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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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四節 あとは、デートをして



 修学旅行以来、私と彼が会って話す機会が増えた。彼は偶然だと思っているようだが、実際には私が彼の行きそうな場所に足を運んでいたためだ。そのため、出会う場所は必然的に、校内が多くなった。


 登校中は彼の姿を目で探していたし、帰る時にわざとゆっくり歩いてみたりした。お昼もあえて目立ちそうな席を確保していた。正直、変態の人の事をあまり強くは言えない……ただ、それでもエンカウント率は高くはなかった。


 卒業式の日の事は、今でもよく覚えている。中学生になってから、人前で泣いたのはあれが初めての事だ。わざわざ彼を探し回って、彼の前で涙を流した。


 離れたくないと言った。そんな事を言うなと言われたので、無理やりキスをした。あなたが好きですと言った。本気だったかは分からない。唯一の繋がりを失い、彼と二度と会えなくなるかもしれないという事が怖かった。


 この段に至っても彼は、私に連絡先を教えてくれていなかった。当時こそ避けられているのかもしれないと思ったものだが、後になって分かった。彼は私が怖かったのだ。同性の友達すら作ってこなかった人間が、異性に強く迫られて、すんなり受け入れられるはずもない。


 私にとって何物にも代え難い存在になっていた繋がりは、彼にとってあまりに重すぎたのだ。




「いや、いくら何でもヘタレすぎでしょ……」


「いきなりなんだ失礼な」


「あ、すみません独り言です」


「なんだ、俺に言ったんじゃないのか……」


「いいえ、あなたの事です」


「なんだ、俺の事だったのか……」




 軽くショックを受けているようだが、残念ながら事実なので放っておく。女友達が家まで押しかけて何日もお泊まりまでしているのに、手を出すどころか追い出そうとしてくる童貞にはお似合いの称号だ。おかげでご両親とばかり仲良くなって、彼とは全く進展していない。




「尻の一つでも触っておいた方が良かったか……?」


「は? 小学生ですか、あなたは?」


「えぇ……でも胸とか触るほどないし……おい、それはやめろ流石に死ぬ」




 私は15ポンドの球を棚に戻す。それにしても重いな、こんなの投げる奴いるのか……?


 カラオケの次はボウリングである。高校生が考えたみたいなデートプランだが、実際そうなので仕方ない。しかし費用の方は一高校生には重いらしく、次からは家でゲームな、とか言っていた。次があれば割り勘を提案しよう。


 しかしボウリングというのは案外殺伐としたレジャースポーツだ。特に、実際に二人でやってみると分かるが、片方が席にいる時はもう片方は前で投げている訳で、合間にしか話をする事ができない。スコアを競おうにも、筋力に差がありすぎてフェアじゃない。


 何度かボールを変えたりしながら、淡々と投げ続ける事数十分……全然面白くない。私の投げたボールはガーターに吸い込まれたり、運よくピンの群れの真ん中付近に当たっても、後ろの方が残ってしまう。


 小さくため息をつき、席に戻ろうと振り返った時、アプローチの段差に気付かず、前のめりになって少しよろめく。




「あ……!」


「おっと」


「っ……!?」


「おい、大丈夫か?」


「……えっ? は、はい……」




 彼に支えられる。平然としてるけど、あなたが触ってるの、思いっきり胸なんですけど? え、もしかして気付いてない……? そんなに小さいとは思ってなかったんだけど……かなりショック……


 それともまさか……意識されてない? 昔告白までしたけど、彼にとって過去は過去で、あくまでただの友達としか思われてない……!? そんな……こんなにアピールしているのに……彼は、私の事が……嫌い……?




「……いったい何がいけないというんですか……?」


「うーん、悪くはないが……ちょっと重すぎるんじゃないか?」


「!?」




 や、やっぱり重すぎたんだ……! 考えてみれば当然だ……中学時代に何回か会ったくらいで昔からの知り合い面して、友達になったくらいで家にまで押しかけて……彼が仲良くなった女の子にも正妻ぶっちゃったりして……!


 一人で勝手に盛り上がって、なんかほんと……ばかみたいだ……




「……えっ!? お、おい! なんで泣くんだよ!? 泣くほどのスコアじゃないぞ! 初心者にしてはマシな方だ! だから、な? 泣かないでくれよ……!」


「……だ、だって……っ……おもすぎるって……!」


「え……? あっ……! ち、違う! ボールの事だ! お前は重くなかったよ! むしろ軽すぎるくらいだ! 俺とあんまり身長変わらないのに肉が全然付いてなくてちょっと心配してるんだよ!」


「……悪かったですね……揉みごたえがなくて……っ!」


「だ、大丈夫だ! 思ってたよりはあったから! ちゃんと手のひらに納まるくらいはあった!」




 下段からのみぞおちパンチ。体重の乗った一撃が綺麗に決まり、彼が膝から崩れ落ちる。どうやら私の誤解だったようなので、第二撃の精巣パンチととどめの睾丸蹴りは勘弁しておこう。

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