空が落ちた次の日に〜6〜
少年少女の初々しいやりとりを眺めていた京子が席を立つ
「喉乾いたでしょう、お茶にしましょ。美咲、手伝って」
そう言ってキッチンへ向かう京子
「え〜あたしも〜?」
文句を言いつつも京子の後をついていく美咲
なんだかんだ言いながら仲のいい親子なのだ
時刻は23時40分をまわったところ
「晶、お前時間いいのか?」
とうの昔に深夜と言える時間、普通の親なら相当心配しているだろう
和馬は幼馴染として、親友として心配している
「大丈夫よ、ここに来てるの伝えてあるし、明日休みじゃない♪」
和馬の心配をよそにたった一言で片付けてしまう晶
「それにこんな状況の女の子ほっとけないよ、ねぇミーシャ様…」
京子が注いでくれたお茶を飲みながら、晶がミーシャに声をかける
「晶さん、心配してくださってアリガトウゴザイマス。
あと、今は公の場ではないので『ミーシャ』と呼び捨てで大丈夫デスよ。ワタシもその方が嬉しいデス」
ミーシャは笑顔だ
「皆さんも今は『ミーシャ・シルヴェスター・グラン』としてではなく、普通に『ミーシャ』と呼んでくださいね。」
さらにその場全員に敬称をつけないでほしいと求めた
「わかったよ、ミーシャ」
和馬も表情を和らげて答えた
みんなから了承を受けてミーシャはさらに笑顔になる
「それでミーシャ、これからどうするの?」
改めて晶がミーシャに問いかける
「…正直、どうしていいかわかりません。お父様やお母様、兄様もどうなってしまったかわからないですし…」
ミーシャは俯き、少し考えてから答える
その時、SNSに緊急通知が入る
『速報 グラン王統国、軍部がクーデター起こし王室が制圧される 詳細は不明 0時より軍部広報が会見予定』
「……ッ!」
通知を見たミーシャが両手で口元を覆う
龍馬は徐に通信端末を取り出し、何処かに電話をしだした
「……真司か?ああ、通知見たよな?…そうだ、晶ちゃんも来てるし俺の家で話し合うってことでどうだ?…おう、待ってる。じゃあな」
真司というのは晶の父だ
龍馬と真司は幼少期からの幼なじみで、現在の和馬と晶の関係とほぼ同じなのである
「今の電話、おとーさんですか?」
「…うん、そうだよ。真司と美弥子さんが来たら、これからについて話し合いだ…母さん、コーヒー煎れてくれるか?」
「ん、アイスのブラックでいいよね?」
「ああ」
龍馬がいつになく真剣な面持ちであることに和馬が気付いた
普段から家族には柔和で、常に笑顔を絶やすことがなかった父の横顔を見て些か緊張感を覚えたようだ
部屋はしんと静まりかえり、壁にかけられた時計が一定のリズムを刻む音だけが響く
まるで、これから起こることのカウントダウンをしているかのように__