は私……。
その頃は好きって気持ちはなかったけど、夜中話をしてたのを覚えている。
どうしても、話せない。顔も見れない。
どうして? 中身は変わっていないのに……。
私の気持ちとは裏腹にどんどんと疎遠になって行くのがわかる。
ホントは前みたいにいっぱいおしゃべりしたいのに……。
中学校に入っても、いつも目でアイツを追っていた。
体育で校庭で走るアイツ。
廊下を友達と笑いながら通り過ぎて行くアイツ。
部活で汗を輝かせて頑張っているアイツ……。
ついつい間があくとアイツのことを考えてしまう。
「まぁ〜てぇ〜。どこへ行く〜」
……ヤバ。とうとう幻聴まで聞こえるようになって来た。
こんなのありえない。
どうしてぇ〜?
どうしてこんなに好きになっちゃったのぉ〜?
家に帰って、ベッドの上にゴロリと横になった。
小学校の卒業アルバムを引っ張りだしてアイツの写真を眺めるっていういつもの日課……。
でも、もう何年も話してない。
普通の人よりもアイツと話してない。
昔は幼なじみっていう特権があったのに……。
明日こそ。
明日こそ、ちょっとでもいいから話してみようかな?
アイツが家を出る時間に合わせて、一緒に登校する!
次の日。学校に行こうと歩き出した。
いつも見ているアイツの家の玄関。
出て……来ないよね……。
ドキドキする。
も、もしも、今ドアが開いたら心臓止まっちゃうかも!
いやぁ、ダメ。
今日はちゃんと話をするんだから。
そう思っていたら、ドアが開いた。
開いちゃった。
それでアイツが出て来た!
た、立ち止まれ。足!
……でも……。止まらない。
無理。そもそも天使長を直視するなんて許されないのだ。
目が焼ける。
体が焦げる。
私は、少しだけ勇気を振り絞って、手を挙げてニッコリ微笑んだ。
でも、アイツはただ私を見つめているだけ……。
無理。
もう無理。
通り過ぎるしかなかった。