空が落ちた次の日に〜3〜
「ん〜ママさんのお料理、とっても美味しいデス!」
金髪碧眼の少女、ミーシャが子供っぽく足をばたつかせながら肉じゃがを食している
「あら、嬉しいわね〜。まだまだあるからいっぱいたべてね。」
キッチンから料理を作る和馬の母・京子の声が響いてきた
「ハイ!イタダキマス!」
1時間程前、和馬と晶に助けられた時には少々か細い声で返事するのが精一杯という感じだったが、高槻家に運ばれシャワーを浴びて食事を摂ったことでかなり回復したらしい
「やっぱり京子さんの手料理美味しい!」
ミーシャの隣で晶もサラダを食している
「…なんで晶も当然のようにうちで飯食ってんだ?」
晶の正面に座る和馬が素直に疑問をぶつける
「いいじゃない、私もこの子助けるの手伝ったんだから〜」
鼻歌交じりでさらに箸を進める晶
その隣でミーシャは少し顔を曇らせて、箸を止めた
「お二人とも、ホントにアリガトゴザイマシタ…」
和馬と晶も箸を止めた
食卓が一瞬の静寂に包まれる
「お、どうした?静かじゃないか。」
そこへ、和馬の父・龍馬が風呂から上がりリビングへ戻ってきた
キッチンの冷蔵庫からビールを取り出し机に着く
「さて、話を聞かせてもらいましょうかな。グラン王統国第一王女・ミーシャ・シルヴェスター・グラン殿下?」
「!?」
ミーシャはガタッと音を立てて立ち上がった
「えっ?王女様!?」
晶は驚嘆の声を上げる
「……」
和馬は黙ったままだったが、まさに鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしていた
「どうして、ワタシの名前を…?」
曇っていた表情がみるみるうちに青ざめていく
「親父、どういうこと?」
和馬が龍馬に尋ねる
「さて、どこから説明するかな?長すぎても面倒だし端折りすぎても、お前ら納得しないだろうしなぁ…」
和馬は訝しげな目で、晶はミーハー全開のキラキラした目をして龍馬を見る
若干たじろぐ龍馬
その様子をキッチンから遠巻きに見ていた京子は、やれやれといった表情で龍馬に助け舟を出した
「みんな、お話は後にして先にご飯食べちゃいなさい。冷めたら美味しくないわよ〜」
「そ、それもそうだ!母さんの料理はやっぱりあったかいうちに食べたいしな!」
おもむろに話を捻じ曲げた龍馬
そして缶ビールのプルトップを開けて一気に飲んでいく
「まあ、いいけど。あとで話してくれよな。」
和馬と晶も諦めて食事を再開する
ミーシャは椅子に腰を下ろしたが表情は暗いままだった
「…ミーシャ様、でいいんだよね?」
横から晶がミーシャの顔を覗き込む
「えっ、あっ、ハイ!」
ミーシャは突然声をかけられたことに驚き、慌てて返事をする
「何があったか知らないけど、とりあえずご飯食べよう?でないとアタシが食べちゃうけど?」
晶が意地悪な顔をしている
「晶、お前悪い顔してるぞ」
すぐさま和馬に突っ込まれる
「なによ、和まそうと思ったんじゃない!」
「……ふふっ」
その様子を目を丸くして見ていたミーシャは思わず笑い出した
「あ、笑ってくれた。」
そう言って晶はニッとはにかむ
「さすが、気配り晶。大したもんだ。だけど俺を活用すんのやめて。」
「いいじゃない、結果オーライよ。」
そう言いながら2人とも箸を進める
「ほら、食べよ!ホントに残ってるの食べちゃうよ!」
「ハイ!イタダキマス!」
晶がミーシャに言うとミーシャもニッコリと微笑んで返事をする
3人が和気藹々(わきあいあい)としている最中、京子がリビングの背後に向かうふりをして龍馬の背後に差し掛かったところで龍馬に目配せする
(話すのね?)
(ああ、黙っててもいずれ知れることだろう。)
龍馬も覚悟を決めたように、一瞬厳しい表情になるが、すぐに柔らかく戻した