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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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五節 第三回ハーレムに関する取り決め会議

最後なので5話連続投稿です。活動報告も上げましたので、今後についてはそちらをご覧下さい。


「……今回集まって頂いたのは他でもない、同じご主人様を愛する者として、今後どのように彼と付き合っていくか、意思の統一を図るためだよ」




 期末テストが終わった日の午後一番、カフェテリアのクーラーの効いた店内で、ポニーテールの少女が第一声を発した。しごく真面目な顔でぶっ飛んだ事を言うのは、今や彼女の十八番である。




「っ……」




 その少女の隣、四人掛けのテーブル席の壁際の隅っこで、先の台詞にビクリと震え、身をすくませる小さな少女が一人。先ほどから居心地悪そうに目を伏せている。




「そんな恥ずかしい事を声を大にして言わないで下さい。あなたに羞恥心は無いんですか……いえ、畜生風情に馬鹿な事を訊きましたね。忘れて下さい」




 テーブルを挟んで向かい側、一人だけ違う制服を着た女子がポニーテールを一睨みして毒を吐く。鋭い目つきもあって結構な迫力だが、言われた方は歯牙にもかけていない様子。大した肝っ玉である。


 して、この会合で一番の問題は、だ……




「……これ、俺がいる必要あるか?」




 小さい少女の肩がビクッと大きく跳ねる。どうやら二股をかけたツケで修羅場に放り込まれたようだが、お前もかパン少女よ……最大限意図は汲んでやるからそんなに怯えないでおくれ。


 期末テストがようやく終わり、家に帰ってだらだらしようと思っていたらこれである。話があるなんて言われてのこのこ着いて行くんじゃなかった……




「私はこの場にいる二人の合意として、ハーレムを提案するよ」




 案の定無視された。隣から疑念の籠った視線を感じるが、違う。俺ではない。その旨をこちらも目で伝える。




「……最も重要なのはこの人の意思であって、私たちの間の合意ではないはずです」


「ごもっとも。で、ご主人様はどう思うの?」


「……こういうのは話し合って決めるような事じゃないだろ。俺が一人ひとりとの付き合いの中で接し方を決めて、二人の間で解決すべき事だ」


「つまり、決めきれないけどハーレムが良いなんて男らしくないから言いたくないって事だね。ご主人様にはっきりした意見が無いなら、多数決でハーレムに決定だけど、良いかな?」




 俺はがっくりと肩を落とす。すぐ隣からの呆れたような視線が痛い。




「……それで構いません。続けて下さい」


「あ、そう。それじゃ、ご主人様との時間をどうシェアするかの話に移るよ」


「いや、ちょっと待て。それは俺が決めるべき事じゃないのか?」


「ご主人様に任せたらデートが月一とかになって、いつの間にか三人とも疎遠になるのが目に見えてるから却下」


「ぐっ」




 悔しいが否定できない。パン少女に助けを求め……駄目だ! 目を合わせた瞬間、真っ赤になって逸らしやがった! 今はそんな場合ではないだろ……俺のプライベートが無くなるか否かの瀬戸際なんだよ!


 こうなったらもう一人に助けを……!




「私だけ学校が違いますし、校内ではお二方、それ以外では私という事で良いのでは?」


「は? いやいや……それだと私たち、校内でしかデートできないんですけど? そもそも、もうすぐ夏休みだって事忘れないでよ」


「そ、そうだよ……」


「……チッ」




 おい、舌打ちすんな。あとパン少女も控えめに便乗するんじゃない。




「定番なのは曜日制だね。月曜から順に二日ずつで分ければ学校がなくても関係ないね」


「それだと学校がある時が不公平です。休みを平日にして、私が土日なら呑みます」


「却下。彼に会いに学校へ行ってる訳じゃないの。会える時間に差がありすぎる。休日を無くして私の分を一日増やすなら呑むよ」


「い、いや、土曜日と日曜日を二人で分けて、私の分を三日にすれば解決じゃ……」


「ちょっと待て! あまりに横暴すぎる! 日曜と月曜を休みにして、火水の放課後、木金の放課後、土曜で分けるべきだ。夏休みの事は別で決めよう」


「……私とは週一でしか会いたくないんですか……?」


「あ、いや、その……」




 やめろ! 本気で悲しそうにするな! 公共の場なのに抱きしめて頭を撫でてやりたくなるだろ!




「っていうか、公平に分けるなんてそもそも不可能だし、それぞれ会いたい時に会いに行けば良いんじゃ……学校の中では話しかけないとかにすれば良いと思う」


「それだとこの人は逃げますよ、絶対。学校からも走って帰るでしょうね」


「その場合は家に押しかければ良いんじゃない? 妹ちゃんにも話を通しておけば、引き篭もられる心配もないし」




 お、おい待てパン少女。可愛い顔してそんな恐ろしい事を言うもんじゃない。




「ふむ……悪くないですね」


「うん。それ、良いと思うよ。私も賛成。これで決定かな」


「異議なし」


「異議なしです」


「い、異議あり! 異議あるぞ!」


「異議は却下。ご主人様は、逃げたら三人の監視下で軟禁するから覚悟しておいてね。あ、あとご主人様の貞操については早い者勝ちって事で」


「異議なし」


「異議なしです」


「ひぃっ!」


「はい決定。以上で第三回ハーレムに関する取り決め会議を終了するよ」




 果たして俺はこの先、ぼっちとしての矜持を守り通す事ができるのだろうか……


 そしてそれ以上に、この三人に迫られて貞操を守りきれる気がしない……果たして俺の理性はいつまで保ってくれるだろうか……

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