夜に堕ちた日
消失感ーーー
ずっと、何かを失った気がしている。
何かを求めている気がする。
何が欲しいのか自分ですらわからない。
ただ、心が満たされない。
だから、、、、、、、、、、
殺した。
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「、、、何だこの本、、全然面白くない」
そう、面白くない。
何が面白い本なのか?
そんなことはどうでもいいのだ、
とりあえず僕には面白いとは思わなかった。
僕は汽車の中で欠伸を噛み殺しながら本を閉じた。
あらかたの物語はハッピーエンドかバッドエンドだ、
はっきりしてる。
はっきりしてるのは嫌いじゃないけど、
そんなにはっきりするものか?
何もかもが解明されてすっきりと幕を閉じれるものなのか?
僕はそんな風には思わない。。。
この世界はそんなに何もかもが鮮明ではない。
むしろ、濁ってる。
今から僕が向かう先だって、、、、
ほら、、嫌気がさすほど、、、いや、嫌気がさしてる、、、本当に行きたくない。
汽車の窓を開け首を出しても見えない街並みにため息をつき、癖の独り言を呟いていた。
「ここが、、暗寧町、、ほんと、、、、暗いな」
(暗寧町〜暗寧町〜)
汽車のパイプから出る鈍い音の到着の合図で余計に気持ちが重くなる。
「はぁ〜、本当に嫌だ、この町は」
僕は重い腰と足に脱力感全開で力を入れ汽車の扉を開けた。
降り立ったホームには灯りはなく、月明かりだけが道を照らしている。
ここは暗寧町、世界に幾つも存在する特異街の一つだ、そもそも特異街とは簡潔に言うと変な町だ、町そのものが異質で特別で奇妙で僕なりに言葉に表すと、[できれば近寄りたくはない]になる。
例えば、この町は3日に一度10分しか太陽が顔を出さない、
そして何よりの特徴は、、、
空を見上げると満月が殆どの空を覆っていて、雲が掛からない。
月明かりで日々を過ごし、電灯の灯りを嫌い、閉鎖的で常に暗い夜の中で生きる町の事を皮肉かどうかはわからないが、、暗寧町と名付けられている。
「すみません、カラキ通りにはどう行けばいいですか?」
駅員に尋ねると、愛想も感情もないように指をさされた。
「あ、あぁ、どうも、ありがとうございます」
カラキ通りにある、民家に住んでいる母の様子を見てきて欲しい。
今回はそんな簡単な内容の依頼だった。
暗寧町を離れて2年近くになる娘からの依頼だ。
毎週送っていた手紙の返事が一月前から帰ってこず、心配になり依頼が届いた、来週には依頼人も暗寧町に戻るらしいが、居ても立っても居られず先に手紙を届けて欲しいというわけだ。
「ったく、自分で来たらいいのに、、」
僕は文句を言いつつ、カラキ通りにある住所通りの家の前に立つ。
表札は[空木]依頼人の名前と一致する。
ここで間違いは無いようだ。
「すみませーーん!!夜分遅くに失礼します!お嬢様からのご依頼でまいりましたー!!」
まぁ、ずっと夜なんだが、、という独り言を飲み込み返事を待つ。
「すみませーーーん!!空木さんいらっしゃいませんかー?」
返事が無い、留守かな??
何も考えずにドアノブに手をかけると、鍵が開いていた。
「開いてる、、無用心だな」
独り言を呟きながら自分もドアを勝手に開けているのだから非常識だなと考えながら扉を引いた。
「ッッ!!」
玄関が荒れている、、靴も向きがバラバラだし、廊下も、、ガラスの破片が落ちていた。
凄まじい嫌な予感を感じながら、土足で足を踏み入れる。
「すみませーーーん!!どなたかいらっしゃいませんかーー!!」
返事は無い、リビングまで慌てて足を運ぶと惨憺たる状況になっていた、、食器は割れ、カーテンは破れ、ソファも弾けていた。
「これは、、、」
きつく眉間に力を入れ辺りを見渡す。
散らばったガラスの破片の間に見つけてしまった。。
「血だ。」
嫌な予感が確信に変わる。
血痕は続いている。
(嫌だ)
リビングの先に続いている。
(本当に嫌だ)
廊下の先にある部屋へと続いている。
(見たくない)
閉じてある、浴室へと続いている。
(頼む、違ってくれ)
きつく力を入れた眉間に目一杯の力を込めて、浴室の扉を開けた。
「なッッッッ!!!!?」
浴室一面に散らばった血、浴槽に溜まっていた大量の血、、、、、
「血」、、、だけだった。
「おかしいだろッ!?」
冷や汗を盛大に流しながら現状を把握する。
(よく考えろ、、もっとよく!!)
(体もない、、血だけがある。いや待て、、そもそもおかしいだろ、、足跡もなにもないぞ!!?これだけ血が溜まっててなんで、何の後もないんだ!?何だこれ!??)
鳥肌と冷や汗でどうにかしている体を指でつねり、平常心を保とうとリビングに戻る、、空いた窓に揺れる破れたカーテンとキミノワルイ満月に呟く
「あぁ、もぅ、、、本当に嫌だ」
カラキ通りある民家に住んでいる母の様子を見てきて欲しい。
今回はそんな簡単な内容の、、はずだった。。。