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プアリッチー  作者: シバトヨ
不死身の借金王(シャッキング)
6/20

リッチな仲間?

「おい、マジで銅貨をよこせ。両替でも構わねぇから」


 まさか美少女が発動した『コール』では、俺の言語を翻訳してくれないとは。

 この異世界、マジで俺に厳しくねぇか?


「別にかまいませんよ? はい、どうぞ」


 と、少女は……


「ってか、いい加減自己紹介でもするか」


 名前も知らない謎の美少女から銅貨を受け取りながら、そんな提案をしてみる。

 いきなり襲い掛かってきた女ではあるが、本人は戦っていないというのも事実なわけで……というか、俺の所持金が乏しい以上は、少しでも戦力になるやつを味方につけておきたい。

 ここで魔物が登場! なんてことになろうものなら、俺は拳を握る以外の方法が思いつかなくなる。


「そうですね。魔物とはいえ、転生者様でしょうから、名前も知ら「おいちょっと待て」……なんです?」


 今気になる発言をされた気がするんだが?


「魔物? 誰が?」


「あなたですけど?」


 俺、魔物なの?


 ……あ。そういやあの霜降り女神、冒険者にでも狩られてしまえ! みたいなことを言っていたか?

 あんまり覚えてないが、そんなことを言われていた気もする。


「そもそも、魔物が流暢(りゅうちょう)に話しかけてきたので、おとぎ話なんかで登場する転生者かな? ってところからカマをかけさせていただきました」


「マジかぁ……」


 まるで一般常識でも口にするかのような説明。ファーストコンタクトからバレてたのかよ。

 まぁいいや。過ぎたことだし、どうしようもない。

 この場合は、俺がミスをしたんじゃなく、美少女の頭がすこぶる良すぎただけだな。


「それで? 名前は?」


 ちょっと脱線したが、話を自己紹介へと戻す。


「マリィ。マリィ・デッドリィと申します」


 マリィね。西洋風でいい名前だと思います。

 紫色の髪と瞳ってのが、名前と不一致な感じだが……マリィだと、金髪に水色の瞳なイメージなんだよな。俺の場合だが。


「俺は羽賀(はが)(まもる)だ。日本ってところから転生させられた……魔物? なぁ、俺ってどんな魔物なんだ?」


 『ステータスチェック』とかいう、ステータスを調べる魔法があるから、俺の種族みたいなものも分かると思うんだが。

 ただ、俺が使うと所持金が一気になくなる。

 なんせ『ステータスチェック』は二千円相当だからな。金貨四枚分だ。この先のことを考えると、マジで困る。


「リッチーっていう魔物です。不死の王とか、アンデットの王なんて呼ばれている魔物ですよ」


「貧乏人の俺に金持ち(リッチ)とか、マジでふざけてんのか」


 だったら所持金をウンゼン万単位で用意しとけっての。


「そうだ。ついでだから、俺のステータスを調べてくれよ」


 所持金を失うのは困るが、魔力なら困らない。

 というか、俺の魔力が減るわけでもないし。なんなら、俺に魔力があるかどうかが分からねぇし。

 いろいろと話をしたいなんてことも言っていたしな。話のネタにしよう。


「嫌です」


 と考えていたところを、即答で断られた。


「えぇー。俺、ガイコツに襲われた挙句、こうやって翻訳の魔法まで使ってるのにかぁあ?」


「うぐっ」


 砂地に腰を下ろし、マリィを半眼する俺。そして、俺の発言にたじろぐマリィ。

 このまま押していけば、たぶん『ステータスチェック』を使ってくれることだろう。

 いいぞ。折れろ。ぽっきり折れろ。そうすれば二千円が浮く。


「あぁあぁ~、ガイコツのせいで所持金がなぁ~」


「分かりました。『ステータスチェック』! これでいいですよね?」


 頬を膨らませて怒っている顔も美少女ですね。マリィさん。


 そんな唇を尖らせているマリィの手元に、一枚の明るい茶色の紙が生成される。

 羊皮紙とかいう紙だろうか。現代日本で生まれた俺としては、コピー用紙か画用紙しか馴染みがない。馴染みがなければ、羊皮紙がどんな紙か分からねぇ。

 とりあえず、それっぽいから羊皮紙とでも紹介しておこう。

 とにもかくにも、『ステータスチェック』を使うと紙切れが出現するのか。


「……あの、マモルさん」


「おう? なんだ?」


 他人に魔法を使ってもらうことの有用性を噛みしめていた俺。

 対して、ちょっと驚いたような、少し引かれたような、そんな遠くから様子を眺めるような態度をとってくるマリィは、


「マモルさんって、転生者で、リッチーなんですよね?」


「リッチーかどうかは知らねぇが、転生者って奴ならそうだぞ?」


 三途の川から無理やり連れてこられたからな。せっかく流行りに乗っかって、畑の一つでもやろうかと思ってたのによ。

 ちなみに今は、霜降り女神をメインディッシュにしたバーベキューを画策中だ。

 最大の難関は、女神の下にどうすれば行けるのか。だ。


「なんで魔力がないんですか?」


「転生者だからじゃねぇの? あ、魔法が使えるのは、金を代替わりにさせられているからだぞ?」


「あぁ、なるほど。それで初級魔法のフレアが、あんなバカげた威力になっていたんですか」


「バカげた威力?」


 なんだそれ?

 もしかして、金を消費した方が効果が高いのか?


 いや、『コール』という魔法の効果を考えれば、十分にあり得る。

 なんせマリィが発動させた場合は、翻訳されていなかった。

 それに対して、金を消費させて発動した俺の『コール』は、今もこうして会話ができるレベルで翻訳されている。


「いくら初級魔法でも、あんなショボくないですよ?」


 え?


「……ショボいの?」


「はい、ショボいです。なんなら私が使うところを見てみます?」


「いいえ。遠慮しておきます」


 ショックで寝込みそうだし。

 まだ異世界に転生されて初日だぞ?

 これ以上のショックを受ければ、異世界で引きこもるための努力をしちまいそうだ。


「そ、それよりも。俺のステータスを見せてくれよ」


「はい、どうぞ」


 マリィから手渡された一枚の羊皮紙。

 一番上の欄には、俺の名前が…………


「読めねぇんだけど?」


「そんなことだろうと思いました」


 さすが天才少女マリィさん。

 文字が読めないことをお見通しでしたか。

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