ステータスはリッチですか?
「結論から言いますと、全体的にショボいです」
おい、ショボい言うな。
これでも転生者だぞ? チートとまでは言わないが、魔力がなくても魔法が撃ちまくれるんだぞ?
金が蒸発していくだけで。
それに不死の王なんだろ? 死なないってことは、どんな攻撃でも耐えることができるってことだろ?
いや、復活するのに金が必要だが。もっと言えば、ちゃんとした復活ができるのか、もの凄く不安だが。
そ、そんな俺に向かって、
「全体的にショボいって……もう少し言葉を選べよ。そのうち寝込むぞ?」
「寝込むのは勝手にしていただいて構いませんが……転生者でリッチなら、魔力関連の数値がショボいのはシャレになりませんよ?」
それは仕方がない。
そもそも日本に魔法や魔力なんて力は存在しないからな。
科学力とかなら、この世界よりも発達しているんだろうが。
「それに、筋力もBマイナス。俊敏性はCプラス。魔法使い職ならいざ知らず、魔物ならAマイナスはあってもおかしくないんですよ?」
Bマイナスだとか、Cプラスだとか……通知表みたいな評価をつらつらツラツラ。
好きでそんな評価になった訳じゃねぇんだよ。
「どうせ霜降り女神の嫌がらせだろ? そうじゃないなら、この世界が俺に厳しすぎんだよ」
「凄い開き直り方ですね……神様か世界のせいだなんて」
ほっとけ。大体それしか思いつかん。
異世界に来た初日だぞ? 右も左も分からねぇ俺が、こんな厳しい仕打ちを受ける覚えがない。
「さてと……それよりも、これからどうされるんですか?」
「マリィこそ、どうするつもりなんだ?」
内心では、このまま惰性でマリィについて行こうと考えている。
戦闘ができる人間がいることは、魔物の出現する異世界では心強い。
なんせ俺、戦闘する度に金を消費していきますから。
「私ですか? そうですね……どっかの誰かさんに仲間をやられたので、近くの村で宿を借りようかと思います」
「あれ? 近くの街って、向こうの方なんだよな?」
俺は歩いてきたであろう方角を指さす。
足跡が残っていたから分かったが、この砂だらけの土地で方角なんて定かじゃない。
俺は都会に住んでいたシティーボーイだからな。……この言い方、田舎モンのそれだな。
「あぁ。向こうにも街はあるでしょうが、」
と、呆れた口調で言うマリィは、俺とは真逆の方向に指をさして、
「向こうの方がかなり近いですよ」
「おい、どれだけカマをかけてたんだよ? この際だから、全部教えてくんねぇ?」
「ほとんど全部ですね」
「こいつ……!」
「それよりどうするですか? リッチーとでもなれば、単独で村に入れませんよ?」
「…………よろしくお願いします」
俺はご主人様に頭を下げた。
砂漠は三十分くらい歩いたら抜けた。抜けたと思ったら、今度は徐々に緑が多くなってくる。
村の周りは自然が多い。それは日本でもお馴染みな風景だろう。
そしてそれは、異世界でも例外ではないはず。まぁ、異世界初心者の俺は、すべてイメージによるものなんだが。
そんな自然は、やがて大自然へと変わっていき、次第に……
「おい、ご主人様」
「黙りなさい。ここは林です。森ではありません」
マリィが断言する林とやらを歩き始めてすでに一時間くらい。
村が近いとは聞いていたが、さすがに歩きすぎじゃねぇ? というか、舗装された道が途中からなくなってきたんだが? 今歩いているのは獣道ってやつじゃねぇの?
確かに俺は、林と森の区別なんて、ろくに分かりませんよ?
でもなぁ?
「これは明らかに森だろぉ……」
月の光が一切入ってきていない。というか、途中から松明を手に進んでんじゃねぇか。
手持ちの銅貨も残り二枚だし……これで翻訳の魔法までなくなったら、とうとう路頭に迷うことになるぞ?
あ、一枚減った。あと三分で会話が成り立たなくなる。
「おいマリィ。マジでピンチになりそうだから、ちょっと聞いてくれ」
「……なんですか?」
「ここまでの道中で、俺の魔法は所持金を減らしていくって話をしたよな?」
おかげで銅貨を凄い勢いで蒸発させていったんだがな。
俺が魔法で使った硬貨って、どこに消えていくんだろうか。これはこれで気になる。
「そうですね」
「で、今使っているコールって魔法なんだがな? 三分で銅貨一枚を消費するんだよ」
「そうなんですか」
「そうなんですよ」
「「………………」」
え? それだけ? もっとあるだろ?
会話が成り立たないと、かなり不便ですね。それでは銅貨を恵んで差し上げましょう。
とか、
そんなっ! マリィたん、守様と会話できないなんてっ! 寂しくて死んじゃいますっ!!
とか。いろいろあるでしょうよ?
「何を突っ立っているんですか?」
なんでそんな冷たい反応なの?
ツンデレ? この先、どこかのタイミングでデレてくれるのか?
そんなラブストーリーみたいな展開を期待してもいいのか?
「……この世界に期待はできねぇなぁ」
なんせ神も世界も、俺に対してかなり厳しいですから。
チートはないし、所持金は少ないし。マジでやってらんねぇー。
「それよりも、今日はココで野宿にしましょう!」
「………………」
頭の回転も、気持ちの切り替えも、とんでもなく速いですね。ついでに言うならスケジュール変更も。
俺にはマネできないですわぁ。