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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
一章 こじらせ男と三匹の嫁
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ゴールデンウィーク明け 4



 交番で面倒な書類作成やら質疑応答やらをしていたら、終わる頃にはとっぷりと日も暮れていた。女の子と2人で外を出歩くには、完全にアウトな時間になってしまったなぁ、なんて考えながら自転車を押して歩く。でも家まで送ってる途中だからセーフじゃね?


 ……そう言えば家まで自転車で15分と言っていたな。考えなしに送るなどと言ってしまったが、それはつまり徒歩だと何分かかるのだろうか? さらに往復では……


 妹の友達が晩飯を食べていく事になっても安心だな。うん。




「……」


「……」




 ……会話がない。当然だ。お互いぼっちなのだ。数十分も2人で過ごして間が保つような過剰なコミュ力は搭載していない。しかし、お互い知らない仲ではないためか、不思議と気まずくは感じない。喩えるなら、妹と歩いているような感覚だろうか。


 こいつとは幼馴染でもなければ、旧知の仲とも言い難い、友達より遠いかもしれない距離。しかし、2人並んで歩く俺たちの距離は、家族のそれと何ら変わらない。共に過ごした状況が状況だったからだろうか、こいつといる間は、落ち着いていられる。


 さしずめ、窮地の仲、といったところだろうか。




「……なに一人でドヤ顔してるんですか?」


「……別にしてないぞ?」




 ところで、こいつはたまに俺の表情や心情を読んでくることがある。本格的に俺たちは一心同体なのだろうか、と、ここまで考えて俺は、自分が過去最高レベルに気持ち悪いことに気付いてしまった。やめよう、友達未満の女の子で妄想を膨らますのは。




「……本当にすみません、送らせてしまって」


「いや、なんかお前、混乱してたみたいだし。あそこで帰したらそのまま乗ってって事故りかねないと思ってな」


「お尻が事故りかねないって?」


「お前それ気に入ったの?」


「……ごめんなさい」


「お前のフリーダムさ加減は俺の上を行くかもしれないと、思う事があるよ……」


「でも、家も反対方向なのに……」




 そうやって愚にもつかない事を言い放った挙句、強引に流すところとか特にそう思うよ。




「……まぁ、こうしているのもなかなか楽しいし、本当に気にしねぇよ」


「楽しい?」


「こうして歩くのがな。川沿いの道を何をするでもなく、ぶらぶらと歩くのもこれはこれで楽しいぜ。桜はもうとうに散ってしまったが、街灯に照らされる葉桜にもそれはそれで風情がある。じじいみたいだけどな。伊達に娯楽人を気取っちゃあいないぜ」




 嘘は言っていない。




「……まぁ、その……私も、あなたと歩くのは嫌いじゃないみたいです……」


「……なぁ、お前やっぱり俺の心が読めるのか?」


「えぇまぁ、ある程度なら……」


「読めるのか……これはもう、友達と言っても過言ではないかもしれない……」


「そうですね」


「えっマジで?」


「じゃあ、友達なので連絡先交換しましょうか」


「お、おぉう……」


「考えてみたら、私達に起こる謎現象について、検証? とかする必要ありますよね」


「それ絶対今考えたよね?」


「暇な時とかたまに会って、私達が自発的に会った時にどうなるのか、何度か実験するべきです」


「それ単に俺の金で遊びたいだけじゃね? あるいはデート」


「ではないです」


「ですよねー……」




 結局、連絡先を交換しました。




「良いじゃないですか、たまに何か奢ってくれても。ブロッコリーあげますから」


「それさっきのやつだよね?」




 晩のおかずももらいました。

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