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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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三節 縁は異なもの味なもの



 二人が部屋を出るのを見計らってスマホを回収し、会計を済ませて建物を出た時には、既に彼らの姿は無かった。


 私としても、さっきの事があった後で彼らのデートに首をつっこむ気が起きなかったので、探すことはしなかった。というか今は、全てがどうでもいい……特有の倦怠感が全身を包む。


 相方と別れ、一度家に帰ったが、服を着替えてすぐに家を出て、近くの公園に向かう。




「……で、なんで私が呼ばれたわけ?」


「呼び出す時に説明しなかったっけ?」


「話があるから来い、としか聞いてないんだけど……見たところ、武器は持ってないみたいね」


「信用ないなぁ……」




 もうすっかり陽の落ちた公園の外灯の下、硬い表情と疑いの視線を私に向ける、見た目中学生くらいの女の子。そう、私が最愛の人を巡って争わなければならない、もう一人のライバルだ。


 いや、そう言えば答えを聞いていなかった。まぁ、昨日までの様子で大方想像は付くけど。




「話は、彼の事だよ。どう? どうするかは決まった?」


「……言ったら譲ってくれるの?」


「まさか。でも、あなたに配慮して良いお話を用意してあげる事はできるかな」


「なんであんたがそんな事すんのよ……?」


「あなたとももう他人って訳じゃないじゃない? ほら、一緒にクレープ食べに行ったり、食堂でお話したり……」


「……それ、あんたの記憶じゃないよ」


「そうだっけ? まぁ、現場にはいた訳だし似たようなもんでしょ」


「全然違うわ! こ、こわっ……!! やめてよ、背筋がゾッとしたじゃん……」


「まぁまぁ、それなら今日一日で親交を深めれば良い話だよ」


「もう夜なんだけど……っていうか、あれ? なんかおかしくない……? なんだろ……」




 納得の行かない顔で、あれ、と首を傾げる。あぁ……今日会った人の中で、一番純粋で無邪気な子だよ……アホの子とも言うけど。見ているだけで、日中に溜めた疲れが吹き飛びそう……癒される。




