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プアリッチー  作者: シバトヨ
不死身の借金王(シャッキング)
7/20

ステータスはリッチですか?

「結論から言いますと、全体的にショボいです」


 おい、ショボい言うな。

 これでも転生者だぞ? チートとまでは言わないが、魔力がなくても魔法が撃ちまくれるんだぞ?

 金が蒸発していくだけで。


 それに不死の王なんだろ? 死なないってことは、どんな攻撃でも耐えることができるってことだろ?

 いや、復活するのに金が必要だが。もっと言えば、ちゃんとした復活ができるのか、もの凄く不安だが。


 そ、そんな俺に向かって、


「全体的にショボいって……もう少し言葉を選べよ。そのうち寝込むぞ?」


「寝込むのは勝手にしていただいて構いませんが……転生者でリッチなら、魔力関連の数値がショボいのはシャレになりませんよ?」


 それは仕方がない。

 そもそも日本に魔法や魔力なんて力は存在しないからな。

 科学力とかなら、この世界よりも発達しているんだろうが。


「それに、筋力もBマイナス。俊敏性はCプラス。魔法使い職ならいざ知らず、魔物ならAマイナスはあってもおかしくないんですよ?」


 Bマイナスだとか、Cプラスだとか……通知表みたいな評価をつらつらツラツラ。

 好きでそんな評価になった訳じゃねぇんだよ。


「どうせ霜降り女神の嫌がらせだろ? そうじゃないなら、この世界が俺に厳しすぎんだよ」


「凄い開き直り方ですね……神様か世界のせいだなんて」


 ほっとけ。大体それしか思いつかん。

 異世界に来た初日だぞ? 右も左も分からねぇ俺が、こんな厳しい仕打ちを受ける覚えがない。


「さてと……それよりも、これからどうされるんですか?」


「マリィこそ、どうするつもりなんだ?」


 内心では、このまま惰性でマリィについて行こうと考えている。

 戦闘ができる人間がいることは、魔物の出現する異世界では心強い。

 なんせ俺、戦闘する度に金を消費していきますから。


「私ですか? そうですね……どっかの誰かさんに仲間をやられたので、近くの村で宿を借りようかと思います」


「あれ? 近くの街って、向こうの方なんだよな?」


 俺は歩いてきたであろう方角を指さす。

 足跡が残っていたから分かったが、この砂だらけの土地で方角なんて定かじゃない。

 俺は都会に住んでいたシティーボーイだからな。……この言い方、田舎モンのそれだな。


「あぁ。向こうにも街はあるでしょうが、」


 と、呆れた口調で言うマリィは、俺とは真逆の方向に指をさして、


「向こうの方がかなり近いですよ」


「おい、どれだけカマをかけてたんだよ? この際だから、全部教えてくんねぇ?」


「ほとんど全部ですね」


「こいつ……!」


「それよりどうするですか? リッチーとでもなれば、単独で村に入れませんよ?」


「…………よろしくお願いします」


 俺はご主人様(マリィ)に頭を下げた。




 砂漠は三十分くらい歩いたら抜けた。抜けたと思ったら、今度は徐々に緑が多くなってくる。

 村の周りは自然が多い。それは日本でもお馴染みな風景だろう。

 そしてそれは、異世界でも例外ではないはず。まぁ、異世界初心者の俺は、すべてイメージによるものなんだが。

 そんな自然は、やがて大自然へと変わっていき、次第に……


「おい、ご主人様」


「黙りなさい。ここは林です。森ではありません」


 マリィが断言する林とやらを歩き始めてすでに一時間くらい。

 村が近いとは聞いていたが、さすがに歩きすぎじゃねぇ? というか、舗装された道が途中からなくなってきたんだが? 今歩いているのは獣道ってやつじゃねぇの?

 確かに俺は、林と森の区別なんて、ろくに分かりませんよ?

 でもなぁ?


「これは明らかに森だろぉ……」


 月の光が一切入ってきていない。というか、途中から松明を手に進んでんじゃねぇか。

 手持ちの銅貨も残り二枚だし……これで翻訳の魔法までなくなったら、とうとう路頭に迷うことになるぞ?


 あ、一枚減った。あと三分で会話が成り立たなくなる。


「おいマリィ。マジでピンチになりそうだから、ちょっと聞いてくれ」


「……なんですか?」


「ここまでの道中で、俺の魔法は所持金を減らしていくって話をしたよな?」


 おかげで銅貨を凄い勢いで蒸発させていったんだがな。

 俺が魔法で使った硬貨って、どこに消えていくんだろうか。これはこれで気になる。


「そうですね」


「で、今使っているコールって魔法なんだがな? 三分で銅貨一枚を消費するんだよ」


「そうなんですか」


「そうなんですよ」


「「………………」」


 え? それだけ? もっとあるだろ?


 会話が成り立たないと、かなり不便ですね。それでは銅貨を恵んで差し上げましょう。


 とか、


 そんなっ! マリィたん、守様と会話できないなんてっ! 寂しくて死んじゃいますっ!!


 とか。いろいろあるでしょうよ?


「何を突っ立っているんですか?」


 なんでそんな冷たい反応なの?

 ツンデレ? この先、どこかのタイミングでデレてくれるのか?

 そんなラブストーリーみたいな展開を期待してもいいのか?


「……この世界に期待はできねぇなぁ」


 なんせ神も世界も、俺に対してかなり厳しいですから。

 チートはないし、所持金は少ないし。マジでやってらんねぇー。


「それよりも、今日はココで野宿にしましょう!」


「………………」


 頭の回転も、気持ちの切り替えも、とんでもなく速いですね。ついでに言うならスケジュール変更も。

 俺にはマネできないですわぁ。

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