表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プアリッチー  作者: シバトヨ
不死身の借金王(シャッキング)
16/20

肉体言語はリッチにお任せ

 第一問。

 マリィに向かって俺は、右手を左右にゆっくりと振る。顔は笑顔で。

 さて、いったいどんな意味でしょーか?


 ……………………………………………………はい、時間切れぇ~。


 正解は、


「こんにちわ」


 でしたぁ~!


 ……で、肝心なマリィの答えというのは、


「おい。なんで、さようならなんだよ。笑顔で言われてみろよ、状況によってはかなり怖いだろうが」


 こんなサービス問題、当てられて当然だろうが。大喜利じゃねぇんだぞ?


 そんなボケた回答をしているマリィには、十枚の紙切れを手渡している。その紙切れには、日本語とこの国の言語で同じ意味の言葉が書かれている。

 これを二組用意して、互いが互いのジェスチャーを当てあうという練習をしているわけだ。

 例えば、俺がさっきやった「こんにちわ」という紙切れに書かれた内容をジェスチャーでマリィに伝え、マリィが「ガぬゔゞば(こんにちわ)」と書かれた紙切れを俺に見せれば正解。

 今のだと、俺の「こんにちわ」に対して「オぷスゕぶ(さようなら)」を出したから不正解。ということになる。

 最初は「あいさつ偏」ということで、日常生活で使うであろうジェスチャーに絞って練習中だ。


 では第二門。今度はマリィが出題する。


 そのマリィは、手を合わせて瞳を瞑り、軽く会釈してくる。

 さて、いったいどんな意味でしょーか?


 ……………………………………………………はい、時間切れぇ~。

 まぁ簡単だよな。「あいさつ偏」は初心者向けだな。うん。


「ごめんなさい。だな」


 俺は確信をもって、「ごめんなさい」と書かれた紙切れをマリィに見せつける。


 するとマリィは、「何言ってんだこいつ。こんな簡単な問題も分からないのか?」と言いたげな視線で一枚の紙切れを見せてくる。


 「いただきます」と書かれた紙切れを……。


「………………」


 おい。「あいさつ偏」。激ムズじゃねぇか?




 ジェスチャーの練習をして分かったことがある。


 俺とマリィは相性が悪いみたいだ。水と油みたいに分かりあえてないことが分かった。

 でなきゃ、十問もやって一問も当たらないとか、説明がつかねぇぞ?

 で、


「とりあえず薪を拾うか……」


「そうですね」


 『コール』を発動させ、今日の練習は終わりにすると告げた。

 マリィの方も、俺と会話ができた時点で諦めたんだと悟ったようだ。

 って、諦めてねぇし。今日は終わるだけだし。


「まぁ魔物が出れば、収支がゼロになりますから」


 出なけりゃ赤字確定なんだよなぁ……。


「まぁいい。魔物が出たら頼むぞ?」


「任せておいてください。代わりと言ってはなんですが」


「帰り道なら任せろ」


 仲間のデメリットは、仲間がカバーするもんだからな。


 ……と、建前上は思うが、本音では一人でも魔物が倒せるようになりたいと考えている。




「マリィ、頼んだっ!」


 『コール』を解除しているため、通じてはいないだろうが、声に出して魔物の相手を頼む。


「『 〪〓そ』」


 だが、魔物は任せろと言っていたこともあり、マリィは鹿に向かって魔法を放つ。

 たぶん『フレア』だ。熊を倒した時よりは威力が弱い気もする。

 なるほど……確かにショボいな。

 マリィが放ったのは、俺が撃った『フレア』よりも威力がかなり高い。体感で二倍くらいの威力がありそうだ。

 それは鹿の残骸から判断できた。

 俺が銀貨を消費して放ったとして、胸から尻までを貫通させられるとは思えない。

 マリィの『フレア』は、円筒状に鹿を撃ち抜いているんだ。


「さすがだな」


 動かなくなった鹿を捌き、毛皮や角、肉を獲得。これらを売れば、薪拾いよりは金が得られるだろう。


「それにしても、こんなに魔物っているもんなのか?」


 この世界の構成が分からないが、動物型の魔物しか出会っていない。

 もっと他の魔物と対面してもおかしくないと思うんだが……。

 この辺は心得の本を読んでみるか。


「オ゙ヾ廏ふめエへスゴ」


 なにかを言いながら、服の裾を軽く引っ張ってくるマリィ。

 あぁ、帰るって言ってるのか? まぁ用はないしな。


 なにかを忘れているような気もするが、俺はマリィを連れていくように先頭を歩いた。




「なぁ? 村、明るすぎねぇか?」


 村の近くまで来たんだが……妙に明るい。もうすぐ夕暮れだから、夕日のせいかと思ったんだが…………


「お、おいっ!」


 突然走り出すマリィ。

 会話するために『コール』を唱えようとしたんだが……どうも喋ってる場合じゃなさそうだな。


 魔法を使わずに、俺はマリィの後を追うことにした。


 そして村の入り口。


 そこから見える光景には、顔を青ざめさせられた。


「な、なんだって言うんだよ…………っ!?」


 猪やウサギ、熊までもが、家屋を襲っていた。

 外には血だらけで倒れている人までいる。


「このっ! 『キロ・フレア』!」


 近くで死体を(むさぼ)っている猪に向けて魔法を放つ。

 猪は体を爆散させ、息の根を止めた。


「おいっ! ……くそっ!!」


 目を見開いて倒れている村人。名前は知らないが、胸くそ悪くなる。


「『げ〒〄う〷〃〟』」


「……マリィか?」


 なにかの叫び声とともに竜巻が巻き起こる。恐らくだが、マリィが魔法を使ったんだろう。


 俺は振るえる脚を強く叩き、マリィのもとへと向かった。


 その足取りは、酷く幼稚なものだったことだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