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sky falls  作者: コウサテン
2/6

空が落ちた次の日に~2~

トイボックス

昼間は喫茶、夜はバーという形態で営業する店。

店内の装飾は店長の趣味でモダンで落ち着いた雰囲気に仕上げられている。


この店の店長は和馬の伯父で、和馬と晶は幼少のころから多くの時間をこの店で過ごしてきた

現在は2人ともアルバイト従業員として働いている


「おはよーございまー」

「和馬っ!遅いわよ!!」

和馬が従業員用の出入り口から入って挨拶をするなり、晶の大きな声がホールまで響き渡る


「...夜の部が始まるまでまだ充分に時間があると思うんだけど?」

和馬は両手で耳をふさぎ、恐る恐る抗議の声を上げてみる


「あんたの充分はたったの5分なの?5分でホールのテーブル全部拭きあげて足りないもの補充できるの?」

「いや、晶も朱音あかねさんも正嗣まさつぐさんも居るんだからなんとか...」

「言い訳すんな!第一先輩たちより先に出勤するのが正解じゃないの?」

「しょうがないだろ、洗濯物とりこんだりしてたんだよ!大志おじさんにも今日はギリギリになるって伝えたっつーの!」


バシッ!


和馬が遅刻ギリギリ出勤の言い訳をしているとノートのようなもので後頭部をはたかれた


「店に入ったらオーナーと呼べって、いっつも言ってんだろー?」


和馬の後ろにはいつの間にか身長180cmを超える細身の男が店のメニューを持って立っていた


「オーナー!和馬が言ってること、本当なんですか?」

「ああ本当だよ、今日は両親の帰りが遅くなるから真咲の世話してから行くってね」

「ほらみろ」

和馬が頭をさすりながら反論する


「晶ちゃん、さっきテーブル拭きあげてる間ずーっと心配してたもんねー。和馬遅いなー、車に轢かれたりしてないかなー?ってね」


オーナーはイタズラっぽくにやにやしている

一方、晶はみるみるうちに顔が耳まで赤くなっていった


「~~~あっあたし、ホールのテーブル拭き途中だから、もっ戻りますっ!」


晶は慌ててその場で振り返りホールに向かおうとする

しかし

「ひゃあっ!?」

慌てすぎたのか、足がもつれてその場ですっころんでしまった。大きな音と悲鳴をあげて。

「おい、大丈夫か?」


晶のもとに和馬が駆け寄る、が...

「~~~っっ!バカ、こっち見んな!!」

転んだはずみでウェイトレス服のスカートが捲れ上がったらしく、下着が丸見えになっていた


「ごっごめん!」

さすがに和馬も慌てて目を背けた


「ほら、さっさと支度しなさいよ!もうすぐ再開時間でしょ!」

「お、おう」

晶は立ち上がって裾を正し、ホールへ向かっていった


「職場でイチャつかれたら困るんだけどなー」

和馬の後ろでオーナーがボソッとつぶやいた


「バッカ、そんなんじゃねーよ!!」

「ほんとかー??まーいいけどなー。ちゃんと仕事してくれよー」

そう言ってオーナーは厨房へ入っていった


「ったく...うわ、いっけねもうお客さん来てるじゃん!」

和馬も慌てて支度をしてホールへ出ていった



「おーし、和馬と晶は上りでいいぞー」

「「はーい」」

21時、トイボックスの営業時間は深夜0時までだが高校生二人はいつも21時でバイト上がりになる


「晶ー明日はバイト休みなんだよね~?私とカフェ行こー?」

「いいですよー朱音さん、授業何時に終わるんですか?」

「16時には終わるわよー、晶もそのぐらいでしょ?」

「そーですよ、いつもみたいに駅前の鳩時計集合でいいですか?」

「そうね、そうしましょ。」

「わかりました、それじゃお疲れ様でしたー」

「はーいお疲れ様でしたー」


朱音と明日の約束をして、晶が控室に戻ってきた


「おーし、晶帰ろうぜー」

「あんた帰り支度だけは早いわね...」


和馬は支度を済ませて控室のソファーで寛いでいた


帰り道

和馬と晶が肩を並べて夜の住宅街を歩く


和馬は170cmほど、晶はわずかに160cmに届かないくらいの身長差

二人は誕生日も1か月違い、家も隣同士、両親同士も親友と生まれる前からと言ってもいいほどの付き合いである


「ねえ、和馬は高校出たらどうするの?」

唐突に晶が尋ねる


「なんだよいきなり…」

「私たち、来年進学か就職じゃない。どっちにするのかなーって。」

晶が短めに切り揃えられた自分の髪をいじりながら、和馬に問う


「前に言わなかったっけ?適正結果見てから決めるって」

「あーそうだったわね。いいの?自分のやりたいこと突き詰めたほうが楽しいんじゃない?」

「お前の言うことはわかるけどな、正直自分のやりたいことがなにかわからねぇんだよな」

「うそ!?17にもなってやりたいことがないって...」

「悪いかよ」

「悪いっていうか信じらんない...」

「別にいいじゃねぇか、人それぞれだろ。」

「そりゃ、そうだけど...」

晶は納得いかない様子だ


「私はー」

「おい、あれ見ろよ」

「へっ?」


和馬が街灯の下に何かを見つけた


「...あれ、もしかして人?」

白いコートのような服を着た人が倒れていた


「ちょっと、大変じゃない!」

「晶、たぶんこの時間ならうちの親父帰ってきてるから呼んできてくれ!」

「う、うん!」


和馬の父親は消防士で、救命の心得がある

和馬もまたそんな父親から緊急時の対処法を叩き込まれていた


(女の子か、歳は俺と同じくらいかちょっと上くらいか?呼吸もあるし脈もちょっと速いくらいで正常、貧血か立ち眩みか?)


一通りの対応を済ませて、改めて少女の顔を見る。

街灯があるとはいえ、住宅街でとても明るいとは言い切れないが、色白で髪は金髪、欧米系の顔立ちをしていた

和馬は内心こう思っていた


(...かわいい)


「う...う~ん...」

「お、気が付いた?」

目を開いた少女の瞳が青く輝く


「...ワタシは?ここはどこですか?」

少女から発せられたのは片言ではあったが確かに日本語だった


「お、日本語わかるんだ。キミ、ここで倒れてたんだよ。大丈夫?どこか痛むところは?」

「...大丈夫デス。あのアナタは?」

「俺?高槻和馬って言うの。キミの名前は?」

「ワタシは...ミーシャ」

「ミーシャ?へぇ、かわいい名前だね」

「あ、あの...」

「ん?なんだい?」

「...お腹すきました」

「お、おう...」


ミーシャの名乗る少女と突然の出会い

この出会いが和馬や晶の運命を大きく変えていくとは誰も考えてはいなかった

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