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プアリッチー  作者: シバトヨ
不死身の借金王(シャッキング)
14/20

リッチじゃないと知ってた

 大袈裟に答えたところ、


「そんなにすごい内容なんですかっ!?」


 メチャクチャ食い付いてきた。やばい、どうしよう。

 今から「冗談だ」というのは簡単だが……


 この優越感…………もうちょっとだけ感じていたいっ!


 と言うわけで、


「あぁ。なんせ神様が書いた本だからな。世界が造られたところからキッチリ丁寧に書かれてる」


 大風呂敷をさらに広げることにした。

 まぁ収集が着かなくなることはないだろう。

 それに、嘘はついてない。ちょっと大袈裟に言っているだけで、嘘はついてない。


「そ、それは……今日、帰ったら読ませてください」


「別に構わねぇけど……読めるのか?」


「試してみないと分かりませんが、『リーディング』という魔法を使えば、種族の違う文字でも読めるようになりますよ?」


「おい」


「な、なんですか? そんな怖い顔をして」


 そりゃあ怖い顔にもなるだろう。


「俺のステータスを見たとき、そういう魔法があることを教えろよ……!」


 なんで必要なことを教えてくれねぇの?

 世界どころか、人すら俺に厳しいの? 泣くよ? 本当に、そのうち、泣くからな?


 近いうちに、声に出して泣き叫ぶ未来を想像しながら、俺はある現象に気付く。

 現象というか、実験の成果に。


「……金額で三分ということか」


 マリィとの雑談で、少なくとも三分は経過しているはず。

 だがポケットに入れていた銅貨は二枚のまま。その状況から、今俺が口にした通りだと思っていいのだろう。

 これは嬉しい結果だ。結果だが、それと同時に問題でもある。

 今は『コール』という翻訳の魔法だから問題ないが、これがすぐに解除しなければいけない場合は、銀貨一枚を最低限で捨てることになるかもしれない。

 例えば、『コール』なら三十分分の効果を捨てることになる。

 これはかなり痛い。財布と精神的にかなり痛い。


「あとは明日だな」


 『ボックス』という別次元の場所に格納していたらどうなるのか。これも検証したい。

 もし問題なく発動するなら、紛失する心配がなくなる。盗賊とかに襲われても大丈夫というわけだ。


「……そうなってくると有効範囲が気になるな」


 くそ、魔法一覧だけは持ってくれば良かった。

 一応、マリィに手渡したら俺の所持金ではなくなったらしいから、使いたくない硬貨があれば、他人に預ければ問題ないはず。

 そういう意味で言えば、銀行に預けた金は減らないことになる。


「そもそも、マモルの所持金というのは、なにが判定基準なんですかね?」


「どういうこった?」


 俺にも分かりやすく説明するためか、俺が手渡した銅貨だけの袋を持ち上げて見せるマリィ。


「私が持っているコレ。これはマモルの所持金ですよね?」


「あぁそうだな。俺が預けた金だな」


「所有者はマモルですが、私が持っていたら銀貨が減りましたよね?」


「あぁ……あぁ、そういうことか」


 マリィが言いたいのは、俺の身に付いている必要があるのか、それとも別の条件があるのか。ということだ。

 確かに、今のところ消費しているのは、ポケットに直接入れた硬貨か、腰につけていた布袋のどちらかだ。


「あ、床に置いた状態でも発動できたな」


 ということは有効範囲があると考えていいのか?


「それも明日だな」


「ですね。なら、さっさと薪拾いをしましょう」


 明日の予定を組んだところで、俺とマリィはしゃがんで枝を拾い始めた。




「なぁ?」


 村長宅に帰宅した俺は、借りている部屋に入るなり、いきなりマリィに、


「もっと金になる仕事ってねぇの?」


 転職先の斡旋をしてもらうように交渉し始めた。

 交渉とは到底呼べないだろうが。


「魔法が使えるなら問題ないんですけどね」


「使えるだろうが」


「……ショボい魔法だけじゃないですか」


「ショボい言うな。というか、翻訳に関してはマリィが腑甲斐ないせいだろ?」


 ちゃんと翻訳されてるなら、俺だって銅貨を消費しないで済むってのに。

 というか、


「その翻訳のせいで、収入の四倍が出費になってるんだが?」


 今日にいたっては銀貨一枚と銅貨を七枚。

 薪拾いで得られたのは銅貨四枚。

 日本円に直したら、とんでもなく悲しくなる。


「瞳を潤ませても、私では無理ですよ?」


 マリィは勘違いしているようだが。

 まぁ、今日は実験で消費したから、銀貨一枚に関しては仕方がないんだが。


「まぁいいや。それよりも本を読むんだろ? ほら、『リーディング』って魔法を使ってみてくれよ」


 そのために銅貨一枚を消費しているんだしな。


「分かりましたよ。貧乏人のためにも、私の魔法をお見せいたしますよ」


「貧乏人は余計だ」


 本を受け取ったマリィは、ペラペラとページを適当にめくっていく。


「……全く読めないですね。どこの国の文字なんですか?」


「日本って国の文字だ。たいていの転生者は日本人だと思うし、とんでもない力を持っている場合が多い」


「……ではさっそく」


「おい、何か言いたいことがあるならハッキリ聞くぞ?」


 胡散臭いみたいな眼で見るんじゃねぇよ。まったく。


「『リーディング・スタート』!」


 俺の不満を無視して、マリィは解読の魔法を発動させた。


「分かりましたっ!」


「早ぇなぁ」


 魔法を発動させて一分も経ってねぇのに、もう読めるようになったのか?


「私の魔法では解読できません!」


 頭を叩いてやりたくなった。


 そんな怒りを抑え込んだ俺は、翻訳魔法を解除してベッドに潜り込んだ。

 もう寝る。これ以上は金の無駄遣いでしかない。

 俺の布団を剥ごうとしているマリィに抵抗しながらも、俺は瞳を閉じた。

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