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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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二節 雨降って地固まるなんて……



 月曜日がやってきた。全ての社会人や学生にとって等しく憂鬱な今が、今日は特別な意味を持って私にのしかかってくる……


 浮かない気分のまま、混み合う電車に揺られて学校へと向かう。電車の窓の外を、もはやすっかり見飽きてしまったいつもの景色が流れていく。


 浮かない気分の発端は明らかだった。よくある事だ。ちょっとしたすれ違いという奴である。似た者同士だと思っていた奴が、実は全く違う世界の住人だったという事を知ってしまったのである。


 それでちょっと、置いて行かれた、あるいは見捨てられたように感じてしまっているだけだ。でも、大丈夫。人との付き合い方なんて、その時々で変わっていくものだ。 そんな事にもう、慣れてるはずなんだけど……


 いつもより少しだけ遅く、学校に着く。相変わらず気分は晴れないし、こんな時に馬鹿な話をして紛らわしてくれる奴らは、二人とも時間ギリギリに来るのが常である。


 まだ始業時間までは15分近くある。こんな風に自分の真面目さを恨む日が来るなんて……


 仕方なく問題集を開く。やっぱり全然頭には入ってこない。




「……」


「……」




 ……明らかに、見られている。例のストーカーの子だ。相手が相手だから努めて気にしないようにしていたのだけれど、こうもじっと見られているとやはり落ち着かない。 私から話しかけた方が良いのかな……




「……なに?」


「朝から勉強なんて、ずいぶん真面目なんだね」


「成績はあんたの方が上じゃん」


「そうだっけ? よく覚えてないや……」


「……それだけ?」


「ううん、彼が来るまで暇だから、一応報告しておこうと思って。私ね、彼と仲良くなったんだ」


「そう。それは……」




 おめでとう? なんだかすごく抵抗がある。




「……なんで私に?」


「うん、あなたのおかげな部分もあるし。それに……」




 間違いがあったら困るでしょ?


 なんの間違いがあるというのだろう。あいつと私は、まだ数度会話をしただけの仲なのに。なんだか無性に……腹が立つ。


 それに私は知っている。少なくとも今はまだ、彼女はあいつとそういった仲にはなっていないはすだ。あんたの言えた事じゃない。あんたには関係ない。


 そう、言った。なんで口に出してしまったのかは私にも分からない。これではまるで……


 彼女は表情を変えなかった。




「まぁ、そうかもね。あなたの好きにしたら良いんじゃないかな? それと、元後輩ちゃんの事も、もう分かったから教えてくれなくて良いよ」




 知っている。一昨日、あいつの家にいたのが彼女らだというのは妹ちゃんの話から分かった。だからこそ、私なんかに構っている場合じゃないはずだ。なのになぜ、彼女は私にこんな事を言うのだろう。腹が立つ……イライラする。


 ところが、私をじっと観察していた彼女の表情が変わる。いつものあの無感情な目に、僅かに光が揺れたように見えた。




「……そうだね。今すぐあの人に決断を迫るなんて事はないよ。後輩ちゃんには時間が必要だからね」




 なぜ、わざわざ時間を与えるのだろう? 私の疑問も分かっているようで、彼女は間を空けず言った。




「あの子の事も、好きになっちゃってね……私も少し、これからの事を考えたいの」




 私は目眩がする思いだった。どういう事だ。あれだけ彼に執心していたこの子がそんな事を言うなんて、一体何を考えているの?


 この二日間で、二人に一体何があったんだ?

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