五節 なんで、私がハーレムに!?
俺たちは無事、目的地のショッピングモールに到着。中は冷房が効いていてとても涼しい。正直な所、帰宅部の体力に初夏の蒸し暑さはかなり堪える。と、入り口付近に自販機を発見する。
「俺お茶買うけど、お前ら何か飲みたいもんある?」
「私もお茶でー」
「私も。お願いします」
「へっ? あ、私メロンソーダ! メロンソーダが良い!」
「あーはいはい。無かったらコーラな」
三人から離れ、自販機に歩み寄る。財布を開くと、小銭がいくらかに、野口が二枚……あまりにしょっぱい。買い物は各自負担とさせて貰おう。今まで考えていなかったが、三人と付き合うとなると、奢るのも大概にしないと厳しいな……
自販機に小銭を投入しながら、三人の方に目をやる。今度はパン少女が二人がかりで襲われている。周りから結構見られてるが、気にならないのか……
まぁ、俺がいない場所では一切会話がないとか、険悪な雰囲気にはなっていないようで良かった。これでも命は惜しいし、血は見たくない。お茶三つとコーラのペットボトルを持って戻る。
「ほれ、買ってきたぞ」
「ありがとご主人ー」
「ありがとうございます。財布としては上々な働きぶりですね。褒めて遣わします」
「お前本当は俺の事嫌いなの?」
「め、めろんそーだ……」
「ってかお前ら、何買うの? 服とか買うんなら自腹だぞ。俺、今日金ないから」
「別に構いませんよ。って言うか、服って高いんですよ? 流石に買わせませんよ」
「ぼっちのご主人様は知らないだろうけど、女子は普段からいくらかは持ち合わせてるもんだよ。こういう事もあるしね」
「ごひゃくえん……」
「ん?」
「私、今日500円しかない……」
「あー……はい……」
「……うん。ツンデレちゃんは可愛いから大丈夫だよ」
「……まぁ、アイスくらいは奢ってやる」
「わーいアイスだぁ!」
「かわいい」
「かわいいです」
「かわいいな」
満場一致で10点満点中10点の評価を受けたパン少女はちょっと照れていた。普段ボケなれてない子がたまにふざけてみるのって、こう、尊いよな。尊い。
という訳で、結局服を買いに行った二人と別れ、俺とパン少女は店の近くの椅子に座ってアイスを食べていた。同じ階にサー○ィーワンあって良かった。
服選びに付き合わされずに済んだのは正直助かったが、見境いのない変態に着せ替え人形にされるあいつの姿が容易に想像できる。すらっとしたモデル体型だから、服がよく似合うんだよな……
とここで、さっき訊きそびれた事があったのを思い出す。隣でアイスを手に満足げなパン少女にあらためて訊いてみた。
「そういえばお前、なんで俺たちに付き合ってるんだ?」
「……え? あ、あれ? 伝わってなかった……!?」
にわかにわたわたと慌て始めた。かわいい。
「あ、あの……だからっ、ね? ……わ、私は、あんたのことが……その……っ……え、えぇっとぉ……!」
「……好きなんだな?」
「なっ……!? そ、そうだけど!! そうだけど先に言うなよっ! かっこつかないだろぉ……っ!」
涙目で震えているので、つい助け舟を出してしまった。
それにしても、何がきっかけとなって惚れられたのか、本気で分からない。いや、もちろんこんな可愛い子に好かれている事は嬉しいが……つい、なぜ、を考えてしまうのが人の性だ。
「えっと……いつから?」
「はっきりと自覚したのはついこの間だけど、ほんとはもっと前から……」
「あ、そう言えばお前、この前言ってた男友達の事は良いのかよ? 友達以上恋人未満、みたいな事言ってただろ。いや、忘れてた俺が言うのもなんだが」
「あっ、あれは……あんたの、こと、みたいな……?」
「みたいな、って……俺、昔お前と会った事あったっけ?」
「や、やっぱり忘れてたんだ……ほら、去年の体育祭の時の……」
「……あぁ! あの時のツンデレ!」
「ツンデレ言うな!」
しかし、そうなるとこの子は、あんな些細な出来事を一年以上も引きずっていたのか……あれ、この子もちょろい上に結構重くない?
「……な、なに?」
「いや、随分と健気だなと思ってさ」
「わ、悪かったな。下らないことをいつまでも引きずる女で……」
「いや、一途なのは良い事だぞ。いいお嫁さんになれるんじゃないか?」
「!? おっおよ、め……あ、あんたなにいって……っ!」
「アイス溶けるぞー」
「あっ……!」
慌てて残りのアイスを真っ赤な顔で頬張る姿は、小動物のようで非常に愛らしい。かわいい。とてもかわいい。
俺の周りはなぜかエスパーばかりなので、自分より分かりやすい奴がいるとなんとなく安心する。やはり彼女はこれからの生活において、俺の癒しとなってくれることだろう。
「わ、わたしも……っ」
「うん?」
「……私も、あんただから、その……す、好きになったの……! 付き合いの長さは関係ない……! 私はただ、あんたと一緒になりたいって言うか、あんたの、その……お、お嫁さんっ、になりたいって……思ったの……」
顔が真っ赤である。こんな所で告白されるとは思わなかったが、ずいぶん嬉しい事を言ってくれるじゃないか。ふむ……これはもう少しのサービスが必要だろう。
「……ありがとう。アイス、付いてるぞ」
「ひゃ……っ!?」
……頬に短く口づけをする。リップサービスにはリップサービスをって所か……うん。我ながら自分が気持ち悪すぎて死にたくなるな。
と、そんなバカップルみたいな事をしている間に、二人が帰ってきた。
「お待たせー! って、あれ? ツンデレちゃん寝ちゃったの? っていうか、え……ご主人、顔真っ赤……!? ふ、二人で何してたの!?」
「……あら、あなたがそんなに照れるなんて珍しいですね。キスでもしてたんですか?」
「だからなんで分かるんだよ……」
「う、うそぉ! 私にもまだしてくれてないのに!? ね、ねぇ、私にもちゅーして! 今して! さぁ! 早く!! ナウ!!!」
「ステイ」
「わふっ!」
「よし、行くぞ」
「……ふぇっ? ご、ごめん……寝ちゃってた……?」
「ふふっ……照れちゃって。本当、不器用なんですから……」
うるさい。ほっとけ。ぼっちには色々あるんだよ。




