空の落ちた次の日に〜5〜
「…話が逸れたな。」
龍馬が咳払いをして話を改める
「殿下。護衛も付けずに地上に降りてこられた理由、お話ししていただけますか?」
「…ハイ。」
ミーシャはペンダントを胸元にしまいながらか細い返事をし、ことのあらましを話し始めた
「4日前の午後、ワタシはグラン王立アカデミーで講義を受けてイマシタ。15時を過ぎた頃、行政府と軍令部、軍の第一・第二駐屯地で同時に爆発が起こりマシタ。」
「爆発ってことはテロが起きたの?でもニュースじゃ何にも…」
晶が訝しげに眉をひそめる
「報道統制だな。襲撃と同時にマスメディアも制圧したか、もともと協力者がいたか…」
「それにしたって外国人技術者とか観光客のSNSなんかで伝わるもんじゃないのか?」
龍馬と和馬が互いに意見を言い合う
「爆発が起こる1時間くらい前に、王統国全域で通信障害が起きたと行政府が発表してマシタ。オソラク、襲撃の下準備だったんじゃナイカト思いマス。」
ミーシャも意見を述べ、さらに話を続ける
「爆発が起こってすぐに首都近郊に避難勧告が発令しました。ワタシは護衛と合流して、王室専用の避難シェルターに向かいマシタ。」
グラン王統国は3本あるオービタルリングの最も外側を統治する国家、事故や危機的事態が発生した場合はすぐに気密を確保したり避難できるように隔壁や避難シェルター兼シャトルが完備されている
「デスが、ワタシにはすでに追手がかかってイマシタ。シェルターまであと1kmくらいというところでメグ一個小隊に襲われたのデス。追手はメグ5機と補助兵複数、対して私たちは装甲車2輌とワタシの乗っていた装甲ミニバンのみ…全く相手になりませんデシタ…」
ミーシャはきつく唇を結ぶ
うつむき、一瞬の静寂ののちにミーシャは再度話し始める
「…装甲車2輌が咄嗟にバリケードになって、逃げ道を作ってくれマシタ。一瞬の隙をついてワタシは最も信頼している護衛の1人とシェルターに向かいマシタ。ワタシがシェルターに入ったところで追手に追いつかれてしまい、護衛が囮になり、ワタシだけ逃がされました…」
優秀な護衛かつ、ミーシャと親しかったのだろう
ミーシャの目から大粒の涙が溢れる
その様子を見て晶が寄り添い、何も言わずにハンカチを手渡す
「ヒドイね、王女さまって言ってもアタシとそんなに歳変わんないのに。何にも悪いことしてないじゃん。」
美咲も同情する
「アリガトウゴザイマス、美咲さん…」
それに対してミーシャも感謝する
ミーシャは泣き止みまた話し出す
「…シャトルは夜遅くにオートパイロットで海に降りマシタ。明け方くらいまで漂流して、砂浜に漂着シマシタ。ワタシはシャトルから降りて、なるべく目立たないように移動していたんデス。でも、気を失ったみたいで…気がついたら和馬さんに抱き起こされてマシタ。」
顔を起こして和馬をジッと見る
「和馬さん、晶さん、助けていただいて本当にありがとうございマシタ。」
深々とお辞儀をして謝意を述べるミーシャ
「なるほどね〜兄貴は王女さまの命の恩人ってわけだ」
美咲は足を組み、茶化すように和馬を煽る
「バッカ、そんな大層なことしてねぇよ。」
和馬は若干照れたような顔をする
「いえ!和馬さんはワタシの恩人デスよ!」
ミーシャは一馬の近くに寄り手を取り、さらにジッと和馬の目を見つめる
和馬は完全に照れていた
「あら、まあまあ」
「うん、若いっていいなぁ」
京子と龍馬がニヤニヤして2人の様子を見ていた
美咲も何も言わずにニヤニヤしている
晶だけは少しふくれっ面をしてジト目で見ていた
2人は慌てたように手を離し、顔を真っ赤にさせるのだった