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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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四節 さらに、愛の告白をします



 修学旅行の時の話。その頃にはもう、私と彼はすっかり顔なじみになっていて、今とほとんど変わらない距離感で接していたように思う。例のごとく、二人してグループから孤立して、自然と一緒にやり過ごす流れになって……


 正直、あの時は結構嬉しかったんですよ? なんて、彼には絶対に言えない。仲の良い男子なんていなかったものだから、ついテンションが上がっておしゃべりになってしまった。その結果、口をついて出るのは愚痴ばかりというのが何とも悲しいけれど……


 考えてみれば、私が愚痴を言える相手なんて、彼しかいなかったのだ。当時の私は、他人とのコミュニケーションは社会生活を円滑にするためのものと、割り切ったつもりで割り切れない寂しさと未熟さを抱えていた。


 まぁ青春とは多かれ少なかれ寂しいものだと言うし、彼のように開き直ってしまうのとどっちが楽かは分からないけれど。


 とにかく、浮かれていた。だから少しだけ、素直になった。この頃には彼はもう、私にとって手放したくない存在だった。彼は私が家族以外で唯一、利害関係なしに付き合える友人だった。


 そう、私にとって彼はもうとっくに友達だったのだ。彼には否定されたが、ポーズだという事はもちろん心得ている。それが彼なりの、人との付き合い方なのだ。友達ごっこが嫌いな彼らしい。彼もまた、昔から全く変わっていない。


 そう、思っていた事もあってこの間の正真正銘初めてのデートの時、夕焼けの海を前にして、友達になってくれと言われた時はちょっと泣きそうになってしまった。あの頃の事が、ちゃんと彼にとっても思い出の一つになっていたんだと思うと、言葉では言い表せない喜びが心を満たした。


 思い出を共有するという事がこんなにも孤独感を和らげてくれるなんて、思いもしなかった。私は彼と共にいたいのだと、もっと同じ時間を過ごせば確信が持てるかと思い、家にまで押しかけた。


 私は弱い人間だ。ただ孤独であるというだけで、耐え難く感じてしまう。だから、彼と一緒になるのも良いかもしれない。今日はそれを伝える……つもりだ。そのためにデートに行きたいなんて言ったんだから。


 そう。あと、その翌日、修学旅行二日目の夜のこと……あの時の責任もとって貰わなくては困る。別に大して見どころのある裸ではないが、このままじゃどこにお嫁に行って良いか分からないじゃないか……


 私が過去に目の前の男に受けた辱めの数々を指折り数えていると、かかっていた曲が終わった。当人は何やらやりきった顔をしているが……ごめん、全然聴いてなかった。


 私たちは今、カラオケボックスに来ている。昼食を取った後、私が来たいと言ったからだ。大した理由ではない。看板が目に入り、そう言えば彼が歌っている所を見た事が無いなと思っただけだ。




「……ふぅ。どうだった?」


「悪くはないです。これからへの期待を込めて……40点」


「えぇ……」




 彼は結構自信があるみたいだが、歌唱力はたぶん並くらいだ。いや、声は悪くないんだけどね……抑揚に難ありといったところか。そして私は知っている。無難な選曲に見えて、実は全部アニソンだという事を。




「さて……」


「おぉ……!」




 次は私の番だ。マイクを持って立ち上がる。丁度良い機会だ。私がお風呂リサイタルで鍛えた表現力を見せてやろう。


 始まったのはバラード調の曲、最近大人気の恋愛ドラマの主題歌だ。私のようなぼっちでも毎週見ているくらいなので、彼も聞いた事くらいはあるだろう。穏やかなイントロが終わる。


 歌い始めははっきりと、しかし低いトーンで淡々と……演出も肝心だ。目の前の彼の目を見て、語りかけるように……あ、これだめだやっぱり照れる。


 曲はサビに入り、声量を上げる。叫ぶのではなく、お腹から声を出す。この完璧な発声法こそ、声が低めの私が歌が上手いと言われる所以である。ちなみに、言っているのは家族である。ぼっちですから。


 長い間奏にちょっと気まずくなりながらも、最後までフルボルテージで、歌い切る……っ! 美しいビブラートと共に華麗に〆……どや?




「ーーふぅ。こんなものですかね」


「うーん、40点!」


「なっ……!」




 その後、カラオケ対決はなかなかの白熱ぶりを見せた。最終的には彼に敗北を認めさせる事ができたので良しとする。

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