「……まぁ、いいや。どっか行くの?」


「なんも考えてなかった」


「なんで呼んだんだ……」


「あ、そうだ! 鍋しよ、鍋! うちで! やっぱ仲良くなるにはこれだよねー」


「今、七月なんだけど? 季節的には明らかにそうめんとか冷やし中華の方なんですけど?」


「大丈夫だってうちクーラーあるし。まだ夜ご飯食べてないんでしょ?」


「そりゃお腹は減ってるけど……二人でやるの……?」


「うーん、せっかくだしもう一人呼ぼっか」




 スマホで、ちょうど今暇なはずの人物にメッセージを送っておく。




「……よし。食材買いに行こっか」


「え、鍋で決まりなの? っていうかあんたのその行動力はなんなんだよ……」




 その後、スーパーでお肉を持ってはしゃぐ彼女は、容姿も相まって子供にしか見えなかった。非常に萌える、というか母性をくすぐられる。


 先ほど彼女の事をちょろ……与し易いと思ったが、これだけ可愛いと、彼もきっと構いたくなってしまうに違いない。要注意だな、これは。




「……で、あたしが呼ばれた訳っすね」


「やぁやぁ、ようこそ我が家へ」


「わっ、妹ちゃ、さん?!」




 一人暮らしの部屋は3人で鍋を囲むには少し狭い。しかし、狭いと空調が効きやすいという利点もある。




「っていうか、この季節になぜ、鍋を?」


「たまにこうやって、馬鹿みたいな事したくならない?」


「馬鹿みたいだって自覚はあるんだ……」


「当たり前でしょ。今、七月だよ? そろそろ暑くなってこようかというこの季節に鍋とか、狂気の沙汰だよ」


「えぇ……」


「まともじゃないって自覚はあるんですね」


「大丈夫だよ。クーラーあるし」


「電気代の方は大丈夫なんですか?」


「……消して鍋ダイエットコースにしよっか」


「ちょっ、やめてよ! 熱中症で殺す気?!」


「はぁ……こんな事してて良いんすか? 兄ちゃん今頃後輩さんとデートしてますよ……?」


「えっ」


「だからこそ気を紛らわすために馬鹿やってるって言わなきゃ分かんないかな?」


「……えっ」


「へぇ……変態のおねーさんも意外に可愛いとこあるんすね」


「ちょ、ちょっと待って! デートって? デートってなんの事?! 初耳なんだけど!?」


「やだな、ちょっと愛が深いだけだよ。あと、あなたは鍋に水入れて来て。えーっと、出汁の素どこやったっけなぁ……」


「えっ、あの、説明を……」


「あたしはコンロやっときますね」


「あっはい……水入れて来ます……」




 しゅんとして作業に入るあの子……えっと、ツンデレちゃんでいいや。ツンデレちゃんはなんだか、妹ちゃん相手に萎縮しているように見える。妹ちゃんも中学生にしてはかなりあくが強い子だから、彼女としては苦手なタイプなのかもしれない。


 子供の間だと、気が強くて声が大きい子が一番偉かったりするよなぁ……この場合は片方高校生なんだけどな。


 なんて心の内で毒を吐いている内にも、準備はスムーズに進む。ツンデレちゃんは意外にもかなり手際が良かった。包丁が一つしかなかったので、野菜などのカットは彼女にお任せした。


 料理スキルが高いのは要注意だ……まぁ、鍋程度で分かる事なんてたかが知れているか。少なくとも私は料理ができない。普段も自炊しないため、包丁の扱いにも自信はない。最低限の道具や調味料は揃っていたようで良かった。




「……あんた、一人暮らしだったんだね」


「自立してる訳じゃないけどね。バイトとか入れたら、彼と過ごす時間が減っちゃうし」


「あぁ、そう」




 うん。順調にお互いの事を知っていけてるかな。ハーレムの形成にあたっては、女性同士が仲良く、尊重し合える事が重要だ。まずはその第一歩である。


 さて、いよいよ3人で鍋を囲んで待つ段階になって、妹ちゃんが口を開いた。




「で、今回は何の集まりなんすか?」


「え? ヤケ鍋じゃないの?」


「ただの自棄なら、わざわざあたし達を呼ばないと思うんですけど。そもそもこの人が兄ちゃんを放り出してあたし達を呼び出したからには、何かあっての事じゃないんすか?」


「うーん、帰って来たのは、本当にそんな気分じゃなくなったからなんだけどね」


「あ、一応着いてったんだ」


「うんまぁ、今日あなた達を呼んだのは、ある一つの提案をするためだよ。鍋を囲んでの密談といった所かな」


「なんでまた今日なんですか……」


「分かってないなぁ。こういうのは、本筋の裏で密かに進行してるのが良いんだって」


「いや正直、さっきいきなり公園に来いって言われた時は行こうかどうか迷ったよ?」


「来なかったらあなた抜きで進めるだけだよ」


「あんたの気分次第じゃん……」


「あれ? おかしいなぁ……後輩ちゃんは分かってくれたんだけどなぁ、こういう駆け引きの妙ってやつをさ」


「……ちょっと待って下さい。後輩さんともそのくだりやったんですか?」


「あっやべ」


「えっ? な、なになに? どういう事?」


「……はぁ。おそらく、この人は後輩さんとも何らかの取り決めをしてますよ。今こんな暢気してるのはたぶん、今日中に兄ちゃんが落とされる事は無いと知ってのことかと」


「……え! そうなの?!」


「いやぁ、あはは……」


「うちからあっさり引き上げたのも口約束があったからですね。まったく、油断も隙もない」


「なんだ、そうだったんだ……」


「告白まではオッケーだけどね。キスから先はNG」


「兄から手を出した場合は?」


「……それは、ノーカン、かな……?」


「え、えぇ!? そうなの?!」


「えぇっとぉ……ほら、そろそろ良いんじゃない、鍋?」


「ちょっ、そんな場合じゃないでしょ! どうすんだよぉ!」


「こんな人たちに兄ちゃんを任せて良いのかな……」


「そこのブラコン、聞こえてるよ! あなたはさっさと兄離れしてよ!」


「そ、そうだよ!」


「……はぁ……」

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