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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
一章 こじらせ男と三匹の嫁
9/60

五月中旬 3



 数学の小テストを終え、今日の授業はこれで終わりとなる。HRが終わり、俺は今日も積みゲー消化のため、一刻も早く帰宅しようと足早に教室を出た……所で、思い直して教室に戻る。




「えっと……お、いた。パン少女」


「あ、うん。パン少女って……あの時の事は忘れてよ……」


「え? いや、結局手伝ってないし、貸しとかないぞ?」


「そうじゃなくて、あの時はなんかテンパってて、その……いいから忘れて」


「あー、そう言えば……まるで恋する少女のよう……」




 周りにいた女子2人が吹き出した。パン少女の友達だろう。口に出ていたか……訴えられなければ良いが……




「は、はぁ?! ……きっも……何言ってんの? 本当にただテンパってただけだから」


「今もだけどな」


「うるさいよ! 何なんだよ!」


「おい、顔赤いぞ。どうした?」




 かぁっと音がしそうなくらい、赤かった顔がさらに赤くなる。




「あ、赤くにゃ……っ」




 あ、噛んだ。やはり女の子をいじめるのは楽しい。代わりに自分のあまりの気持ち悪さに死にたくなるけどな。


 小学生の時なんかは、よく先生に怒られていたものだ。裏を返せば、俺の精神が小学生から成長していないという事でもあるが。男という生き物の性とも言えるかもしれない。


 などと柄にもなくなかなか深いかもしれない事を考えていると、パン少女の友達が何やら悪い顔をしているのに気づく。




「あっごめん。ちょっと用事思い出しちゃった。今日一緒に帰れないわ」


「えっ」


「あーあたしも思い出したわー。なんやかんやあって一緒に帰れないわー」


「えっちょ、お前らなんだよ用事って! なんやかんやって何だよ!」


「なんやかんやはぁ」


「なんやかんやですよぉー」


「はぁ……?! ……って、本当に行っちゃったし……」




 しかし、あまり調子に乗りすぎると良くないな……。もしこれを機に友達に弄られるようになって、彼女が本気で嫌がり、あと腐れのないようにきっぱり振っておこう、なんて事になったら、死ぬほど恥ずかしいのは俺だ。っていうか多分結構傷つく。


 さっさと用を済ませて帰ろう。




「おいパン少女よ、さっきはありがとうな」


「ふぇっ、あ、あぁ……小テスト白紙は結構やばいしね。 あんた寝ようとしてたみたいだったから」


「おう。助かったぜ」


「うん。まぁ、ね……あと、後ろの席の子に、何かされなかった?」


「消しゴムを拾ってやったが」


「それだけ? 他には何かされなかった?」


「いや、特には何も。あいつがどうかしたのか?」


「いや、あの子は……何というか、うん……あんたも大変だね」


「はぁ……?」




 何というか、何だよ?


 今にして思えば、後ろの席の名も知らぬ女子もまた、善意で俺に伝えようとしてくれていたのかもしれない。パン少女にせよ、ただのクラスメイトのためにそこまでしてくれるとは、世の中善人が多いのだな。


 ともあれ、用は済んだ。訴えられない内に帰ろう。




「じゃあ、俺はこれで。また明日な」


「えっ? あっちょっと」


「うん?」


「いや……ここは一緒に帰る流れじゃないの? なに一人で帰ろうとしてんの?」


「いや、知らんがな。なんだ、一緒に帰りたいのか」


「はぁ?! ちげーし! ばーかばーか!」




 あっこの子も小学生並みだわ。俺と大差なかったわ。




「今日はあいつらと帰りにクレープ食べようって話になってて……一人で行くのはなんか、その……」


「あーでも俺帰ってゲームやりたいしなー」


「な、なんだよぉ……もっと私にかまえよぉ……!」




 やっぱかわいいなこいつ。この分だと、昼のあれもただの罰ゲームか何かだろう。害意がないのであれば対処の必要もない。さっきの事もあるし、ひょっとしたら俺は、彼女に気に入られた可能性すらある。


 良かった……社会的に追い詰められて人生終了する俺くんはいなかったんだね……!




「……分かった付き合うよ。あとクレープ奢ってやる。さっきのお礼な」


「あっほんとに? やったー」




 階段を降りて靴を履き、校門へ向かう。




「そんなにクレープ食べたいのか?」


「週一の甘いクレープが私の唯一の楽しみなんだよ!」


「いやお前、仮にも高校生がそれは……」




 が、校門付近で俺は立ち止まった。立ち止まらずを得なかった。




「あ。どうも、数日ぶりです」


「……よぉ」




 なんでお前がここにいんの……?




「思ったより早かったですね。あまり待たずに済みました」


「え、俺を待ってたの? なんで? っていうか俺、お前に高校どこか言ったっけ?」


「中学の卒業式の時に聞きましたよ」


「あっそう……で、なんで来たの?」


「なんでって……あなた、既読無視するじゃないですか」


「……無視じゃないぞ? 数日間返事しなかっただけだぞ?」


「えぇ……あんた、彼女さん放置したの……?」


「彼女じゃない事は今の会話聞いてたら分かるよな?」


「彼氏が心配だったので会いに来ました」


「本音は?」


「暇だったので。あと、お腹すいたから何か奢って下さい」


「え、酷くない?」


「面倒くさいですね……クレープ食べに行くんですよね? 連れてって下さい」


「聞いてたのかぁ……」


「えっと、彼女さんじゃないなら、そちらは……」


「あぁ、中学ん時の後輩だよ。別に仲が良かった訳ではない」


「どうも。そちらは……彼女さんですか?」


「彼女いないって言わなかったか? ってかお前、もし彼女だったらどうするつもりだったの?」


「二人目の彼女って言って着いて行きますよ」


「……俺、お前に何かしたっけ?」


「か、かの、彼女じゃないからっ! ぜ、全然違うから!」


「……かわいい彼女さんですね」


「自慢の嫁です」


「なんで?!」




 この後めちゃくちゃクレープ食べた。

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