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プアリッチー  作者: シバトヨ
不死身の借金王(シャッキング)
12/20

薪はさすがにリッチではない

 無事生還。

 村に足を踏み入れるのは、二日後だと思っていたが、想像よりも早くたどり着けた。

 その時間は約半日。半日ぶりに村を見ることができ、マジでホッとしている。


「やヾやぶ゜￾ヿ社ゐ敆哮霌甋゘ゕセ゗諃曱オびめエ゠ぷ゜￾￾」


 恐らく村の灯りを見て、マリィもホッとしたのだろう。

 翻訳をしていないと言うのに、妙に嬉しそうというか、安心したような表情をしてくる。


「なんとか帰ってこれたが……」


 もう崖を登ったりはしたくねぇ。

 森の中に崖があるとか以前の話なんだが、この村にたどり着く数時間前に崖登りを強要された。

 そもそも行きに崖なんかを見た覚えがねぇのに……。

 これ以上は思い出さないようにしよう。体と心が悲鳴を上げそうで困る。


「……明日は単独で行きてぇえなぁ」


 まぁ無理な話だろうが。

 そんな絶望的な期待を胸にし、俺とマリィは村長宅へと帰宅した。


 やって来ました! 薪拾いの精算っ!!

 ……と、テンションを高めにしたものの、崖登りをした時点でわりに合わないことは確定している。

 もうタダじゃなければいくらでもいいや。って気分だ。なんならマリィを残して部屋でくつろぎたい気分ですらある。さすがに待つけどな。そんなに時間もかからねぇだろうし。


「ゕぴやゖヽ゘ゐヾ曱攚业隲ゐアゑ鮫犖ゔぽ気懰ねエ゙サゲめウを」


「ソゾ剖ゴぴぷヽセグぶ舚グ゗ぽヾ鮫犖ゔゐ斊ばゕセゴぶゕゾ」


 なんか知らんが、意外と長引いているな。少しでも高くなるように交渉してくれているのか?

 ……もしや、意外とすごい金額になるんじゃ……!


 そんな期待をしていた現金な俺の肩をマリィがつついてくる。

 翻訳をしろって合図だ。


「『コール・スタート』。で? いくらになった?」


「いきなりですね。まぁ重要なことですけど。はい」


 文句を言いながらも、銅貨を数枚……


「う、嘘だろ?」


 半日でたったの四枚っ!? わりに合わねぇどころの騒ぎじゃねぇ!!

 これなら村長宅で一日中ゴロゴロしてた方がまだマシだっ!!


「ホントですよ。そもそも薪は足りているそうなんですよ。それをわざわざ買い取ってくれてるんですから。ほら、そんなところで寝てないで、ちゃんと起きてくださいよぉ」


 爺さん……


「だったら薪拾いよりも賃金の高い仕事をよこせよ。これでも魔法は使えるんだから、魔物…………ってそういや、魔物の毛皮とかって売れねぇの?」


 この村にたどり着く前に、ウサギと熊の毛皮を手に入れている。

 それらは借りた部屋に置きっぱなしにしているが、それを売れば金になるんじゃないのか?

 あ、オオカミの毛皮も手に入れたから、それなりの金額になるはずだ。


「素材ならもう売りましたよ?」


「……は?」


「ですから、素材は売り払いました」


「いつだよっ!? 俺、その金を受け取ってねぇけどっ!?」


「そんなの、あたりまえじゃないですか」


 あ、あたりまえって。


「だって、どの魔物も私が倒したんですよ? 私の手柄になりますよね?」


「……ま、マリィさん? お願いがございます」


「大体想像がつくので棄却しますね。それじゃあ夜も遅いことですし、寝るとしましょう」


「おい待てよ。せめて、いくらになったかだけでも教えろよ。おいって」


 両耳を押さえて部屋に立てこもったマリィを 諦め、俺も寝ることにした。

 もう疲れた。体も心もボロボロだ。




 翌朝。

 結局、この日も方向音痴を連れて森の中に入ることになった。

 しかし俺は、昨日の反省を十分にしてきた。


「そもそも、木に目印をしたのが間違いだったんだな」


 ということで、今日の作戦は有名童話でも用いられていた、


「村の出入り口から大体の間隔で小石を置いていく。という名付けるなら、足跡作戦だ」


「……それ、どれが置いた小石か分からなくなりませんか?」


「その辺も抜かりはない。ちゃんと着色してるからな」


 赤やピンクの小石なんて、道端に落ちてることはないはずだ。

 魔物や動物の血が付着したってなら話は別だろうが、そんなもこを見つけようものなら、即座に帰ればいい。

 戦えるのが実質マリィ一人だからな。いくら強くても、相手が分からねぇと戦い辛いだろうし。


「というわけで、今日からは俺の実験にも付き合ってもらうぞ?」


 主に金銭面で、だが。


「そうですね。その辺りは魔法を扱う者として興味がありますから」


「ってなわけで、早速だがこの銅貨が入った袋を渡すから、銀貨を一枚くれ」


「本当に早速ですね。まぁいいですけど。はい」


 マリィは特に抵抗することなく、俺から銅貨だけが入った袋を受けとり、銀貨一枚を俺に差し出してくる。


 まずは銅貨がない場合で、『コール』を使った場合はどうなるのか? からだ。

 これで銀貨を消費するのか。はたまた、『コール』が解除されるのか。

 『フレア』みたいな単発で発動する魔法の場合はどうなるのかも、今日中に確認しておきたい。


「じゃあ行くか」


「そうですね」


「おい、森は逆方向だぞ」


 今日中に帰れるかなぁ……マジで不安。

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