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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
余談 温泉回チキンレース
56/60

温泉前哨戦

そ の た め の R15 。一部かなりギアを上げて書いているので、苦手な方はご注意を。

男湯にて



 人はなぜ、温泉に来るのだろうか。


 非常に深い問いである。いくつもの答えがあるだろうし、そのうちの多くがいくらかは正しいものだ。今回、俺が温泉を訪れたのも、多くの複合的な要因を引っくるめた、温泉の魅力という奴に惹かれたからだ。


 例えば、露天風呂のこの開放感。一月の冷たい外気の中で浸かる露天風呂というのは、独特の良さがあると俺は思う。


 人の手によって作られた自然の景観の中、腰掛けた石造りの浴槽のごつごつとした質感さえ、最高の演出になる。そこに、時折顔を撫でる風の冷たさが、舞台装置の最後のピースになる。何とは無しに、風流だと感じる。


 と、じじくさい事を言ってはみたが、そんなのはただの後付けである。実際は、冬休みの間にみんなでどっか行こうよ、なんて話になって、じゃあ温泉、となっただけだ。


 みんなというのは、俺他、女子3名の事だ。今頃女湯にいるはずだが、ここから話し声などは聞こえない。おそらく屋内の方にいるのだろう。




「……やっぱ、洗いっことかしてんのかなぁ」




 熱い湯に浸かりながら、思いは壁を隔てた先、地上の楽園へと至る。あの3人が、裸で、洗いっこ……そんな凄絶な光景が現世に存在して良いのか……? いや、ひょっとしたら今この瞬間も、俺は夢を見ているのかもしれない。


 何より俺はこれから、あの3人と同じ部屋で一夜を過ごす事になっているのだ。もちろん俺は二部屋取ろうと言ったのだが、最終的には多数決で押し切られてしまった。おのれ民主主義……でもちょっとありがとう……


 ただ、俺は彼女達に手を出すつもりはない。少なくとも今夜は。責任持てないから、とかそんな大層な理由ではない。これは苦節17年、ぼっちとして生きてきた俺の最後の砦だ。もうとっくにリア充だろとは言わせない。女の子とそういう事をするまでは名誉ぼっちなのだ。


 そう。これは俺自身との戦いだ。彼女達3人と付き合い始めてから、危うい場面は幾度となくあった。あいつら二人きりになるとすぐ密着してくるし、内二人は言葉で迫ってくるし、そのうち一人はキスすると必ず舌を入れてくるし……俺が歴戦の猛者でなければ、とっくに3人とも散らされている所だ。


 最近は特にアピールが直接的になっているように感じる。そこにきてこの一泊二日温泉旅行である。今夜は一波乱ありそうだ。ぼっちとしての矜持に賭けて、必ずや耐えぬいてみせる。




「……ちちくらべとか、してんのかなぁ……」






女湯にて



「一時停戦、ですか?」


「共通の目的のためだよ。これは目下、最大のチャンスだよ。足を引っ張り合って潰すには惜しいと思う」


「全然共通してないじゃないですか。誰が初めてを貰うかで、結局争う事になりますよ」


「もーやめようよー……温泉くらいゆっくり入れないのぉ……?」


「でもこのまま逃げられ続けたら誰も幸せになれないでしょ? ご主人だって誰か一人とヤればあと二人も順番に、ってなるよ」


「そんな誰かのおこぼれみたいなの、嫌ですよ。正々堂々競ってこそだと思います」


「あぁもう……じゃあ一人ずつ攻めて、あと二人は不干渉で良くない……? 順番はじゃんけんで、恨みっこなしって事で……」


「それはまた、少し違くないですか? 微妙に不公平ですし」


「あー、浴衣だもんね。私は良いけど、身体に自信ない人は大変だね?」


「分かりました。それで行きましょう。ですが、今の発言の制裁は受けてもらいます」


「え、あっちょっ、やめて! 放して!」


「毎度2対1でよく煽れるよね。こうなるの分かってるでしょ?」


「だ、だめ! 直接は駄目だから! 今裸だから!」


「暴れないで下さい。公共の場ですよ」


「貸し切り状態だけどね」


「ち、違うのっ、また大きくなっちゃうからぁ!」


「……あんた……」


「命が惜しくないようですね……」


「あ、やめて……こないでぇ……!」

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